Life of Pi

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こんにちは!駅でリクルートスーツを着た同年代の子を見かけるたび、なんとも言えない気持ちになる今日この頃です。

 

黙々とGREの勉強をしたり、美術館に行ったり、友達とご飯に行ったりしている私の夏休みです。両親と日曜日は「小さな巨人」を見るのが一家の習慣になりつつあったのですが、昨日最終回でしたね。私は信頼できない語り手をあんまり好きじゃないかなあ…なんとなく。作品にもよるのですが。

 

この間Life of Pi(邦題「ライフオブパイ トラと漂流した227日間」)を観たのでそのレビューを少し書こうかと思います。

 

 

Life of Pi (米国2012年)

 

 

字幕付きで先に英語版を見てから、日本語吹き替えを見ると二度美味しい作品です!是非、ネット上にある詳しいネタバレや解説を何も読まない状態で映画を一度見てください。

 

あらすじはこうです。動物園を経営していたインド人一家が、インドからカナダに移住すべく、動物を連れて貨物船に乗ります。その船がマリアナ海溝で沈没し、生き残った少年パイと動物園のトラがボートで漂流生活を送るという、サバイバルストーリ。

そんな過酷なお話しですが、海の景色などがとっても綺麗なんです。CGを駆使して創られた、この世のものとは思えないほど美しく、かつリアリティ溢れる大自然の風景。3Dもあるとのことなので、映画館でそちらを観ていたら、きっとかなり楽しめたのだろうと思います。残念…。

 

主役には素人の方を起用したとのことですが、演技じみていない彼の台詞回しが、逆にどこにでも居そうな男の子に起きた出来事として、物語に説得力を与えていると思います。インドなまりの英語は、耳慣れていない方には少し聞き取りづらいかもしれませんが、日本語字幕を付けて是非、聞いてみて欲しいと思います。そのあと吹き替え版を観ると、声の演技によって、役者さんから受ける雰囲気の違いが出ているので、それを比べてみるのも面白いと思います。

 

 

 

(※ここからネタバレ含みます。)

 

映画の最後15分ほどでしょうか、なぜ主人公があんなに長いデタラメ話しをとっさに作り上げる事ができたのか、そしてなぜ映画がその場面に尺を割いたのか、違和感を覚えました。そこで検索エンジンをかけ、この映画に対する観客の分析などを読んでみると…どんでん返し。同じ映画を見る角度が180度変わってしまいました。けれど、その解釈を頭に置いて映画を方が、うんと深く「人間と宗教」というテーマを掘り下げる事ができます。

 

主人公パイは、神に深く興味を持ち、多数の宗教を同時に信仰するという稀な人物として描かれています。そんな彼でも、非常事態で自分が生き伸びるためには、神が眉をひそめるような非道徳的なこともしなければならない。「神は自分を見ていると信じるパイ」=「倫理観、理性」と考え、トラを「人が本来持つ、動物的な部分」と考えると、この物語は、パイが葛藤の末に自分の「信仰」を見つけるまでの物語だということに気づきます。

人は神を信じることで、本当に全ての執着から逃れられるのか。「生存本能」という、遺伝子に一番と言っていいほど大事な情報として組み込まれたものでさえも?

トラは最後まで嵐を怖がりました。それは本能が身の危険を知らせるからです。

 

 

パイが信頼できない語り手であったことに気づくと、物語の全てが何かの象徴として描かれていることに気づきます。美術史を勉強する醍醐味の一つは、絵や映画の中に描かれたシンボルが何を意味するのか、楽しく推理できるようになることです。

 

シンボルは文化によってちがいがある(※)ので、映画の中で描かれた文化に自分の知識をすり合わせる必要があります。けれど、それにとらわれずとも、持ち合わせた知識だけで自分に納得のいく解釈にたどり着くことは十分にできます。

 

例えば、映画の終盤に、人食い島が出てきます。その島で、主人公は渡航前に再開を誓った彼女からもらったブレスレット(ラーキーと呼ばれるものだと思います)を、森の木の根元に縛り、置いてきてしまいます。漂流中、長いこと身につけていたものを、どうしてわざわざ?

 

ここで思い出せるのが、映画の序盤に、主人公とブレスレットを贈った彼女が付き合うきっかけとなった会話です。「本当の愛は森の中にあるの?」というパイに「いいえ、あれは蓮の花よ」という彼女。蓮の花は仏教やヒンドゥー教などでは純潔の象徴です。パイにとって、生き延びたいと願う理由の一つに、無垢な恋人との再会があったのではないでしょうか。

 

けれど、トラがボートに戻った夜、自分の理性は考える。生き延びるためならなんでもする自分はもう汚れている。だから、純粋にお互いを愛していた頃の、汚れない恋人のもとに戻る資格は、自分にはもうない。そう思って、パイは「本当の愛」の証であるブレスレットを「森の中」においてきたのかもしれません。漂流を生き延びた後、パイは恋人を「失った」と言っていますが、本当は、会いに行かなかった…?

 

もちろん、ここまで深読みせずとも、森の木が多すぎるので、一つの木に目印を付けるためにブレスレットを使った、という考え方もできます。

 

 

一つの作品に対していろんな解釈の仕方があっていいのも、映画、美術の長所ですよね。答えが一つしかないものは、すぐにつまらなくなる。

 

 

 

何はともあれ、いい作品なので是非観ていただけたらと思います。それではまた!

 

 

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※面白い例として、蛸があります。旧約聖書の記述によって、ユダヤ、キリスト、イスラム文化圏で蛸は非常に忌み嫌われる存在ですが、東アジアやエーゲ文明では蛸はよく食べられたり、美術品に描かれたりする身近な生き物です。ですから同じ物でも文化圏によってそれが何を象徴するかは、全く違ってきます。

 

 

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