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食料は最寄のスーパーで日持ちする安い食材を買いこみ、
かろうじて通院をはじめた心療内科で数週間分の薬をまとめて貰い、それ以外の外出はひかえました。

道を歩いているだけで発作がおきるかもしれない、そのまま私は死んでしまうのだろうという考えが何度も頭を巡ります。
医者から、死ぬことはないと強く言い聞かされていましたが、
頭の中で恐怖が具現化して黒い人影となり、私にむかって低い声でつぶやくのです。


「どうせお前は助からないんだ。死ねば楽になれるじゃないか」


反響して徐々に大きくなっていくそれを聞くまいと、押しつぶすように耳をおさえて抵抗しました。

家賃や食費などの生活に必要なお金は両親からの仕送りでなんとかなりました。
ただ、迷惑をかけるのが怖くて家族には病気のことを隠していました。

友人に頼ることもありませんでした。
学校にいかなくなった当初は毎日のように鳴っていた携帯電話も、
電源が切れたのか彼らが私を忘れてしまったのか、いつのまにか静かになっていました。



ひきこもりをはじめてから半年がたち、私は決められた食事と睡眠を繰り返すだけの機械人形となっていました。
苦ではありませんでした。むしろ、今までの人生が霞んで見えるほど、とても穏やかで満ちたりた生活だったのです。

だけど、その生活ももう終わらせなければなりません。
大学へ行っていないことが両親に知られてしまったからです。

両親が私の部屋を訪れ、私は彼らとむかいあって色々な話をしました。
病気のこと、大学のこと、今後のこと――全部話した終えたとき母に抱きしめられました。

父はうつむいて静かに嗚咽していました。
ごめんね、というつぶやきが聞こえ、母は壊れたラジオのようにそれを繰り返していました。
だけど、私の心にはなんの感情も湧いてきませんでした。


そこで、ふと気づいたのです。


私が外に出られないのは病気のためではなく、人との繋がりがわずらわしいからだと。
相手に求められる笑顔や優しい言葉を作るうち、どす黒い気持ちが溜まっていき爆発したのです。

病気は副産物にすぎないのです。
この時すでに温かさや優しさを感じる器官が腐り、涙はすでに干からびていたのでしょう。

ああ、私は壊れてしまったのです。
両親の優しさに触れ、抱きしめられ、孤独じゃないとさとされても、私の心はぴくりとも動きません。
唯一、残されていたのはひとりですごす生活を手放したくないという気持ちだけでした。

「病状は回復していると内科の先生が言っていたし、春から元の生活に戻ろうと思うの」
「でも、あなただけだと心配よ」

母は目に涙をためて言いました。

「大丈夫。留年っていうかたちになったけど、ちゃんと卒業したいから」
「……行かせてやりなさい」
「ありがとう。お父さん」
「だが、今度同じようなことがあったら、ちゃんと私たちに相談するんだよ」

精一杯の笑顔をつくりました。嘘をつきました。私は悪い子です。



大学に戻る気なんて微塵もありませんでした。

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