出発当日、早朝の空港に平均年齢60うん才の集団。唯一若いのは私の息子の22歳。20時間の長旅の後やっとマドリッドのホテルに到着したのはもう夜だった。さすがに疲れたが明日はサンティジャーナデルマルだとわくわくしたきもちでねむりにつく。翌日、午前中はマドリッド市内見学の後、特急列車とバスを乗り継いで移動、つおに意中の村に到着。直ぐに村の中を見学だ!と思ったが陽はすでに暮れており本日は断念。泊まるホテルは、スペインではパラドールという15世紀の貴族の館を改造した三つ星国営ホテル。部屋はソファーの部屋とベッドルーム。重厚な作りでベッドの上には天蓋までついている。まるでセレブが泊まるような部屋。到着後、同じツアーの酒好きなメンバーは自然と集まりホテルの隣のバルスペイン風居酒屋に急行。添乗の緒方氏言葉を習いセルベッサ ポルファボールビールください。等々でビールやワインを注文。地元の村人やご婦人とジェスチャーで会話し、酔いしれていく。明日はいよいよあの写真の場所に行ける。さあホテルに帰って寝よう。

夜中三時頃から目が覚める。早く夜が明けないかなー。何度となく部屋の木製の大きな窓を開けるが明るくなる気配なし。カメラの点検、本を読んで時間を過ごすがこういう時の時間は一向に進まない。にほんだったらもうそらがしらんでもいいじこくなのだが、六時七時まだ真っ暗。7時半を過ぎてようやく山の稜線がうっすらと見えてきた。もう我慢ができない。息子はベッドでかすかに鼾をかいているが黙って外に出る。暖房の効いた薄暗い廊下を出口の方に行くと人の気配。

よく見ると同じツアーのkさんどうしました?

眠れないので散歩へ。との返事じゃあ一緒に散歩しましょうかと外に出ると薄暗く誰もいない。目的の場所がどこなのかはっきりと分からないままkさんと路地を歩き始める。最初の角を曲がるとその景色は突然現れた。ここだ!胸は高まり目の前の風景にあの本や父の写真が重なっていく。ここなのだ!

しばしこの場所に佇み感慨に浸る。

ふと我に返り、kさんに頼み写真を何枚も撮ってもらう。そして地面を眺め父の足跡を探す。今度は自分で位置を定め同じアングルで写真を撮る。満足満足!しばらく村を歩き回る中でちとの写真アルバムに出てきた風景に出くわす。その度、そこに父の存在を感じた。

ホテルに帰り食堂に行くと旅のメンバーは朝食を摂っていたが私の夜明け前からの行動に呆れ顔で微笑んでくれた。この日、日中はスケッチ。みんなもこの村を気に入ったらしく作品も多くできた模様。私にとって、今回の旅はこの村が一番の目的だったので大満足。