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それは、ほんのわずかな時間でした。



威嚇の体勢をとっていた犬が前足を蹴り出し、晃の胸元へと飛び掛ったのです。

ぐあぁ、という悲痛な声が聞こえ室内は騒然としました。
悲鳴をあげる者、助けを請う者、混乱し怒りをあらわにする者、様々な叫号が暗闇の中に響きわたります。
私は犬と格闘をはじめた晃を助けようとしたのですが、突き飛ばされて懐中電灯をどこかに落としてしまいました。

眼前には黒一色に彩られた世界が広がり、晃や梓たちの姿はもちろん、
数十センチ先にあるはずの自分の掌さえ目視できません。
固いものがぶつかりあう激しい音だけが響いています。

床に手をつき、起きあがろうと力を入れると激しい痛みが走りました。
中指のつけねあたりが熱を持ち、血液が流れていくのが感じられます。

ですが、そんな些細なことを気にしている暇はないのです。
よろめきながら立ち上がった私は、物音のするほうへ耳をかたむけました。
左手のほうから喧騒が聞こえてきます。そちらへむかおうとした瞬間――


心臓の鼓動が急激にピッチを上げたのです。


私は胸を抑えてその場にうずくまりました。
まともに呼吸ができなくなり、額や背中から大量の汗が噴出してきます。
全身が痙攣し、頭の中が白黒の明滅で染まっていきます。

なぜ、こんな大事なときに症状が再発してしまうのでしょうか。
私が何か悪いことをしたのでしょうか。だから、こうして罰を受けなければならないのでしょうか。
どうしてどうしてどうして――


「おまえのせいだ」


男とも女ともとれない機械的な声がしました。
私のすぐそばにだれかが立っている気配がします。

顔を上げると、黒い人影のようなものがありました。
それはぼんやりとしていて、息で吹き消すことができそうなほど不確かな存在でした。


「おまえがいぬをもちかえろうとしなければ、

ちかしせつへはいらなければ、

びょういんにこなければ、

あきらとであわなければ……」


明滅は次第に黒の間隔だけを広げ、白色の光は侵食されてしまいました。
夢と現実が混濁して溶けあうこの感覚は何度味わっても慣れません。

閉じかけた世界で、私の名前を呼ぶ声がかすかに聞こえました。
悲観的な私をいつも励まし、支えてくれる彼の声でした。



しかし、それは残響のようにゆっくりと消えてゆきました。

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