九条探偵の怪奇ファイル

このブログは、架空の街「帝都」で発生する怪奇事件の調査ファイルを公開する≪妄想小説ブログ≫です。

見えない壁に囲まれた帝都の秘密とは!? 自分の影を失った男・九条探偵の過去とは!? めざせ週一更新!!


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「あなたは一体、何者なんですか? ……<教授>」

火星人の上で<教授>と<議長>に銃を突きつけ、レイは冷静にそう言った。「早く撃て、何をしている!!」。剛力が叫ぶがレイは意に介さない。

確かに火星人を2体倒し、1体を残すのみという有利な状況だ。しかし自動小銃の弾はほとんど残っておらず、また火星人を倒した最大の勝利要因である手榴弾も尽きている。油断などできない状況ではあった。だが焦りを感じ始めている僕たちを手玉に取るように、<議長>はレイに嫌な笑みを向けながら「よろしい、私が説明しよう」と告げた。

「ダメだ軍人、撃て!!」。しかし僕はそんな剛力を制する。「いや、僕も知りたい」。すると<議長>はなぜか余裕の笑みを僕に向けて告げた。「彼女はね、おふたりさん……<最初の人間>なのだよ」と。

「……最初の、人間!?」。僕の疑問は<議長>を調子づかせる。そして彼は得意になって続けた。

「ああ。かつて地球は一度滅亡した。そこへ降り立ち、人類を再生しようとしたのが『壁』の向う側の人間だった。しかし人類が地上から姿を消して数世紀。再生に使えそうな遺伝子をなかなか発見できず、ようやくある地下シェルターで風化寸前の人骨を発見したのだよ。……そう、それが<教授>さ」

<議長>はそこで一旦言葉を切る。それから一息置いてから続けた。

「それから何度かの失敗をしつつ、<教授>はこの世に人として甦った。<教授>は『壁』の向う側の人々の要望に応えて地球文明を再生しつつ、人類の改造クローンを生み出して手下となる<ドクター>を増やしていったのさ。そしてある程度のコミュニティーが完成すると、今度は街を建設してそこで人類を養殖しようとした。それがつまり……」

「……帝都」

「どうだい、興味深いだろう。<教授>はそうやって生命について研究を続けていたのさ」

僕は顔を上げた。街並みの向うには、うっすらと巨大な『壁』が見える。それは僕にしか見えない『壁』。帝都をぐるりを一周し、天高くそびえ帝都を包んでいる。ここは人類という絶滅種を保護するものであり、しかし『壁』の向う側の一部の人間にとっては畜産場でもある場所。あの『壁』の向うには、いったいどのような世界が広がっているだろうか……。

だがここでひとつ疑問が沸き上がる。だから僕は<議長>にその疑問をストレートにぶつけてみた。「<議長>、あなたはなぜ『壁』の向う側の人、なんて遠回しな言い方をするんだい? あなたも彼らと同じ『壁』の向う側の人間だろう」

すると<議長>はニヤリ。「『壁』の向う側の人間? 私が? ……いいや、違うね。私は……未来から来た人間さ」

「未来人?

「ああ、そうとも。しかし私のような人間がいては不都合が生じる。だって帝都が人間動物園だということが帝都の人間に露見してしまうだろう? だから『壁』の向う側の人間は、未来人を帝都に出現させる前に別の空間に閉じ込めようとしたのさ」

僕はハッとした。「まさか……時空獄!?

「あれは未来人を……いや、私の仲間たちを隔離するために作られた次元の狭間の監獄。……悔しかったね。叡智の探究で時間を飛び越えた仲間たちを永遠の監獄に閉じ込めざるを得ない。何の罪もないというのに……だからさ。私は<議長>という絶対的な力を手に入れ、『壁』の向う側の世界を掌握したのだよ」

「……そのために帝都の人々を犠牲にしたのか」。レイだった。銃を握る彼女の手が震えている。

「仕方なくてね。<議員>どもを納得させるには、相応の蜜を与えなければならない。なあに、そんな事では人類は滅亡しないよ。その証拠に、未来人たる私が存在しているのだからね。ククククク……」

「……狂ってる」。剛力だった。しかし<議長>の顔からは余裕の笑みは消えない。それどころか、勝ち誇った顔でレイにウインクした。刹那、上空から火星人が一体、ズシンと地上に降り立つ。

「……!!」。迂闊だった。しかし僕たちがうろたえている間に、火星人は2体、3体と降り立ち、最後には5体が揃って僕たちを取り囲む。

「遅くなりました、<教授>、<議長>」。5番目に降り立った火星人から姿を現したのは警部。「……クソッ、だから言っただろう!!」。剛力がレイを非難するが、時すでに遅し……。そのことを理解しているのか、レイもまったく動じない。

「さあ、銃を捨ててもらいましょう」

5体の火星人に加え、治安維持隊も僕たちに銃を向けている。不死の僕はともかく、レイと剛力は無事では済まないだろう。僕と剛力は手にしていた自動小銃を投げ捨て、レイも渋々ながらそれに続いた。

「さて……」。<議長>がレイの自動小銃を拾いながら口を開く。「探偵、あなたの不死の肉体には魅力がある。なにしろ私は『壁』の向うの人間と違って脆弱なのでね。しかしそこのならず者と元軍人には興味がない。面倒なことになる前に始末させてもらうよ」。そして銃口をレイに向ける。「……まずはキミからだ、軍人くん。確かキミには言ったはずだ。女のくせに出しゃばるな、とね」

「……」。強い視線を<議長>に向けるレイ。その反応が愉快なのか、<議長>は薄い笑みを浮かべながらゆっくりと唇を舐めた。「さあ、お別れだ……」。引き金にかけた指に力が入る。

……バン!! 銃声は一発だけだった。しかしレイは無傷。かわりに<議長>の自動小銃が、何か強い衝撃で弾き飛ばされる。どうやら別方向から発射された弾丸が<議長>の自動小銃にヒットし、そのまま自動小銃ごと弾き飛ばしたようだ。

「おう、オレの腕もまんざらじゃないな!!

振り向くと向かい側の半壊したビルに人影。そこにいたのは狙撃用の銃を構えた風見くんだった。

「九条さん、お待たせしました!!

さらに別方向からは、唸るバイクのエンジン音と女性の声。あれは……瑠璃子さんだ。彼女は勢いよく瓦礫に乗り上げると、そのままの勢いで舞い上がり、空中から手榴弾を投げつける。それは火星人の足元で破裂して火星人を転倒させた。

『私もいるぞ!!

瑠璃子さんを乗せたバイクが着地と共に変形し、人型になって火星人に飛びかかる。左腕にはドリル。……電人博士だ。博士は唸りを上げるドリルを振るい、いとも簡単に火星人の身体を貫く。

「みんな……まさかそんな……」

僕は信じられない想いだった。風見くん、瑠璃子さん、電人博士……。みんなの頼り甲斐ある顔を見ていると、自然と活力が沸いてくる。居心地のいい場所に戻ったような感覚だった。だがそれだけではない。遠くから複数の市民集団が駆けてくる。すると今度は剛力の表情が明るくなった。

「みんな……遅いじゃないか、何をしていたんだ!!

「仲間を集めるのに手間取ってしまった、すまない剛力さん!!

彼らは胸に帝都警察のバッジをつけていた。剛力の様子から察するに、あらかじめ帝都警察の仲間に声をかけていたのだろう。その数、ざっと数百人。それぞれが熱を帯びた目をしており、到着するなり自動小銃やら拳銃で治安維持隊と火星人に攻撃を始める。

「ここは我々にお任せを!!」。帝都警察の誰かが銃を撃ちながら僕たちにそう言った。僕と剛力は慌てて自動小銃を拾い<議長>と<教授>を追いかけようとする。しかしふたりはすでに警部の火星人に乗り移り、帝都の空へと逃げつつあった。

「レイ!!」。彼女は元いた火星人の上で銃を乱射していた。隙を突いて逃げられたのか!? 悔しそうなレイの表情と、とにかく一撃でも加えてやりたいという必死の銃撃が、予想外の事態が起こったことを推測させた。そしてその想いは天に通じたのか、<教授>の左目のあたりにレイの銃弾が当たって血の花びらを飛び散らせる。

上昇していく火星人の上で崩れ落ちる<教授>。……どうなった!? 上空に目をこらした瞬間だった。

「九条さん!!」。瑠璃子さんの声。気付くとすぐ横に火星人がそはびえ立っている。そして今まさに怪光線を発射しようと目を光らせたところだった。……しまった!! その時「……伏せろ」。無感情な声。突然、僕と火星人の間に男が割り込んだかと思うと、スッと手をかざして怪光線を跳ね返した。

自分の放った怪光線を跳ね返された火星人は、無防備なまま光線を浴びて破裂。助けてくれた男は、ホッと息をつく僕にゆっくりと振り向いた。その姿は僕のよく知っている人物。<『壁』の向うから来た男>だった。

だが彼は相変わらずの無表情で再会の喜びなど微塵も見せない。そればかりか、ここまでの応援で一気呵成に反撃に転じようとする僕に冷水を浴びせるような言葉を放った。

「助けてくれ、九条くん。<尊い存在の少女>が<議長>の一派に囚われた」



……つづく。

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