ノベルゲームセンター

ノベルゲーム 無料 フリー


テーマ:
--------------------------------------------------------
最初から読む(目次へ)⇒

--------------------------------------------------------
意識を取り戻した、と感じることができたのはてのひらにできた切り傷を舐めたからでした。
傷を通して得られる痛覚と、舌先に残る味覚以外に自身がどこにいるのかを判断する材料はありませんでした。


視覚は黒一色に染まり、

聴覚は耳鳴りが反響しつづけ、

触覚はマヒしているらしく自分が立っているのかすわっているのか寝転んでいるのか、

それさえも感じ取れなくなっていました。


しばらくその場でじっとして心を落ち着けました。
ゆるやかに戻っていく感覚のなかで自身が床に横たわっていることに気づきました。
お腹に力をいれ、上半身をおこして傷のないほうの左手で周囲を探りました。

土ぼこりや書類、ガラスの破片やネジのような金属片が床に転がっています。
そうした仕草は小学校のころに教科書で見たヘレン・ケラーのようでした。

普段の生活でもっとも使うことが多いであろう目や耳が頼りにならず、
残された感覚だけでひとつひとつの現実をたしかめていくうちに世界が広がっていく、
とでも言うのでしょうか。なぜかそれがとても楽しいのです。

私はこの時、笑っていたのかもしれません。あるいは泣いていたのかもしれません。
異常な空間に身を置いたことで、感情をうまく調節できなくなっていたのでしょう。

散乱していたものを適当なところへ追いやり、痛む手をかばいながら立ち上がりました。
ひざに手を置いて中腰の体勢をとりながら目を細めたり大きく開けたりしてまわりを見ようとしたのですが、
映るのは暗闇ばかりです。私は大きく息を吐きだして事態を考察しました。

ここは人里はなれた廃病院の地下施設であり、光源となるものは何もありません。
持ちこんだ懐中電灯の明かりもなく、すべてスイッチが切られているのか先ほどの騒ぎで壊れてしまったのでしょう。

私は部屋のどのあたりにいるのか、他のみんなは――晃は無事なのかを確認しなければなりません。
私は皆に呼びかけました。


「みんな、大丈夫?」


冥暗の中に声が飲みこまれていきました。返ってくる言葉はありません。


「無事なの? 答えて」


やはり返事はなく、きぃんという甲高い音が耳に木霊しているだけです。


どうしてだれも答えてくれないのでしょうか。
全員が私と同じように気絶しているのか、あるいは私だけが置き去りにされてしまったのか――
悲観的な考えや不安が重なり、気が気ではありません。



「ちょっと、どうしたの。なにか言ってよ!」

--------------------------------------------------------
次の話へ⇒




AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

78さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。