中原賢二が理事長を努めるNPO法人「社の極」では、人は自然の一部であり、自然と共生する器であるというコンセプトの基に、日本の気候・風土にあった日本古来の「木・土・紙の文化」を原点とした建築の研究を推し進めております。
 今回はその原点の一つである紙/和紙についてご紹介します。





<和紙の歴史>


  和紙は「わがみ」ともいわれて、日本で造られる手漉き紙のことを言います。大陸より伝来した製紙技術は日本の風土に根を下ろし、日々の暮らしに深く関わ り、日本独自の和紙文化の華を咲かせました。平安時代には、華麗な装飾紙が王朝文化を一層華やかに彩り、鎌倉・室町時代には上部でしなやかな和紙は暮らし の中に浸透し、書面以外の様々な用途に広がっていきました。江戸時代には、紙帳(紙製の蚊帳)や(古代よりあった)紙衣・紙布が、各地でさかんに生産され るようになったりと、日常生活の必需品となった和紙の商取引は、米・木材に次ぐ量となりました。
 明治以降、洋紙の流行により和紙は暮らしの中で儀礼的又は趣味的な使用に押しやられ、隆盛を極めた手漉き業も衰退の一途を辿りつつありました。
 しかし近年再び和紙の伝統的技法が見直されるようになってきました。その要因は和紙は強靭な靭皮繊維を、手仕事で丹念に紙に仕上げる為、繊維の本質が失われず、保存の仕方によっては千数百年間保存が可能であるということが正倉院の宝物の紙によって実証されています。
 文化財の修復に、伝統的な手漉き和紙は欠かせないものですが、日本の高度な修復技術と共に和紙の働きが海外の文化財修復にも生かされています。
 そして、世界中で日本人程多くの紙を暮らしに取り入れている民族はないと言われており、繊細な美意識を働かせて漉かれた紙は、それ自身立派な芸術品の風格を備え、記録のための紙が豊かなことは、国民の知的水準を高めることに役立ちました。






<和紙の材料>


楮(こうぞ)  クワ科の落葉樹
  繊維は太く長いので、強度を要求される障子紙・表具用紙・記録用紙・書面用紙に使用。

三椏(みつまた)  ジンチョウゲ科の落葉低木
  繊維は細く短く光沢があり、繊細な透かし模様を入れることが可能。

雁皮(がんぴ)  ジンチョウゲ科の落葉低木
  生長が遅いので、野生のものを採取して使用。繊維は三椏に似ている。
  謄写版原紙用紙・銅版画用紙・日本画用紙・箔打紙・古くは写経用紙に使用。

麻(あさ)  クワ科の一年生草木。
  製紙原料として最も古くから使用。
  繊維は細く長く、独特の風合いの紙肌となるので、日本画用紙・書道用紙等に使用。

この他の材料として竹・稲藁などもある。






<和紙の作り方>


① かまど(現在ではコンロ等)の上に水を張った釜鍋を置き、杉の木の枝をふたをするように並べ、その上に原料の枝を束にして積み大きな樽に似た器を逆さまにして被せ、蒸気で蒸す。

② 蒸し終わり枝からはぎ取った皮を天日で乾燥させる。

③ 乾燥させた皮を一~二日間程水槽に浸け、柔らかくなった繊維と繊維の間を拡げた後、沸騰した湯の中へ入れて一時間程煮る。

④ 煮えて飴色になった皮を取り出し、裂いて網目状になったら蓋をして、火を止めて三時間蒸らす。

⑤ 蒸らし終わったら蓋上げをして軽く絞ってたたみ、空気に触れないように袋に入れて冷暗所に一時保存。

⑥ 原料を川等の流水に浸し、水が透明になるまで水洗いをし、搾水を繰り返して灰汁抜きを行う。

⑦ ひとつまみの原料をとり、丹念に表皮やごみを取り除く。

⑧ 軽く搾り、木製の台の上にのせ、端から順にまっすぐ木の棒でたたく。又端から卵焼きのように丸めて、九十度回転させて同様にたたき、四・五回練り返して長い繊維がなくなったら和紙の原料の出来上がり。

⑨ 流しに入れた漉き舟という四角い箱の中に水を入れ、原料を0.2%程度の濃度になるように加え、棒と馬鍬という大きな竹製の櫛で百回程かき混ぜて、原料の繊維を一本一本バラバラにする。

⑩  その中にトロロアオイという粘性の物質を加え紙料液となる。四角い箱には簀(すのこ)がついており、簀を挟んだ漉き桁で握った手の小指の方を奥に向かっ て突き出すようにして、手前の上層の紙料液を少しすくい上げて、簀を平らにした後、すぐ余分な紙料液を手前に捨てる。これで出来る層が紙の表面となる為大 変重要な作業である。(この初めにすくい取る液を「化粧水」又は「初水(うぶすい)という」

⑪ 舟の奥から手前に桁一杯に汲み取り、一呼吸おき桁を前後に少し斜めに揺する。横にも数回揺すり、紙の厚みを揃える為数回汲み取り同じ事を繰り返す。

⑫ 最後に桁の上の手前にきた波を一回奥にやり戻した後、再び波が奥に行く瞬間先の方に放り出すようにして余分な紙料液をポンポンと捨て去る。これは紙の表裏面を決めるポイントとなる。(この最後の水を「捨て水」という)

⑬ 出来上がった湿紙の重なった紙床の上に一枚置き板で挟んで、プレスして脱水し乾かすと、高野豆腐状になって長期保存することが可能。

⑭ 一枚ずつの紙にするには、再びこの塊を水で湿らせた後、一枚一枚をはがして板に張り乾かす。乾いたら板から剥がし、化粧裁ちして紙が出来上がる。






<優れた内装材としての和紙>

 
 奈良時代には貴族の邸でも襖や明かり障子はなく、紙は書写用の為のもので、大変貴重なも
のでありました。

  平安時代に入って、上流貴人の邸宅として寝殿造りが確立すると、大陸文化の影響をうけて屏風や衝立・几帳等移動の出来る臨時的な間仕切りが発生し、又可動 仕切壁ともいうべき襖やはめころしの建具壁ともいうべき紙貼りの張り付け壁なども生まれ、そして今日の障子に相当する明かり障子も考え出されました。
 こうして空間を伸縮自在に使う日本独自(引き戸)の建具形式が確立されたのです。

  鎌倉・室町時代、畳が床全体に敷き詰められるようになると、襖がさらに重要となり同時に外周り建具の主流であった板戸に併設又はそれに代わり障子がますま す普及し、書院造りの様式が完成しました。このように、今日のガラスや合板に相当する耐久力をもった日本独特の襖や障子等の紙の建具が発展普及しました。

 安土・桃山時代には、豪壮な城郭建築が造営され大広間の書院には日本を代表する絵師達の障壁画の傑作が生まれ、襖絵の黄金時代はその頂点に達しました。
 襖絵とは、一面が大きな絵図そのものであり部屋の用途や間取りに応じて二面三面と横へ横へと連続して、全体として巨大な障壁画を形成していくものです。
 つまり、襖とは室内装飾の為の絵画そのものであり、その美術品を表装する為の塗師や飾師の細工が施される等、巨大な装飾絵画をそのまま建具化した日本人の独創的な建具といってよいと思います。

 利休の頃、書院造りから独立した茶室が完成し、障壁画とは対照的に無装飾で清楚な美しさを追求した襖が「侘び・寂」演出しました。
 そして茶室の障子・土壁の腰貼り等には、床の間の掛軸や茶花の鑑賞の妨げにならぬよう、脇役に徹した奥ゆかしい美しさがあり、それは今日の数奇屋建築の基本的なデザインポリシーとなり発展していきました。

 江戸中期には一般庶民の住居にも畳や襖・障子が普及し、中でも畳と一体の襖に対して、障子は畳の普及とは関係なく外周りの建具の採光の必要性から民家に採用されていき、冬の農閑期の副業として様々な地方で作られた障子紙や小判襖紙が中央の市場に出回る様になりました。

 明治時代に入ると、一枚貼り襖紙が誕生し全国的に流通始め、小判襖紙は完全に姿を消すことになります。
 障子については、ガラス戸が発生普及し建具の中でも重要となってきます。そして、それまで外周り建具であった障子は次第にその役目をガラス戸の内側に建てられる内周りの建具となっていき、障子の形式も腰板付き障子から腰板のない水腰障子へと代わっていきました。

  昭和三十年代頃まではガラス戸は一般庶民にとっては高価なもので外周り障子も存在しましたが、昭和四十年代に入るとアルミサッシのガラス戸が急速に普及 し、障子はサッシの内側を飾るカーテン的な建具と化し、それに従いたった一枚で外気の侵入を防いできた丈夫な手漉きの障子紙は大半姿を消し、高級な障子紙 として僅かに美濃・内山・土佐の手漉き障子紙が残るのみとなってしまいました。

 襖紙については、昭和十年代に越前でパルプによる機械漉き新鳥の子襖紙が開発されるや、手漉き本鳥の子襖紙の需要も次第に減少しました。
 特に昭和四十年代の住宅新築ブーム時代には、故紙原料を主とした機械漉きが主流となり、手漉き襖紙は全体の一~二%のみの高級襖紙となりました。

 このように、和紙は優れた内装材として襖や障子の長い歴史と共に、日本人の暮らしに密着してきましたが、近年では石油化学系の内装材や新建材が普及し、手漉き和紙の内装材としての役割は薄れてきました。

  しかし石油科学系物質の人体に与える影響やダイオキシン問題等が表面化した今日、植物繊維でできた呼吸する自然素材「和紙」が再び注目されるようになって きました。室内の湿度調整をし保温断熱効果を発揮する和紙。障子を透して差し込んでくる外光は、穏やかな光となって室内に拡散し、襖紙は光を柔らかに吸収 し部屋全体に温和な表情を創り出します。






<和紙を現代空間に生かす>


 和紙を素材とし、特性を生かした新しい造形芸術の創作がさかんに行われるようになってきました。
 それは空間デザインの分野でも同様であり、内装材の障子や襖の見直しと共に、手軽に取り入れられる和紙のインテリアが空間の脇役として活躍しています。

 和紙でつくったタペストリーや照明器具は、光を通すとさらに美しく、繊維を光が透かしてより一層柔らかな雰囲気を醸しだしてくれます。
 屏風は、最も軽い移動式の「壁」であり、間仕切りや目隠しとして使えば、他の家具よりも部屋に広がりを感じさせてくれますし、床の間のように屏風の前に花を置けば、日常の空間が改まった空間へと変化します。

 又、テーブルコーディネートに和紙を使用(例えばランチョンマット)することにより、洋食のメニューであっても、和紙のもたらす柔らかみにより、くつろぎの空間を演出することが出来ます。

 今こそ、光と影をうまく調和させ生活の中に取り入れていった先人達の知恵を、伝統を、現代空間に生かしていく時ではないでしょうか?
                                                 
 


                                   
参考資料: 朝日新聞社「和紙事典」
イラスト: 吉川佳子                                             
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天啓を受けるアーティスト

奈良在住の画家、白雲友子さんの個展『宇宙の息吹』が開催されます。


 -COSMOS- 
「新・天地創造」7部作 となっております。


春の一日、芸術を楽しまれてはいかがでしょうか。。。





★白雲友子's プロフィール★

幼少の頃より通算20年間、5ヶ国に及ぶ海外生活を経験。
商業デザイナーとして大手企業の海外向カタログやロゴ等を制作。
外国暮らしの中で触れた多様な世界観の原点を日本の古神道に見出し、
天啓を元に作品を描く。


★画歴(略歴)


 1歳半から通算20年間、欧米5ヶ国で海外生活を送る。
(スエーデン、スイス、オーストリア、アメリカ、イタリア)
カリフォルニア大学アーバイン校 University of California at Irvine (U.C.I.)
芸術学部スタジオ・アート科  ( Department of fine arts, studio art) 卒業。
卒業時に優等賞『cum laude』受賞。
大学在学中に構内で個展開催。
カリフォルニア州オレンジ郡立美術展(Orange County Museum) 入選。
Art Beat at L.A. 展に出品。

大学卒業後、(株)日本デザインセンターに入社。国際局に配属。
グラフィックデザイナーとして、日本を代表する大手企業の海外向けカタログ
VIP用のグリーティングカード制作に携わる。国内の大型レジャー宿泊施設
のロゴマークのコンペティションでデザインが採用され、パンフレット等も
手がける。
その後、広告会社でマーケティング・プランナーとして国内外の一流
企業の広告戦略に関わる。 契約期間終了後、独立。
現在はフリーランスのアーティストとして活動中。



★About Shirakumo Tomoko  (Artist information)


Shirakumo Tomoko expresses the signs from cosmos based on the divine 
principles of Japanese Ancient Shinto.
Was born in Japan. From early childhood, grew up overseas.
Lived in Sweden, Switzerland, Austria, U.S.A., and in Italy for 20 years in 
total.
Graduated from University of California at Irvine, majored in Studio Art ( 
fine arts department).
After returning to Japan, she worked for the international department of 
Nippon Design Center Inc. as a graphic designer. Designed for major Japanese 
companies catalogues used for overseas, logo marks, and participated in 
several marketing projects for TV commercials.
Now is a freelance artist.




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食養研究の第一人者の若杉友子さんに師事。
書道家・故酒井葩雪(さかいはせつ)を父に持つ 酒井貴美子さんが主宰しておられる・・・
自然農と食養生の「墨歌」 の 4月までの開催イベントのご紹介をさせていただきます。



※ 現在のところ、講習会は満員、ワークショップは若干余裕があるそうです。。。


墨歌 4月の予定
    (墨歌での講習
費用3千円 昼食付但、1汁1菜)

 

4月

  1(火) 暦の学び かたかむな 三の月 生命の三重構造 in墨歌

20(日) 暦の学び かたかむな 二の月 陰陽             in墨歌

27(日) 暦の学び かたかむな 三の月 生命の三重構造 in墨歌 

14(月) 野草料理教室 ヨモギ   10時半~15時    inあぽたん

21(月) 炭火を使ったゴマ塩講習会 10時~15時    in大原野NEST 

22(火) 野草フィールドワーク   10時~15時

                                    in東近江 がもうコミュニティーセンター              

25(金)13時半~26(土)14時 

          矢野智徳さんの大地の再生講座                in滋賀 徳昌寺 


※詳細は「墨歌」★★★を参照してください。


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