でかい月だな/水森 サトリ
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【満月の夜、友人に崖から蹴り落とされた「ぼく」。
命は助かったが、右足に大怪我を負う。そんな「ぼく」の前に、二人の変人――科学オタク・中川と邪眼を持つオカルト少女・かごめ、そして「やつら」が現れる…。
第19回小説すばる新人賞受賞作。 】


訪れる「いつか」に怯えた綾瀬と
右足に大怪我を負いバスケが出来なくなった「ぼく」。
「でも」を使わない科学オタクの秀才、中川と
左目に眼帯をしてなにもせずただ座っている少女、かごめ。


入院のため留年した二度目の学年。
爽やか青年のような笑顔で話しかけてきたクラスメート。
ごみ収集所がきれいになって
「行ってらっしゃい、気をつけてね」なんて優しい声。
遠巻きにしていたかごめに話しかけて和解?
おまけに魚まで見えはじめて みんな笑顔で幸せそう。

なんだ この気持ち悪い世界は。


おおー。結構好きだ!
理論がしっかりしていないSFってSFじゃなくてファンタジーだと思ってます。
だからこれも まあ想像力豊かな少年少女 だとか
ちょっと理屈捏ねてみましたよ くらいで。
特別SFな感じはしなかった。ファンタジー或いは夢見事。
一本筋は青春。
これは文庫になったら買って読み直したいかもしれん。
色々ぎゅーって感じが好き!

怪我をさせた相手を庇うぼくと
綾瀬を責め立てるばかりの両親やクラスメート。
どちらが加害者? 被害者? 
やべえこいつ大好きだ! 惚れる! と思ったのは
「勝手なことばかり言いやがって!
あいつを許していいのはオレだけだ!
あいつを憎んでいいのはオレだけだ!」

そう、直接的には関係ない。
親や友人や教師がなにをどう言おうが その感情はあんただけのもんだ。
譲るな。妥協するな。誤魔化すな。なかったことにするな。見失うな。
絶対に 摩り替えるな。


早くに亡くした母親を求めて泣く妹、
信じていないからこそ騙れる気持ち。
超ツンデレ――というか途中から手負いの猫がキャンキャン鳴く感じになっているかごめちゃん。
1歩間違えばかなり鬱陶しいけど好きかもしれない。手懐けたい。
中川くんは宗教家みたいな男の子だったな。勝手に跪いてそう。
「まいが死んだら僕も死ぬ」で思わずときめいたわたしって…!
妹さん可愛すぎる。一緒にココア飲みましょ?
こんなに大好きだったものを もうやれないと言われた瞬間。
シュートしているだけなのに嬉しくて泣きたくなった。

綾瀬は 楽しくて 楽しくて 終わることを怖がった人 かなあ。
どうだろう――まとめると詰まんなくなっちゃいますよね、義務と謝罪。
最後が凄く好きだったなあ。ああ、そういうことになるよな、と思いました。
死ぬまで 一緒に花火をして焼肉を食べる。別れて そしてまた会おう。
不確定で不安定の「いつか」。

ちょっとアレだなーというのは
ヒカルとユキの登下校は違う方向に行きそうな所とか
表紙とタイトルから受ける印象と内容がかみ合ってない所とか。
タイトルを台詞として使うのも早かった。
逆か、台詞をタイトルにしたのかな。
さくさく読みやすかったし200ページ後半くらいでした。
他の作品も読んでみたい!


イラストレーターは丹地陽子さん!
よーく見ると 似てなくも ない。 が この人 不思議すぎる。(大好き!)

文庫版が出たのでぺたり。追記H22年2月14日

でかい月だな (集英社文庫)/水森 サトリ
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