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大学一年の夏、満員電車の中で発作をおこしました。



なんの前触れもなく立っていられないほど胸が苦しくなり、

息を吐いて吸いこむという単純作業さえままならず、

瞼は重くなり、視界が徐々にぼやけていくのです。



そうして気を失うまでの間、ハンマーで心臓を打たれているような鈍く重い痛みが体中を駆けめぐっていました。

意識を取り戻したのは、大学の近くにある小さな病院でした。
完全に覚醒している状態ではなく、目の前の景色、音、におい、ふれているものさえあやふやに感じられました。

記憶に残っているのは初老の医師から言われた『パニック障害』という病名と、
汗で湿った服が気持ち悪く、家に帰ったらすぐに着替えようと考えたことだけでした。

その日はタクシーで帰宅し、すぐにシャワーを浴びて布団に入りました。

明日には専門的な病院で診察してもらいましょう。
症状がひどいと言われたら学校やバイトを休まないといけません。それは嫌でした。
友達にも心配をかけてしまうし、サークルにも顔をだしたい。
適切な治療すればすぐに治るはずです。


でも、もしも、治らなかったら――


また、倒れてしまったらどうすればいいのでしょう。
学校や電車の中で、倒れたらだれか助けてくれるでしょうか。
交差点や人通りの少ない道で倒れたら、気づかないうちに車に轢かれてしまうかもしれません。

うずくまって動けない私はアスファルトに投げ出され、腕や足があらぬ方向へと折れ曲がり、
くわりと大きくひらいた傷口から赤黒い血が流れ出し、千切れた歯や髪の毛が散乱するでしょう。

何よりも恐ろしいのは、哀れみと興味をふくんだ目で私を見つめる人々です。
ふたつの連なった瞳が、人としての造形を失った私をかわるがわる蹂躙し続けるのです。

私の頭の中でよくない出来事が循環し、それはまわり続けるごとに黒く重く濃度を増していきました。
漠然とした不安に首を絞められているような、呼吸をしているのにひどく息苦しい感覚がします。
動悸が激しくなり、また発作がおきるような気がしました。


結局、私は学校にもバイトにもいかず、アパートの一室にひきこもりはじめました。


毎朝、同じ時間に起床して布団をしまい、簡単な食事をつくって食べ、日焼けした畳の上に寝転がります。
い草の節目を数えたり、仰向けになって天上に浮きでた木目を指でなぞったり、窓際の下から覗くように空を眺めたり、
畳からかすかに草の香りがして、それが癖になったのか鼻を直接押しあてて嗅いだりもしました。

そうして一日をすごしていると、地球の重力に押しつぶされて体が溶けてゆき、
世界と一体化するような感覚がしました。

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