登場人物紹介ゼイブンも真っ直ぐ降りず右に、左に、少しずつ馬を促して進み行く。
ギュンターは吐息を吐いてゼイブンの背を見つめ、がローランデにそっと振り向くと、彼は背後のシェイルに、自分の後に続けと伝言していた。
ギュンターはゼイブンの降りた道筋を辿りながら、半分陰で月明かりの十分届かない暗いその崖を、降り始めた。
上から見たら大変急な坂だったが、ゼイブンの後を付いて行くと確かに、岩や小石の隙間に細い、道筋らしきものがある。
蛇行して降りて行くせいか、この高さに関わらず馬はそれでも、怖がらずに歩を進め行く。
夢中でゼイブンの後を追うと、いつの間にか崖を、降りていた。
先に降り立つローフィスとオーガスタスが、顔を上げて皆の動向を見守る。
シェイルはローランデの後に続き、心配無いようだった。
ディングレーが、崖の上に立つと、アイリスが背後からそっとつぶやく。
「降りられそうか?」
ディングレーは素っ気なく言った。
「エリスは、大丈夫だ」
アイリスは彼の、馬を見た。
確かにその見事な黒毛は、急な崖を怖がる様子が無かった。
そっとテテュスに視線を送り、微笑む。
テテュスはさっきの『死に神』が、冬の氷の溶けた春のような柔らかで暖かい微笑みを浮かべるのに、心が震った。
アイリスにとって自分は春、そのものだと解って。
ディングレーはそっとテテュスの耳元でささやく。
「…行くぞ」
手綱を緩めるとエリスはそれが合図のように、そっとシェイルの辿った道筋を伝い行く。
ディンダーデンは暫く無言で、崖を見つめた。が、隣で覗うアイリスに、そっと告げる。
「…本気か?」
問うその年上の男に、アイリスは呆れたように先に降り立ち、崖下からこちらを見上げる仲間を、目で指し示す。
「あれを、どう取る?」
ディンダーデンは嫌そうに、アイリスの微笑を浮かべた顔を見つめる。
「可能だと、言う事だな」
アイリスはにっこり笑うと
「その、通りだ」
と言ってディンダーデンに、とっても嫌われた。
つづく。

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