夜の光/坂木 司
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【慰めはいらない。癒されなくていい。
本当の仲間が、ほんの少しだけいればいい。

本当の自分はここにはいない。
高校での私たちは、常に仮面を被って過ごしている。
家族、恋愛、将来……。
問題はそれぞれ違うが、みな強敵を相手に苦戦を余儀なくされている。
そんな私たちが唯一寛げる場所がこの天文部。
ここには、暖かくはないが、確かに共振し合える仲間がいる。
そしてそれは、本当に得難いことなのだ。

これは天文部に集うスパイたちが、最前線で繰り広げた戦闘の記録。】

星の距離でつながる4人

● 登場人物

中島翠(本名)=ジョー(コードネーム)
(命名理由:ぱっと見はお嬢様っぽいから)
男尊女卑バリッバリの両親の意見は「女は嫁に行くのが一番幸せ」。
唯一の味方は弟、目標は家を出てひとり暮らし。
学校は東京の大学の推薦をとるための戦場。

青山孝志=ゲージ
(自称アーティストくさいから、芸術家を短くして)
大敵は夏休み、常に騒いでいたい男の子。
ハニー、シュガー、ベイビー、云々。
すいません正直に言うとかなり、語尾がイタい…!
スパイで言うとコウモリっぽい。情報戦担当。

安田朱美=ギィ
(どう見たってギャルだろ)
外見を武器にして攻撃的に立ち回るスパイ。
敵は内部、外へ行くための片道切符。


黄川田祐一=ブッチ
(天文部「部長」の省略)
“爆弾”を運ぶ人。
がたいが良い農家の息子で、肉が大好き。
自前の野菜を焼いて即興バーベキュー。
この人が1番不器用かもしれない。


全員名前に色の名前。
もっと言うと女性は名前
男性は名字に入ってる ということに今気がついた…!


基本は 新入部員を集めようとしながら
夜に集まって野菜と肉を焼いて食べ それぞれのプライベートにふれ
ちょっとだけの「あれ?」を解きにかかる。
土台はなんとも青春らしい話が多かったですが
導入部分の「スパイ」が誇張されていて
先入観(=ひきこもり探偵の坂木司イメージ)で行くと 「おおお? こんなだったけ?」と違和感がありましたが…まあ、変わってない、かな。
悪意が明確なものもあったし、行き過ぎた遊びもあったし、
お前らちょっと… てなのもあったけど、最後でどんでん返し。
凄い奇妙な所で一本、釣り上げられたような。



■ 季節外れの光

中島翠ことジョー視点のお話。
スパイの始まりと偶然集まった4人。
やる気のない天文部員だから、文化祭の展示も先輩のを写そう!と決めてしまうくらい。
屋上で蛍のような光を見たと言う部員が出て
他にも“見た”証言があらわれてからは――。
とってつけたような理由と柵、点滅を繰り返す「なにか」。


結局相手が誰か解ってないのが消化不良!
そしてよく電池が切れていなかったなあと思ってしまいました。
ジョー好き大好きめちゃくちゃ好き! 読めば読むほど好きになるなこの子。味が染み込んで行く大根みたい。や、どっちかってと殻つき卵か?


■ スペシャル

青山孝志ことゲージ視点のお話。
天敵、大敵、光を奪い余計なものを与える「夏休み」の登場。
目標とする大人が泥棒って!(笑)
カルくてケーハクな男。大人っぽく見せようとしてる高校生。

4人で行く始めての合宿。
ギィの痣のあと、ブッチが配達をするピザ屋での奇妙な注文。
後者 わかるかよ! という感じでしたが、トリックとしてはよくあるかな。
ただ音楽知識もないとキツい。


■ 片道切符のハニー

安田朱美ことギィのお話。
こちらもジョーと同じく家庭内部、両親との諍い。
母親に良く似ている女と、父親に良く似ている中年。
わたし この子の
許す前提で家出する馬鹿いるかよ。

が凄く好き! 最後の一文も好きだけどね~。

学校では文化祭とゲージとのクサすぎる恋愛?(一方通行)
片道だから「最終手段」使ったらもう戻れないんだよ、朱美さん!!(笑)
ジョーのカッコよさがすげえ。なんだこの子。
サッカー部の「J」と、急に機嫌が悪くなった売り子さん。
にゃー。酒はともかくゴムはやりすぎだねえ、飲ませてってのも気に食わないねえ。


■ 化石と爆弾

黄川田祐一ことブッチのお話。
ぎゃーこの人が1番恋愛としては辛いんじゃないでしょーか。
ジョーはしてなかったからさておき。
祖父の口癖、丹精込めて育てたイチゴ。再開した伯母。16歳と26歳。

燃やされたぬいぐるみと、彼氏に言われてきた女の子。
エサをあげている猫。目撃された奇妙な姿の女。

農家の人って「根付く」感じがあったけど この子が1番 遠くへ行きました。いえ死んでないですが(笑)
「子供だから」と否定されたもの全て。


■ それだけのこと

その後。
ジョー視点で、再会した4人。

「フェローズ、元気で」も好きなんだけど(同級生、恋人、相棒、「仲間」の意)
ああ、この人達 お互いにお互いのことほとんど知らないんだ、そのまま3年間過ごしたんだ、と思うとぶわわーっと涙が!(笑)

帰って来いコールをしつこくする両親も
許されることを待っている母親に似た女も
遠くへ行きたかったのに地元に残った結果も
イチゴを見るのには まだ距離が必要な恋も。

そうか、知らないのかーと納得したら。
「友達」ではない4人の3年間は 部活でやった想い出とか 合宿での想い出とか 文集に載るような作文になるような将来できるかもしれない子供に語って聞かせるような そういうものじゃなくて。
お互いにお互いの敵こそ知らないけれど
水面下で戦っているどこにも残らない歴史の一部 のように思いまし た。

まあ予想していたのと違って「あれこんな話書くんだー」というのが1番かな。



■ レビュー拝読!
新・たこの感想文さま/12月3日追記
ある休日のティータイムさま/12月12日追記


文庫版出た!(2011年9月4日追記)

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