水木 しげる
水木しげるのラバウル戦記 (ちくま文庫)

太平洋戦争の激戦地ラバウル。水木二等兵は、その戦闘に一兵卒として送り込まれた。彼は上官に殴られ続ける日々を、それでも楽天的な気持ちで過ごしていた。ある日、部隊は敵の奇襲にあい全滅する。彼は、九死に一生をえるが、片腕を失ってしまう。この強烈な体験が鮮明な時期に描いた絵に、後に文章を添えて完成したのが、この戦記である。終戦直後、ラバウルの原住民と交流しながら、その地で描いた貴重なデッサン二十点もあわせて公開する。

水木しげる=鬼太郎、悪魔くん、その他怪奇漫画のイメージが強いかと思うが、実は私は今では数少なくなった、戦争の体験者として非常に尊敬している。まして前線で片腕まで失っているのだ。彼の感じた戦争の無意味さ。何も知らない教師の「戦争はいけない」という言葉よりもよっぽど説得力がある。
子供には読み切れないかもしれないが、中学生くらいになったら読ませたい。私子供おらんけど。

この本は、水木しげるが描き溜めていたものと新たに描きおろしたものに説明を添える形の、絵日記のようなもの。しかしなんといっても全ページに一枚ずつ(上段が絵で下段に文章)絵がついてるというのはものすごい。

106ページの文章は、すべてまるまる引用したいほど心を打たれました。
立ち読みでもいいから、みんなに読んで欲しい。
学校とかでプリント配るといいと思う。
いいですか、106ページ ですよ!
でもそこだけ読んでもぴんとこないかもしれない。
最初から読んでいってじわじわ感じていたものが、106ページでずーんときた。

あの枚数を描く気力というか根気というか、本当に好きで自発的に描いているというのか、もう天性のものじゃないかと思う。
私も絵を描くのが好きでそんな学校も出ているが、実際なんでもいいから描いていないと手がふらふらしちゃう感覚も知っているが、知ってるからこそ水木しげる大先生がどんだけ尋常じゃないかってのがわかる。
しかも今まで何度か、えっ思ってたよりさらに尋常じゃねぇ?て思い直すこともあったから(これからもあるんじゃねか)

この内容を漫画にした「総員玉砕せよ!」という本もあるので、活字が苦手な方はこっちから読むといいかも。

なにがそんなに私を感動させてるのかってね。
「戦争はイカンです。ハラが減る、だけですから」(2005年映画妖怪大戦争)
これは映画の中で大先生が仰ってるんですけども。
この本のどこを読んでも「戦争はイカンです」とは書かれていないのよね。
この本一冊が、実際にその一言で済まされてきた教育に勝るんです。
成人した私にとって。
その一言がなくっても、「戦争はイカンです」と、自分の心が囁くのです。