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とっさに彼の名前を呼びました。


返事は、ありませんでした。


晃がなにをしたというわけではないのですが、全身があわだつのを覚えました。
背筋をねとりとした汗がつたい、微弱な電流をあびたように神経が痙攣しだしたのです。

「どうしたの、さっきみたいになにか言ってよ……
ねぇ、どうしたいのかちゃんと話して。みんな怖がってるから……
お願いよ、勝手に動かないで、待って、止まって、じっとしててよ……お願いだから」

異様な雰囲気に気づいたのか梓も、冗談はやめて、こっちにこないで、と叫びました。
彼は沈黙をつづけながらゆっくりとした足取りで近づいてきます。

留衣は赤んぼうのようによつんばいになりながら部屋の外へでていきました。
梓にうながされ、彼女の肩をもって留衣の後につづこうとしました。

「小夜、早くでて」
「う、うん」

私は開かれたドアの前で立ち止まってしまいました。

「どうしたの、外にでられるの。帰れるのよ」
「わかってる。わかってるけど……」

煮え切らない私を見限ったのか、梓はドアの取っ手をつかむとそれに体を預けるようにして私から離れ、
足をひきずりながら部屋の外の暗闇に消えていきました。

「……梓」

閉まりかけたドアの隙間から。
「あんな人殺しのことなんでどうでもいいじゃない。私たちが助かった後で、警察に探してもらえばいいでしょ」

梓とともに行けば、暗く息苦しいこの場所から開放されるのです。
夏の湿った空気を思いっきり吸いこみ、傷の手当をしてほこりまみれの体をシャワーで洗い流し、
好物をおなかがいっぱいになるまで食べて暖かい布団で眠れるでしょう。


しかし、そこに――

なにひとつ不自由のない普通の暮らしの中に、

彼はいません。

二度と戻ってはこないでしょう。


「はは、はや」留衣は吃音がひどくなり、ほとんど聞き取れないような声で私を呼びました。
「早くしなさい。こっちにくれば助かるのよ」梓はドアの隙間から乞うような声で私を呼びました。

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