2008年12月16日(火)
【小説】くだらない話_01・02
Theme: 【恋愛小説】くだらない話
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side 新井シンジ「はじまり」
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ケータイのない時代、
中学生の僕はある女の子と文通をはじめることになった。
きっかけは実にありふれていた。
三文小説によくある夕日に照らされた校舎裏というシチュエーションを思い浮かべてほしい。

好きです、と神谷ナオが言った。
そして、僕に手紙を差しだしてきたので、とりあえず受け取ってみた。
いまだ状況がつかめない。
どうしていいか分からず、硬直していた僕を見かねたのか、
神谷はちょっとだけはにかんで唇を動かす。
「あとで読んでね、新井くん」
そう言って、校舎裏の影から夕日にそまるグラウンドへと駆けだしていった。
野球やサッカーや陸上とそれぞれの青春を謳歌している生徒たち、
乾いた土のうえに引かれた白線、
走る神谷の制服や風に吹かれて柔らかくゆれる黒髪――
すべてが、オレンジと群青の明暗にそまっていた。
神谷を見送った僕は手紙を上着のポケットに押し込み、家路についた。
夕暮れ時の告白か。
恋愛ドラマや小説なら、とてもドラマチックかつ乙女チックな展開だ。
ただ、僕にとってはどうにも面倒なことでしかなかった。
さて、どうやって断ろうか。歩きながらその方法を考えていたが、
いい案は浮かばなかった。
僕は一人が好きだ。
毎日、飽きもせずにテレビであったお笑い番組のはなしや、
どこかで聞いたような恋のはなしを繰り返すクラスメイトたち。
平然と遅刻してきてはくだらない授業をつづける覇気のない教師たち。
受験だ、塾だと騒ぎたて人の未来を勝手に見定める親たち。
どれも、
ありふれていて、
つまらなくて、
なんの面白みもない。
アイツらと一緒にいるくらいなら一人の方が良いに決まってる。
だから僕は彼らと距離を置いている。
心にフィルターをかけ、中を決して覗かせたりはしない。
しかし、あからさまな態度をとれば逆に目立ってしまうので、
行動や言動を合わせるようにしていた。
流行りのB'zやZARDの新曲をそらで歌えるようになるくらい聴いた。
「高校教師」や「一つ屋根の下」も見て、俳優や女優の名前も言えるようになった。
「14106(愛している)」はお手のものだ。
数字を使ったポケベルの言葉遊びもある程度は覚えた。
会話では適当に相槌をうったり、
流行りの話題をふったりしながら流れにそって顔をほころばせて笑顔を作る。
目指したのは、どこにでもいるような気の合うクラスメイトだった。
それ以上でもそれ以下でもない、極めてそれに等しい関係を万人と保つこと。
ただそこに在るだけ、空気のような存在でいられればよかった。
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ケータイのない時代、
中学生の僕はある女の子と文通をはじめることになった。
きっかけは実にありふれていた。
三文小説によくある夕日に照らされた校舎裏というシチュエーションを思い浮かべてほしい。

好きです、と神谷ナオが言った。
そして、僕に手紙を差しだしてきたので、とりあえず受け取ってみた。
いまだ状況がつかめない。
どうしていいか分からず、硬直していた僕を見かねたのか、
神谷はちょっとだけはにかんで唇を動かす。
「あとで読んでね、新井くん」
そう言って、校舎裏の影から夕日にそまるグラウンドへと駆けだしていった。
野球やサッカーや陸上とそれぞれの青春を謳歌している生徒たち、
乾いた土のうえに引かれた白線、
走る神谷の制服や風に吹かれて柔らかくゆれる黒髪――
すべてが、オレンジと群青の明暗にそまっていた。
神谷を見送った僕は手紙を上着のポケットに押し込み、家路についた。
夕暮れ時の告白か。
恋愛ドラマや小説なら、とてもドラマチックかつ乙女チックな展開だ。
ただ、僕にとってはどうにも面倒なことでしかなかった。
さて、どうやって断ろうか。歩きながらその方法を考えていたが、
いい案は浮かばなかった。
僕は一人が好きだ。
毎日、飽きもせずにテレビであったお笑い番組のはなしや、
どこかで聞いたような恋のはなしを繰り返すクラスメイトたち。
平然と遅刻してきてはくだらない授業をつづける覇気のない教師たち。
受験だ、塾だと騒ぎたて人の未来を勝手に見定める親たち。
どれも、
ありふれていて、
つまらなくて、
なんの面白みもない。
アイツらと一緒にいるくらいなら一人の方が良いに決まってる。
だから僕は彼らと距離を置いている。
心にフィルターをかけ、中を決して覗かせたりはしない。
しかし、あからさまな態度をとれば逆に目立ってしまうので、
行動や言動を合わせるようにしていた。
流行りのB'zやZARDの新曲をそらで歌えるようになるくらい聴いた。
「高校教師」や「一つ屋根の下」も見て、俳優や女優の名前も言えるようになった。
「14106(愛している)」はお手のものだ。
数字を使ったポケベルの言葉遊びもある程度は覚えた。
会話では適当に相槌をうったり、
流行りの話題をふったりしながら流れにそって顔をほころばせて笑顔を作る。
目指したのは、どこにでもいるような気の合うクラスメイトだった。
それ以上でもそれ以下でもない、極めてそれに等しい関係を万人と保つこと。
ただそこに在るだけ、空気のような存在でいられればよかった。
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