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私は手で口をおさえ、声にならない吐息で、あ、あ、あ、とつぶやきました。


肺のなかにあった息をすべてだしおえると不意にのどが波打ち、

がまんできずにそのままうつむき、

胃液のすっぱいにおいを鼻に感じながらよだれも涙も鼻水もぜんぶだしきるまで吐きつづけました。


不安も恐怖も彼にたいする不信感も流れてほしい、と思ったのですが、
それはとても重くすぐに拭いきれるものではありませんでした。

「分かったでしょう。晃くんがなにをしたのか」
「うそよ」
「あの犬も彼に殺された。留衣も私も突き飛ばされて……。耕太が殺される音をじっと聞いているしかなかった」
「うそよね。晃がそんなことするはずない」
「うそなんてついてない! そいつが狂ったせいで耕太は死んだの。間違いないわ」


私は裏返った声で「晃は、晃はどうなの? ちがうわよね」


「……俺は、耕太をおさえつけて彼の頭を床に打ちつけました。
後頭部がやわらかくなってきたら今度はうつぶせにして顔を潰し、頭全体を真っ赤に染めようとしたんです。
なぜそんなことを考えたのかは分かりません。息を吸わないと苦しくなる感覚に似ていると思います。
衝動を止めれば死んでしまうような気がしました」

「や、やめてよ。聞きたくない。はやくはやく本当の――」

そこから晃はすいませんと謝るばかりで、私は驚きを通りこして怒りさえ感じました。
殺した殺していないと口論している場合じゃない、とりあえずここをでて警察を呼ぼう、
と言いましたがとたんに彼らは口を閉ざし、私はまた暗闇に置きざりにされました。

私は心の奥底からわきだしてくる憤りを抑えられず、みんなの助けなしではドアは開けられない――
あなたたちも死にたくないでしょう、と声を強めて協力を呼びかけましたが応えてくれる者はいませんでした。

他人を信用できない、自身さえも信じられないのでしょう。



私は、場にうずまく疑心暗鬼を解消する術を考えはじめました。

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