10月2日(日)、私の地元の町である秋田県横手市増田町にて、同町の歴史的建造物を公開するイベント「蔵史(くらし)めぐり」が開催されました。

 

 

秋田県横手市増田町は同市の東南に位置する町で、南北朝時代〜戦国時代まで城下町として栄え、江戸幕府の一国一城令により城郭「増田城」が無くなった後も産業・交通・物流の要として繁栄しました。1643年(寛永20年)に開始された朝市は現在まで続いており、葉煙草と生糸の生産は一時期秋田最大となったほど。さらに黒鉱を産出する鉱山「吉野鉱山」の操業が始まり、明治時代には銀行(現在の北都銀行)や水力電気所も設立されるなど、在郷町(主要交通インフラや大規模な都市に隣接していない農村部にも関わらず独自商品の生産により発生・発展した町のこと)としてたいへんな賑わいだったそうです。その繁栄ぶりを現代に伝えるのが、町の中心部の商店街にある「国重要伝統的建造物群保存地区」。ここには豪商が築いた昔ながらの店舗・家屋が多数現存しており、特に家屋の”中”に豪華な蔵を作る「内蔵(うちぐら)」が有名です。普通、蔵といえば商家の富の象徴でもあるので、見せびらかす意味も込め家屋・店舗とは別に外に建てられるものですが、横手地域の地形は盆地のため冬は超・豪雪。そのため、蔵を雪害から保護するために蔵そのものを上屋という”鞘”で覆う構造になったのだとか。

 

内蔵の構造が外からもよく分かるお宅。家の中に完全に蔵が入り込んでいるのが分かるでしょう。

 

…と、ここまで書きましたが、実は私は内蔵をあまり見たことがなく知識も付け焼き刃です。というのも私が住んでいるのは商店街からちょっと離れた山の麓の農村集落で地域が別なうえに、そもそも内蔵とは「人ん家の中」にあるものだから。いくら同じ町内に住んでいる住人同士でも「お宅の内蔵なんか凄いんだって?ちょっと見せて!」とはなかなか言いにくいものです。特に日本人は金持ちであってもあからさまに”金持ち感”を表に出さない奥ゆかしい性格。お店の人だってただでさえ家の中にあって外から見えない内蔵をホイホイ他人に見せるわけがありません。そのせいか内蔵の価値が改めて見直され地域興しに活用しようという気運が高まったのはなんと21世紀になってから。ということで、今増田町はやっと観光地として整備されつつあるのですが、如何せんそれまではモータリゼーションとバブル崩壊の波をもろにかぶって寂れていた田舎の商店街だっただけにまだまだ発展途上の段階にあります。地元民を相手に商売するのと日本全国&世界各国からやってくる観光客を相手に商売するのは全く勝手が違いますからね。なお、今回はこの「蔵史めぐり」の開催にあわせNianticのスマホ向け位置情報ゲーム「Ingress」を使った町歩きイベントも行われました。発展途上の観光地を紹介するのに、現実世界を歩き回ってプレイするIngressのような位置ゲーは観光ツールとしてまさにもってこいですね。このイベントのレポート記事は後ほど私が運営するブログメディア「vsmedia」に掲載予定なので宜しければチェックしてみて下さい。

 

「蔵史めぐり」は、通常は一軒一軒個別に見学料が設定されている各家の内蔵を一度に見学できる共通パスを購入することで、好きなだけ内蔵や昔ながらの商家を見て回れる形式となっていました。以下は町中の様子です。

 

 

 

 

 

 

内蔵だけでなく、外から見ても「こりゃ昔は相当な豪商だったな」と分かる家が多くプラプラ歩いているだけでも目の保養になります。また見てお分かりのとおり、日中は歩行者天国になっており、道の両脇ではそれぞれのお店が露店を出展していました。

 

 

お囃子が練り歩いたり…

 

 

黒漆喰塗りの実演やワークショップが行われたり…

 

食べ物や農作物、骨董品を売るだけでなくつるし飾りや押し絵などの作品の展示もあったり…

 

 

蔵カフェ「くらを」ではハンドメイドクリエイターのアートマーケット「スルメ市」も開催されました。

 

くらを名物味噌キャラメルソフト。

 

この「くらを」の内蔵は町で一番古く、作られたのはなんと江戸時代だそうですが、贅沢なことにここをライブ会場として使用しブラスバンドの演奏会をやっていました。確かに蔵、それも二重構造になっている内蔵は防音効果もバッチリです。

 

 

そのためか他の内蔵でもいろんなライブが行われていました。

 

 

 

この旧佐藤與五兵衛家ではアンプ類まで持ち込んだバンド演奏が行われました。なお、ここは店舗の奥に内蔵のあるスタイルの建物ですが、今後内装を整備してイベントスペース付きのカフェにするそうです。

 

 

 

 

 


旧佐藤與五兵衛家所蔵の貴重な日用品の数々。これらもカフェになった暁には展示されるのでしょうか。

 

内蔵や建物の公開と併せ、中心地以外の増田町のスポットを巡るスタンプラリーも行われました。

 

そしてそのスタンプラリーとほぼ連動するIngressミッションも配信されました。ゆっくり歩いても1時間未満で巡れる初心者でも挑戦しやすいミッションでした。

 

メダルGET!

 

 

クリアすると記念の缶バッジとクリアファイルがもらえました。ただ田舎の町なもんでエージェント(Ingressプレイヤー)が少なかったのが、私がクリアした時点で私を含め5人しかプレイしていませんでしたが…。むしろポケモンGOプレイヤーの方が多かったのかも。

 

この内蔵一斉公開のイベントは今のところ年1回しか行われていませんが、見学自体は普段でも可能で、他の蔵関連のイベントも年に何回か行われています。興味のある方は観光協会のサイト及び関連SNSアカウントをチェックしてみて下さい。

 

増田町観光協会
http://masudakanko.com/