TALFとは | 紺ガエルとの生活 ブログ版日々雑感 最後の空冷ポルシェとともに

TALFとは

TALF(Term Asset-Backed Securities Loan Facility)プログラム概要


2009年2月に詳細が更新されています。更新版をご覧ください。



- TALFは適格ABS向けノンリコースローンの提供を通じ、消費者と小規模事業者への金融機関の貸出を促し、またABS市場一般の環境の改善を目指す
- 新規に発行される最上級格付(AAA格)のABSに対して、NY連銀が1年のタームファイナンスを2000億ドルを条件に供給
- 適格ABSに対してヘアカット(掛け目)を掛け、ノンリコースベースで資金供給
- 財務省が本プログラムからの損失のうちファーストロス200億ドルを負担


<適格担保資産>
- 米ドル建てのキャッシュABS(シンセティックは含まない)
- 最上級格付を2社以上の格付会社から得ていること
- すべてもしくはほぼすべての原資産は、新規もしくは直近に発生した米国居住者に対する与信でなければならない
- オート、ステューデントローン、クレジットカード、あるいはU.S. Small Business Administration保証の小企業向け貸出のみが原資産となりえる
- 今後CMBSやnon-Agency RMBSなどの他の資産も含まれる可能性あり
- 二次証券化商品は不適格
- 適格ABSのオリジネーターはExecutive Compensationの制限を受けているものに限る
- 自社がオリジネートしたABSを担保にすることは出来ない


<適格借入人>
- 米国民
- 米国法にもとづいて設立された法人(非米国企業の米国子会社を含む)
- 外国銀行の支店もしくは代理人


<ストラクチャー>
- 適格ABSに対してヘアカット(掛け目)を掛け、ノンリコースベースで資金供給
- 担保資産の入れ替えは不可
- 1年満期、月次の金利支払い
- 満期が延長される可能性あり
- 期中の担保資産の値洗いは不要、マージンコールなし
- 担保資産からの元利払いはTALFローンの利払いと元本返済に即時に充てられなければならない


<ヘアカット(掛け目)>
- NY連銀が適格担保ごとにそれぞれの価格変動性に応じて設定


<プライシングとアロケーション>
- NY連銀が毎月一定額のローンを競争入札形式で提供
- 価格は1年のOIS(Overnight Index Swap)対比のスプレッドで提示
- NY連銀が最低入札利回りを提示
- NY連銀が高リスクのABSに関して適格担保としての受け入れを拒否する権利を留保


<プライマリーディーラーとクリアリングバンクの役割>
- 借入人はプライマリーディーラー経由で競争入札に参加、担保はクリアリングバンクにて決済


<財務省の役割>
- TALFローン貸出のため、NY連銀がSPVを設立
- 財務省のTARP(Troubled Asset Relief Program、不良債権買取プログラム)がSPVに200億ドルの劣後ローンを拠出
- 200億ドルを超えるTALFローン貸出が発生した場合、NY連銀がSPVにシニアローン追加貸出を行う
- SPVの担保資産からの元利払いはNY連銀のシニアローンのペイダウンにまず使われる
- 利鞘部分はNY連銀と財務省で分配


<プログラムの期間>
- 2009年12月31日まで新規のTALF貸出を実行、延長の可能性あり



ちょっと遅れたが、プログラムの内容を備忘録的に。
TALFに加え、6000億ドルのGSE発行の債券買い取りプログラムも発表された。


米国債の金利低下が起こっても。
GSE債(ファニー/フレディー/ジニー/ホームローンバンク)のスプレッドが拡大していれば。
住宅ローンを供給する人の資金コストは、高止まりしたまま、ということになってしまうので。
住宅購入者への貸付金利は、当然高くなってしまい。
金融機関の債券へ政府保証つけたことで、同様のステイタスを持つGSE債のスプレッドが拡大するのを防ぐ、というアイデア。


前回の記事で書いたとおりだが。
政府出資を受けた金融機関がすべて、リスク回避的行動をとると。
リスクの取り手がいなくなり、更なる資産価格の下落、というか資産デフレを引き起こすので。
誰かが買い向かわなければならないのだが。
米国政府と中央銀行が、20兆円(+60兆円)を元手に買い向かう、ということ。


そういう意味では、ポジティブに受け止められる。


で、TALFに話を戻すと。


クレジットカードのパフォーマンスの悪化がかなりの確率で予想され始めたため。
また、シンセティックCDOの担保資産として使われていた、クレジットカードABSが、CDOの解体に伴って大量に売りに出たため。
最も安全度の高いABSと考えられていた、クレジットカードABSの価格下落がここしばらく顕著だった。


これでクレジットカード債権向けの与信を、リスク回避的になった金融機関が引き締めたりしたら。
アメリカの個人消費の更なる減速は、間違いなく。
そうなった場合は、当然にマクロ経済へも悪影響があり、住宅市場の回復の見込みも、後ずれすることに。


また、自動車ローンの貸出基準が厳格化されて。
そのせいもあり、新車販売が伸び悩んでいるので。
貸出に使うお金のコスト、すなわち借入金利を低下させ。
貸し倒れが起きても、吸収できるだけの利ざやを確保させて。
自動車業界をてこ入れするのも、狙いの一つ。


TARPによる不良債権買取が中止になったあと、資本注入だけ行っても片手落ちだったわけなので。
今回のTALFとTAPRの合わせ技は、リスクの受け手を増やす、という意味で合成の誤謬に対する処方箋になりうる。


だが、後述するが、商業用不動産価格の下落の問題と、基軸通貨としてのドルの信認(とシニョレッジのギブアップ)の問題が残る。


これも先日指摘したが。
オフィスや、マルチファミリーや、ショッピングモールなどの商業用不動産価格の下落を防ぐのも、極めて重要なわけで。

というのも、単純にCMBSやモーゲージローンの市場を支える、というだけでなく。

商業用不動産の価格が下がると。
一般の企業向け有担保貸出の回収率が、下がってしまうので。
銀行の融資姿勢が、一段と厳しくなって、貸し剥がしや貸し渋りが起こる可能性が高く。
資産デフレの深淵に、落ち込む危険が高い。


したがってTALF適格担保に、CMBSを含める必要があると考えるのだが。
ABSと比べて原資産の分散が低いCMBSというアセットクラスへのエクスポージャーを、政府とFEDでがっつりとって、大丈夫なのだろうか、という疑問が残る。


あんまり派手に何でもかんでもFEDのバランスシートに乗っけていると、ドルの信認も失われる可能性も。
微妙なさじ加減が必要で。


適格担保の範囲の拡大と、ヘアカットの水準に、個人的にはとっても関心があります。


あと、興味があるのが。
このTALFプログラムの入札が仮に札割れになるようなことがあったら。
つまり、資金需要がなく、「貸してもいいよ」って言ってる金額よりも少ない金額での入札しかない状態になったら。

アメリカの個人消費は完全に死んでしまった、ということになり。

本当にこの世の終わりが来るだろう。

札割れするとこ、見たくないなあ…。



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