小説版【芸人と結婚します！】60

原作ブログ漫画

：【芸人と結婚しました！】

原作漫画著者&イラスト

　：【カキウチ　ユウコ】

小説著者

　：【七瀬　夏葵(ななせ　なつき)】

※最初⇒【１】
※前回⇒【５９】

※目次＆あらすじ

　⇒小説版【芸人と結婚します！】目次

小説版

【芸人と結婚します！】60

最終話

「　告　白　」

カッキーは、半分まだ夢を見ているような気分だった。
信じられない気持ちのまま座り込み、携帯電話を見つめる。

「…………」

アドレス帳にもちゃんと登録されているタカタの電話番号。
これに電話をかければ……。

――― タカタさん……。

うるさいくらい跳ねあがる鼓動を感じながら、震える指で電話をかけた。

「あ……、タカタさん……？ラジオ……、聴きました。その～～……」

言葉が途切れる。
何をどう伝えたらいいのか……。
そんな事を考えていた時―――、

『カキウチさん！今僕がどこにいるのかわかりますか！？』

「！！！！」

唐突に響いた大音量の声に、思わず携帯電話を落としそうになった！

――― ななな、何ぃぃいい！！？？

驚きながらも何とか携帯電話を握り直したカッキーに、電話の向こう側のタカタは更に続けた。

『おっきい声出そうと思って井草の森公園に来てますっ！！僕が今から言うことよーく聴いてて下さいっ！！』

「――――っっ！！！！」

思わず息を飲み、じっとタカタの声に耳を傾ける。
一体何を言おうとしているのか……！？

『こういう愛し方しかできないけど、僕はカッキーが大好きです！！一生一緒に居て下さいっ！！』

それからスッと息を吸い込んだかと思うと―――、

『好きじゃーーーーーーっっ！！！！』

それはもう、力いっぱいの叫びだった！！！！

「…………っっ！！！！」

思わず言葉に詰まる。

――― こんな……、まさか……！！！！

思わずア然となる。
あのタカタが、まさかこんな告白をしてくれるなんて！！

――― タカタさんっ！！私、私……っっ！！！！

気が付くと、携帯電話を握り締めて走り出していた。
カンカンと音をたて、アパートの古い階段を駆け降りる！

――― タカタさんっ、タカタさんっっ！！！！

夢中で走るその先に、長い影が見えた。

「―――― っっ！！！！」

思わず足を止めた。
駆けて来る。こちらへ。一目散で！
あの人が！！！！！！

「カッキーーーーーッッ！！！！」

凄い勢いで、みるみる間に近付いて来る！！
そして――――、

「―――――― ！！！！」

気が付くと、腕の中だった。
何度も思い描いた、大好きなその人の……！！

「僕とつき合って！！！！」

「！！！！」

思わず言葉を失くしたカッキーに、彼がもう一度繰り返した。

「つき合ってーーーーっっ！！！！」

両肩をしっかりと掴まれ、真剣な顔で覗きこまれる。

「つき合ってっっ！！僕とつき合って下さい！！つき合おうっっ！！！！」

繰り返される告白を前に、カッキーはただ戸惑うばかり。

「……ダメ？」

「あ、あ、あ……」

不安げなタカタに、何か言わなきゃと口を開くものの、うまく言葉が出て来ない。

――― う、嬉しい……けど、けどっっ……！！！！

ずっと好きだったタカタ。
『ずっと友達でいたい』と宣言されて、あきらめて。

彼とはずっと友達なんだ！それでいいんだ！

そんなふうに、何度も何度も自分に言い聞かせて。
だけど、やっぱりどこか、期待する気持ちも捨てきれなくて。

いつも、〝友達の好き″と〝友達以上の好き″を行ったり来たりばかり。
強がってたけど、ホントはやっぱり悲しくて、やりきれなくて。
だけど、彼の為に友達でいようって決意して。
なのに……。

『僕とつき合って！！！！』

なんて逆転さよならホームラーン！！
それも、こんなドラマチックな展開で！！！！
嬉しくないワケがない！！ハズ……なのだが……。

――― 付き合ってって、つまり、友達以上になるって事で……。

これまでは仮想であって、現実ではなかった。
いくら好きでも、付き合う事なんかないと思っていたから。
なのにまさか、ホントにつき合うか否かの選択をする日が来るなんて！！

――― どどどど、どーーしよーー！！！！

嬉しい！！嬉しいが、あまりに急展開すぎて頭がついていかない！！

――― いいの！？ホントにいいの！！？？

タカタの事はたしかに好きだ！！
しかし彼は、そもそも〝面白くなるのが仕事″の〝芸人さん″なのだ！
一般人の感覚で付き合っていいものなのか！！？？
いずれは売れて、遠い人になってしまうかもしれないのに！！

――― そんな人の彼女に、ホントになれるの！！？？

自分なんかが、ちゃんと〝芸人の彼女″としてやっていけるんだろうか！？
ふいに襲って来た現実感に、カッキーの頭は大混乱！！

――― どどど、どーーしよーー！！どーーしたらいいのーー！！？？

グルグルと思考の渦にハマっていた時だった。

「だから僕とつき合っ――……！！？？」

混乱するカッキーを前に、タカタが言葉を引っ込めた。

「う″～ん、う″～ん、う″～ん……」

とうとう唸り声をあげて悩み始めたカッキーに、タカタはキッ！と表情を硬くした。

肩に置かれていたタカタの手が、パッと離されたかと思うと―――、

「―――――― っっ！！？？」

ふいに両手を握り締められた！！

「四の五の言わんとうんと言えーーーー！！！！」

「――――――っっ！！！！」

切ないくらい真剣な声に、思わず言葉を失った。

――― タカタ……さん……！！！！

握られた手から、彼の気持ちが伝わって来る。
どれだけ想ってくれているのか、その熱意が……。

「わ……、わかりました……！」

そう言って、カッキーはギュッと手を握り返した。

「タカタさん！私……、私……」

スゥッと息を吸込む。
目を逸らさず、しっかりとタカタを見つめて続ける。

「……私も、ずっとずっと、タカタさんのこと、大好きでした！！」

ようやく言えた想いに、心がフッと軽くなる。

「……ふつつかものですけど、よろしくお願いします！！」

「こここ、こちらこそ！！！！」

耳まで紅くなりながら、2人は互いに見つめ合い、微笑みあった。
辿り着いたのだ。
互いの胸に抱き続けていた、想いの、先へ……。
今、この瞬間。
2人は晴れて、恋人同士となった……。

――――――

大都会東京。
色んな人が行き交うこの街に、ひと組のカップルがいる。
彼女の名前は【カキウチユウコ】。どこにでもいるアラサー女子。
彼氏の名前は【タカタカズノリ】。どこにでもいる元気な二十代男子。

散々すれ違いもしたけれど、２人はやっぱり、正真正銘の両想い。
ちょっぴり背が低めの“カッキー”と、ちょっぴり背が高めの“タカタ”。
そんな身長差カップルの二人は、見た目にはホントに、どこにでもいる普通のカップル

だけど二人には、ちょっとだけ普通と違うトコロがある。
彼女は漫画家さんで、彼氏は芸人さん！！
ただし、まだ2人ともそんなに売れていない、無名の新人状態だが……。

『人に笑顔を！！』

そんな目標を掲げる、一人の漫画家の卵と、一人の芸人の卵。
無限の可能性を持つそんな2人が、不思議な縁で巡り会い、友人となった。
そうして紆余曲折、色々あったけど、めでたく恋人同士となった。
２人の行く先には、これからたくさんの珍事件が待ち受けているのだが……。
それはまた、別のお話……。

―――――――――――

原作漫画ブログ　

　　：　【芸人と結婚しました！】
（※旧ブログタイトル：【芸人と結婚します！】）
原作漫画・挿絵作者

　　：　【カキウチ　ユウコ】

小説作

　：　【七瀬　夏葵（ななせ　なつき）】

出演：
（主演）
カキウ　チユウコさん、タカタ　カズノリさん
（友人の方々）
タカタさんの親友の星　マサトさん、タカタさんの後輩の渡辺さん、
頼れる年上女性のふなえさん、星さんの彼女さん、成沢君、鈴木君
（タカタさんの元相方さん）
チョビンさん
（カッキーのお母様）
エリちゃん
（タカタさんの片思い相手の女性の方々）
エッちゃん、くぅちゃん、ナミさん
（エキストラ）
映画館の男性、ブティックの男性、居酒屋のスタッフさんｅｔｃ・・・