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不意に、その気配が大きくなりました。
うずくまっていたものが両手を広げて立ち上がったかのようです。


私は「あっ」とつぶやき、身構えるまもなく――


気配は、私の手の中にあった携帯電話を叩き落としました。


危険を感じた私は、とっさに頭をかかえてしゃがみこみます。
目をつぶり気配がとる行動に注意を払いましたが、それは何をするでもなくまた小さくなり、
やがて無情な沈黙が室内に満ちてゆきました。

本来ならもう一度、たしかめにいくところです。しかし、私は立つことさえままならない状態になっていました。
先ほどのショックで動悸が激しくなり、意識が朦朧としていたのです。
耳の奥では金切り声のような音が響き、それが痛みとなって脳内を飛びまわっています。

このまま部屋に留まり探索を続けたとしてもだれも助られない。自らの命さえ危うい。
混濁する意識のなかでただひとつ鮮明に思い描いたのは死のイメージでした。

パニック障害を抱える私にとってだれかを助けようなどという考えは、実にあさはかで偽善に満ちたものだったのです。
一刻も早く出口を探して脱出しなければなりません。そこから助けを呼ぶことが最善の策なのでしょう。

私は頭をおさえながら目印をつくった壁際の空間に戻り、周囲にある机や椅子を携帯電話で照らしました。
そうして、最初に見た部屋の状況を思い出そうとしたのです。

かたわらにある大きな机には見覚えがありました。入り口から見て右側にあったはずです。
壁を背にして左手の方向に進めばドアがあるのかもしれません。
よく調べてみると行く手を塞いでいる鉄製の棚と大きな机には隙間があり、横歩きをすれば通れそうでした。
私はおぼつかない足取りでそこを抜けました。

部屋の出入り口あたりは他と比べると散らかっている様子はなく、整然としていました。
あるのは閉じられたドアだけです。ノブをまわして押し引きを繰り返してみたり、
そのまま肩をぶつけたりして無理にでも開けようとしたのですが、ドアはびくともしませんでした。


私の力だけでは出ることができないと分かり、なすすべなくその場にすわりこみました。


大切な人の安否をたしかめることも、逃げることも、立ち上がり次の行動へうつることさえもできないのです。
自分の無力さを嫌というほど思い知らされました。

頭痛や動悸はさらに激しさを増し、もういっそ死んで楽になってしまいたいとさえ思えます。
今まで必死になって押し殺していた不安や恐れは液体となって目や鼻、口からあふれだしてきました。


「っ……なんで……なんでよ! どうすればいいのよ!」


涙声でそう叫びました。

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