2011-06-02 13:31:15

「movie PAO」

テーマ:限定レイトショー
movie PAO ー久万真路氏、真利子哲也氏、黒崎博氏という国内の注目若手3監督による中編映画が限定公開ー
ひらめき電球6/11(土)~7/1(金)3週間限定レイトショー 会場:テアトル新宿にてひらめき電球


$三度の飯よりシネマ好き。「ファの豆腐」
監督  : 久万 真路
キャスト: 菊池 亜希子、塩見 三省、三浦 誠己

あらすじ: 父と一緒に豆腐屋の家業を継いだ朝子(菊池 亜希子)。早起きして自転車で豆腐を売り歩く穏やかで単調な日々を過ごしていた。そんな時、幼なじみの男(三浦 誠己)と再会する。漣立つ朝子の日常。静謐な生活の中で、微かに揺れ動く朝子の感情を丁寧に描いた娘と父(塩見省三)の物語。

やや欠け月ファの音
タイトルからも見える「ファ」というのは、名前ではなく、お豆腐屋さんの吹くハーモニカのような汽笛のようなあの「ファー」の音。この音を鳴らして自転車で豆腐を売って回るお豆腐屋さんは、最近では見かけるとそれだけで記念物並な驚きと嬉しさで、思わず買ってしまうような気がします。
 主人公朝子(菊池 亜希子)は20代のもの静かで素朴な女の子。母はいなく、父(塩見 省三)と二人で父が一度はたたもうとした豆腐屋を継いでいます。豆腐と、常連のお客さんと、時々出くわす散歩中の子連れママさん達以外には、朝子は語り明かす相手もいない様子でひたすら、寒そうに豆腐を売ってファーを鳴らします。
 そんな中、売り歩いていた時に幼なじみの男(三浦 誠己)に再会してから、朝子の鳴らす「ファー」は力を帯びてきます。大人しい朝子の中に、積極性が出てくるのとファーの音は、比例するように高く、強いファーに変わっていき、ある日そのファを吹けなくなるくらい落ち込む事件があった日に、朝子は父に本音を語ります。こんなきれいな若い女の子が、どうして豆腐屋を継ごうと思ったのかなと思う疑問への答えは、父に怒鳴るようにして吐き出す朝子の気持ちの中で、くっきりと浮かび上がります。朝子は感情をむき出しにしない子なので、見るときはファーに聞き耳をたてるとよく分かります。
好きだった言葉 カチンコ父の言った「味のわからん男だ」


$三度の飯よりシネマ好き。「NINIFUNI」
監督  : 真利子 哲也
キャスト: 宮﨑 将、山中 崇、ももいろクローバー

あらすじ: 殺風景な地方都市でひとつの事件が起こる。事件に関与した青年(宮﨑 将)は、奪った車で国道をあてどなく彷徨い、人気のない海岸に辿り着く。数日後、その地にアイドルグループ(ももいろクローバー)のPV撮影隊が訪れ、青年の乗っていた車が発見されるが─。

新月人生のスモッグとカラー
主人公の青年(宮﨑 将)の笑顔は全く拝めないという、スモッグのかかった人生のような物語。その中で、アイドルユニットである、ももいろクローバーの少女達の弾けた笑顔と踊りと歓声はまぶしく、隣り合わせる他人の人生や、世間といったものの存在を思い出させます。
$三度の飯よりシネマ好き。 誰しも、自分だけがこんなに辛くて大変で、運が悪くてと、自分以外の人は痛みも苦しさも感じていないんじゃないか。と、自分だけがこの世の怖さ辛さをまともに受けているような思いを真剣に考えた経験があるのではないかと思います。少なくとも、この真利子 哲也監督は、そんな、生きることで生まれる曇った疑問を持たれたことがあるような気がしました。現実社会を、笑顔で明るく乗り越えて行ける人と、そうでない人。それは、どこが敏感でどこが鈍感かによるのかも。と、主人公の思い詰めた青年を見ていて感じる、自分と登場人物を対比して見るような映画でした。笑っていいのか、沈んでいいのか、そこから迷わされるような人生の映画です。


$三度の飯よりシネマ好き。「冬の日」
監督  : 黒崎 博
キャスト: 長澤 まさみ、風吹 ジュン
あらすじ: リサ(長澤まさみ)はカメラマンの夢を諦め実家の写真館に帰っていた。雪が舞う冬の日、現れた一人の女性(風吹 ジュン)。彼女には家族にも言えない秘密があった。それを知ったリサは…

半月昔の恋人と母親
思いやりのある家族の物語。だけど、そこに、家族じゃない人だから見えるものがあることを写した映画です。
 誰もが家族というものを持っているけれど、それについて、敢えて考えることが始まるのは、主人公リサ(長澤まさみ)のような二十代半ば頃でしょうか。その頃から自分が30代ともなっていくと、親も年をとるし、自分も家庭をもつことが自然で持っていないことがだんだん浮いてくるようになります。
 いつまでも居てくれる存在だと思っている自分の親も、時間と共に別れの時が近づいていて、多分、その別れをもって初めて、自分にも終わりがくるんだと自覚するのだと思います。ここで描かれているのは、主人公リサと同じ年の息子を持った母親(風吹ジュン)との二人の会話と秘密と約束。学生時代にその息子と付き合っていたリサは、彼の母親を我がことのように見つめます。自分の追った夢を諦めて実家に帰ってきたリサに、昔の恋人の母親は、何を悟らせて教えてくれるのでしょう。

2011-05-26 09:02:56

「ブラック・スワン」

テーマ:洋画
$三度の飯よりシネマ好き。『ブラック・スワン』
キャスト
ナタリー・ポートマン、バンサン・カッセル、ミラ・クニス
バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー
STORY
ニューヨークのバレエ団に所属するニナ(ポートマン)は、元バレリーナの母とともに、その人生のすべてをダンスに注ぎ込むように生きていた。そんなニナに「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくるが、新人ダンサーのリリー(クニス)が現れ、ニナのライバルとなる。役を争いながらも友情を育む2人だったが、やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく。

$三度の飯よりシネマ好き。新月目と心で違う味わいを持たせる映画
最近駆け込んで見てきた映画「ブラック・スワン」は、視覚的スリルが苦手という私でもしっかりと目を凝らして見て入り込める映画でした。
怖くならなかったのは、ナタリーポートマンの安心する程の品のある美しさというのも大きいように思います。心理スリラーであり、心の奥でゾッとする感触もありながらバレエシーンや稽古場での舞いの美しさに目は奪われてゆくという、目と心とで違う味を味わわせる物語と美術に、見終わっても一日目と頭が回っているような感覚を残しました。


$三度の飯よりシネマ好き。やや欠け月新しい「白鳥の湖」
バレエの中で最もというほど有名な演目「白鳥の湖」を、気鋭な演出家トマ(バンサン・カッセル)が新しい演出で公演するという大舞台に、バレリーナの誰もがその主役の座を夢見て狙います。
白鳥なら、間違いなくニナ(ナタリー・ポートマン)がふさわしいとするものの、トマの「白鳥の湖」は、対する黒鳥も演じられなければならない、一人二役の演出。君は完璧に踊れても、計算出来ない本能の踊りができない。その本能と欲望を黒鳥は必要とする。という審査の中、ニナの戦いは始まって行きます。この戦いは、演出家とも演目とも役ともライバルとも戦い、そして一番強敵なのが、ニナ、自分自身でした。
$三度の飯よりシネマ好き。
半月完璧とは。

アスリートやアーティストに限らず、日常生活の中でも、最後は自分自身との戦いなのではと、最近はよく感じます。どこまで夢を追うか、何を伝えるか、今日何を成し遂げるか、毎日大きくも小さくもいろんな戦いがあると思います。
その殻を破り、結果をだすのはいつなのかも含め、人生には多くの本能と理想との戦いがあります。
この映画では、完璧パーフェクトということに対する価値観も、描かれています。
$三度の飯よりシネマ好き。
完璧と思って憧れて尊敬していた人の心身の故障、自分が完璧であるために邪魔なもの、極限を目指し責任をおった時の人間は、それまでとどう変わってゆくのか、周りはどう変わってゆくのか、変わらないことは必要なのか、守るべきものは何なのか。聞いただけでも難しい疑問は、人生の中で短い時間でいくつもぶつかり、通り過ぎていきます。
ニナを演じるナタリー・ポートマンの表情に、それらの答えと途中の式を見るような、そんな二時間でした。

2011-04-19 16:12:01

「南極料理人」

テーマ:邦画
$三度の飯よりシネマ好き。「南極料理人」 2009年公開
監督・脚本: 沖田修一
原作: 西村淳「面白南国料理人」
キャスト
堺雅人・生瀬勝久・きたろう 
高良健吾・豊原功補・西田尚美
STORY
南極観測隊員のひとりである西村淳の任務は、南極大陸のドームふじ観測拠点(標高3810メートル)で越冬する隊員8名分の食事を用意することだった。西村は限られた食材と特殊な環境の中、隊員たちを飽きさせないメニューを作るために奮闘する。

$三度の飯よりシネマ好き。新月南極に男8人
男8人だけの生活を強いられる南極観測隊員の数百日間の物語。
若手のサポート隊員、兄やん(高良健吾)以外は40代から50代の中年男性達という男所帯を支えるのが、主人公の西村(堺雅人)の料理の数々。和食であったりフレンチであったりおにぎりであったり、どれもこれも見ていてテンションが上がる程美味しそうなのに、隊員のメンバー達は至極当たり前のように食べ、中には塩こしょうや醤油をどっぷり足して食べる人もいたりします。それを眺める西村のなんとも憂いのある目は、男の仕事に対する忍耐と心の広さを感じたりもします。
不意な理由で南極に単身赴任となってしまった西村は、好き勝手言ってくる個性ある中年隊員の7人と料理を通して相対していくうちに、男だけにしかない許し合いとじゃれ合いのような優しい関係を築いていきます。
メンバーは、雪氷学者の本さん(生瀬勝久)に気象学者のタイチョー(きたろう)、医療担当のドクター(豊原功補)と、それぞれが専門職であるゆえか、性格もマイペースで興味のあることにだけ突進するタチの人ばかり。その中で、西村(堺雅人)はお母さんのような役割を担うようなくせのない人物に見えます。

$三度の飯よりシネマ好き。やや欠け月言葉にしないのが男?
西村には、日本に妻(西田尚美)と娘(小野花梨)と赤ん坊の息子がいます。家では気の強い妻と娘に押されっぱなしの西村は、南極にきても押されっぱなし。伊勢エビを海老フライにしてほしいと言う隊員達に、料理人として刺身にするのがいいと押し切れず、巨大伊勢エビフライを食卓に並べることになったり、ラーメンが底をついて泣きつかれて麺を何とかして打ったり、言葉ではあまり多くを語らないものの、西村の温かさは料理を通して運ばれます。
感じたのは、男同士って、バカ話だけ言葉にして、思いやりとか心配とか感謝といった気持ちは言葉にせずなんとなく行動に滲んでくるものなのかなーと。
そこのへんを言葉にして伝えて!とねだるのはきっと女だけで、女性が一人もいない南極隊員の生活ではそういった、確認みたいな時間がいっこもありません。遊びを考えてはみんなでやってみたり、誰かの誕生日にはお祝いして飲み明かしたり、年齢も役職も違う8人は不思議な連帯感を生み出していきます。
そしてだいたいは皆で一緒にいながら、時折一人になった時間に日本の彼女に電話したり趣味を作ってみたりと、男達の時間はなんとなく習慣性をもっていたりします。

$三度の飯よりシネマ好き。半月若返ったパパ
この特殊な環境の中に習慣化された生活の中で、仕事をする隊員達。ここでの絡みはとにかく面白くて、見ていて何度も大笑いしてしまいます。
普通のパパだった西村もすっかり髪が伸びて、南極ならではの特殊な調理法で毎日三食いろんな工夫を凝らしながら調理をする姿は、どこか若返って学生時代のようにすら見えてきます。
日本に帰ってからのそれぞれの生活の中では、もう一緒に過ごしたり会ったりすることもなくなるのだろう8人の、濃い数百日は、男のかわいさと面白さに溢れています。女性におすすめの一本かもなと思いました。

ひらめき電球堺雅人さん主演新作映画「日輪の遺産」2011年8月27日 全国ロードショー

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