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きょうの日はさようなら (集英社オレンジ文庫)/集英社

【2025年7月。

高校生の明日子と双子の弟・日々人は、いとこがいること、彼女と一緒に暮らすことを父から唐突に知らされる。

ただでさえつまらない夏休み、面倒ごとが増えて二人ともうんざりだ。

いとこの存在に、なんの楽しみも期待もない。退屈な日常はひたすら続いていく。

けれど、彼女―今日子は、長い眠りから目覚めたばかりの、三十年前の女子高生だった…。 】
(アマゾンから引用)


■ 感想とかネタバレとか


なんか微妙……

というのは、たぶん、この作品に出てくる「昔」と「今」を表すモノがどれもピンと来なかったからだと思う…

マリオもポケベルも世代じゃないし、かといってこの本に出てくるような「女子高校生」でもなかったし、なんだか中途半端なもやもや感

共感できなくても本は楽しめるけど、あるあるネタで笑えないのはそれとは別だと思う

なんだろうね? とりあえずぎくしゃくした家族の中に異分子放り込んだらうまくまとまったよ系の話は大嫌いなので、その面はあるにせよ(同じ食卓でご飯食べるとか)、あんまり表に出してこなかったので読み切れた。

(ゲームをする場面で、父親と今日子がふたり座ってるシーンはけっこう好き)


さっくり馴染んじゃうのはいいし、ある意味明日子の悩みは解決してる

日々人のひとめ惚れはなんだったんだろう それを言えば生理と妊娠疑惑もなんだったんだろう

「子」は時々「未来」で「次世代」だけど、今日子が寝て起きたときに「おはよう」って言いたいのは明日子であって明日子の子供ではないしなあ

10年後なんで今も当時も知ったこっちゃねーよ。

生きてれば生きてるし、うっかりどこかで死んじゃうかもしれないし、そんなの分らんがな。



初恋の人とか、変わったものの中で変わらないものとか、変わってないように見えて変わってるものとか。

ひとつだけ、見たこともない景色で見たこともない場所だったらまだマシだったかなって思ったんだ。

見たことのある景色で細部だけに差違があると、ああそうか違うんだってなる。

違うって知ってるのに、だって同じだったじゃないかって、…あれはなんだ? 虚しいに近い? 頭が混乱する。


P214でぶわってなった。あそこ大好き。

「親」が「子」を守るように、「大人」は「子供」を守るものだ。常識や良識や善悪や是非でなく、「そういうもの」だと思っている。

坂木司さんのひきこもり探偵のお父さんが「幸せにおなり」って言ったのに通ずる。


あとあれね! P118の最初の4行!

すっごい好きだったのでがんばって引用する!


 そうこうしている間にピザが届き、床に広げて四人で食べた。お母さんがいたら「せめてテーブルにつきなさい」って怒っただろうな、と思う。父はお行儀全般に無頓着で、でも肘をつかないで、靴をそろえて、外から帰ったら手を洗って、と小言を重ねる母はどこか楽しげだった気がするのは、記憶が美化されているだけなのか。チーズが細く糸を引く。


なんかよくわかんないんだけど「うっわマジかこの流れでこの一文を最後に入れるか」って思って二度見した。ここ大好き。

一穂さんで読んだことあるのは「雪よ林檎の香のごとく」だけ、まあその1冊でよく覚えてたな自分と自画自賛しておく。

あらすじだけだったらきっと買ってなかった。

買ったのは、このいい味を出している表紙とこの人がこの題材で物語を書くならどんな風になるんだろう、と薄っすらよぎった。


カバーイラストは宮崎夏次系さん!
この表紙…いいよね…!! タイトルのフォントもよい。

集英社オレンジ文庫。