国際茅葺き協会ITS2015スウェーデン大会報告 | 九代目七右衛門の徒然日記

国際茅葺き協会ITS2015スウェーデン大会報告

茅葺きフォーラム第2セッション3件目は、昨年9月にスウェーデンで開かれた国際茅葺き協会(ITS)の総会に参加した日本茅葺き文化協会理事でかやぶき職人の塩澤実さんのお話でした。スウェーデン、イギリス、ドイツ、デンマーク、オランダなどの国で、環境にやさしいカヤの栽培が奨励されており、かやぶき職人が保護してきた歴史的建造物などを知ることができたそうです。イギリスでは茅葺きの建物はビンテージの扱いで、投資の対象にもなっている。屋根材のヨシを扱う商社もあり、オランダでは毎年3000棟のかやぶき住宅が建設され、ドイツではかやぶき職人に多くの注文があって予約でいっぱいだったというお話がありました。

これについて、助言者の立場から日本茅葺き文化協会代表理事の安藤邦廣・筑波大名誉教授(工学博士)は、オランダは低湿地にある国で、水辺の環境が悪化するととてもやっていけない。このため水を浄化する水辺の植物のヨシを屋根材に使うなどして循環させることで国土を守ってきたのです。自然を循環させるヨシの文化が育ってきたと解説していました。安藤代表理事によると日本の茅葺き屋根はかつて500万棟あったが、現在は10万棟まで激減している。かやぶきがなくなったことで水辺のヨシも活用しなくなり、それが原因で河川などの浄化作用が滞ってきた。水辺のヨシを利用し、ヨシが茂ることで野鳥の豊かな世界が広がり、水質も良くなる。自然環境の良い循環が保たれる。かやぶき屋根はその重要なきっかけになっているとおっしゃっていました。