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だれかがほほを触る感覚がしました。


それは、流した涙をぬぐうような仕草でした。


ゆっくりとまぶたを開けると、頭や腕に包帯を巻いた晃の姿がありました。


視線を他へうつすとそこは白一色で彩られた病室で、
私は窓際に置かれたベッドに寝かされ、彼はその傍らにあるパイプ椅子に座っていました。
閉じられたカーテンの隙間から漏れる強い日差しが今の時刻をあらわしています。

「よかった。意識がもどって」

あっけらかんとしたまま言葉を返すことができませんでした。
覚醒して間もない寝ぼけた脳では今の状況を整理しきれないのです。

あれからどうなったのか、現実なのか夢だったのか、
彼に訪ねようとしたとき口内に激痛が走り、私は顔をゆがめました。

「無理に話さなくてもいいですから。安静にしていてください」

私はそれにうなずきを返しました。
舌先でほほの裏にできた傷をなめると鉄の味がして、
それは、まどろみの中でかすかに感じたものに似ていました。

彼に質問攻めをする前にいくつか事実を確かめてみるべきなのかもしれません。

まず、手の怪我はどうなのでしょうか。
顔の前まで両手を持ってくると、右手に包帯が巻かれているのに気づきました。
痛みはひいているので動かさなければどうということはないようです。
晃に飛びかかった犬を振り払おうとして倒れ、地面に手をついたときにできた傷でしょう。

あの出来事は夢ではないのかもしれません。
そのまま右手の指で唇に触れました――ついています。
噛みちぎられた痕などはどこにもありません。

私は口内にできた傷を刺激しないようゆっくりとした口調で。

「ここはどこ」
「県内の病院です」
「今は」
「14時ぐらいですかね。あれから一晩しかたっていません」
「私は死んだんじゃ……」
「天国や地獄に病室はないでしょう。ちゃんと生きてますよ」

優しくほほえみかけながら彼は言いました。つられて私も笑みをこぼしました。
急に安心したせいか泣きそうになりました。

「よかった。ほんとによかった」
「はい」
「晃、怪我は大丈夫?」
「これぐらいたいしたことありませんよ。小夜さんこそ、傷は痛みませんか」
「うん、平気。ねぇ、他のみんなは」
「別の病室にいますよ」
「……そっか」



晃の表情が一瞬くもったのを見逃しませんでした。

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