税主の杜のブログ

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筆者の主張

原告Xの主張に賛成である。つまり、本件各不動産の譲渡に係る譲渡所得の計算で,相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値の部分を非課税とすべきと考えます。

法的側面と経済的な側面

法的側面で考えれば、文理解釈上では、平成22年判例前なら地裁判決の判断となるかもしれないが、経済的側面で考えれば、上記、平成22年最判の下線「同号の趣旨は,相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして,同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。」に書いてあるように、判例で同一の経済的価値は二重課税として、所得税法91項により非課税とする旨が示されたことが、非課税とすべき一番の理由と考えます。

このことは、酒井克彦教授が、「平成22年最判が示した『所得税法9 116号の趣旨は,相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととし て,同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される 。』という判示は,条文の趣旨を明確に論じたものであって,所得税と相続税の関係の本質的理解に踏み込んでいる箇所であろう。そのように考えないと従前,基本権(りんごの木)に対する相続税課税と支分権(りんごの実) に対する所得税課税とは別の法体系下の課税関係であると整理し,法律的には問題ないとされてきたものについて,そうではなく,経済的にみたところで二重課税が生じているのであれば,それを排除するのが本件非課税規定だとする結論を展開したのであって、かような判断は,所得税と相続税の関係の本質的理解の見直しをしなければなし得なかったのではなかろうか。ここでは,極めてインパクトの強い判決が示されたのである。」と説明していることからも説得力があると思われる。

所得の異質性は関係ない

また、相続時に所得が実現するかしないかの考えは時間軸の中で考えているものであり、時間が経過すれば、いずれ実現する所得であることは変わりないと考えます。つまり、いつ実現しようが、同一の経済的価値が生じることは間違えないので、所得の異質で二重課税と認めない判旨の論理は納得できないと考えます。

東京地裁平成25620日判決(平成24年(行ウ)第243号事件)

「相続により取得した資産の譲渡に係る譲渡所得については,所得税法601l 号の規定が置かれており ,同規定が,取得価額の引継ぎの方法により,相続時においては,被相続人の保有期間中の増加益に対する所得税の課税を繰り延べ,その後,相続人が相続により取得した資産を譲渡したときに,被相続人の保有期間中の増加益と相続人の保有期間中の増加益とを合わせて当該資産の譲渡に係る譲渡所得とし,相続人に課税するものとしていること…によれば,所得税法は,被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益について,相続人が相続により取得した財産の経済的価値が相続人に対する相続税の課税対象となることとは別に,相続人に対する所得税の課税対象となることを予定しているものであるということができる。」とした上で,「そうすると,相続により取得した資産の譲渡に係る譲渡所得のうち被相続人の保有期間中の増加益に相当する部分については,本件非課税規定の適用により所得税の課税対象から除外し所得税を課さないものと することはできないこととなる。」と判示している。

上記判旨は、所得税法601l 号が、相続人が相続により取得した財産の経済的価値が相続人に対する相続税の課税対象となることとは別に,相続人に対する所得税の課税対象となることを予定していて、さらに、相続により取得した資産の譲渡に係る譲渡所得のうち被相続人の保有期間中の増加益に相当する部分については,所得税法9条である非課税規定の適用により、所得税の課税対象から除外し所得税を課さないものとすることはできないとしている。

つまり、所得税法601l 号が所得税法9条の適用を排除しているという判示である。これに対して、以下のように考える。

所得税法5960条と所得税9条との関係

所得税法59、60条によって所得税9条の適用は排除しえないと考える。所得税法5960条は、計算規定であって、所得税法9条を適用出来ないとする規定ではないと考える。この関係が成り立つならば、所得税法5960条によって所得が発生しても、所得税9条を適用出来、二重課税を排除できると考える。

酒井克彦教授も「 所得税法36条は,各種所得の金額の計算における出発点である収入金額を規定している 。ただし,別段の定めがある場合には,別段の定めによって収入金額が計算される。所得税法59条は,同法36条の別段の定めである。所得税法59条は,譲渡なきところに譲渡があったものとみなす規定ではなく,収入金額の計算規定である。所得税法36条や同法59条の計算規定は,同 9 l項の規定の適用には消長を来さない。」「すなわち、所得税法91項は,課税対象とする所得に該当するものの中から,所得税を課さないものを選別しているのであって、所得税法591項にいう計算規定に従って譲渡所得を計算した結果,課税対象とされる所得に該当するものであったとしても,そのことをもって同法9l項の規定の適用が排除されるということにはならないのである。」また「Xが,『所得税法601I 号は,相続人が相続により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算について,被相続人の取得時の資産の価額を資産の取得費とする旨を定めたものであり、その規定の位置及び文言からみて,資産の取得費の特例を定める計算規定であることは明らかである。』と論じていることは、理論的に妥当であるといえよう。」と説示している。

                                       

参考文献等

(1)週間税務通信 No.3281平成107日 発行所 税務研究会6-7頁  

(2)税務事例(Vol.45 No.920139 相続した土地の含み益への譲渡所得課税の二重課税問題(上)-東京地裁平成25620日判決(平成24年(行ウ)第243号事件)を素材として- 国士舘大学法学部教授 酒井克彦

(3)税務事例(Vol.45 No.10201310 相続した土地の含み益への譲渡所得課税の二重課税問題()-東京地裁平成25620日判決(平成24年(行ウ)第243号事件)を素材として- 国士舘大学法学部教授 酒井克彦

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