畠中 恵
しゃばけ

大店の若だんな一太郎は病弱で、しょっちゅう寝込んでいる。それなのに怪しい事件に次々と首を突っ込んでは手代に怒られている。
ところがこの手代、なんと正体は妖怪。
一太郎の周りには、なぜか人なつっこい妖怪が集まってきて…

日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。


大江戸捕物帳は世の中にたくさんあるけれど、このしゃばけシリーズはノスタルジックな雰囲気、現代の日本人が忘れてしまった情緒、ゆっくりと流れる時間が心地よく、虜になっている人も多い。
怪事件を追うだけの論詰めの推理ものと違って、人間の力ではどうしようもない妖怪の仕業が原因であったりするが、その力が存在することを自然に受け入れてしまえる土壌が文章の中で作られている。
時代小説に対して小難しい、世界観に入り込めないという人もいると思うが、しゃばけシリーズは堅苦しいことを考えず、するするっと読める。若だんなと妖怪たちのやりとりが微笑ましく、自分もその世界の一員だったら楽しいだろうと想像できる。
どんどん次の話を読みたくなって、ページをめくる手が止まらないという感じ。
若い女性からの高い支持があり、続編も順次文庫化されている。

「しゃばけ」は一冊で一つの話になっている長編ものだが、次の「ぬしさまへ」からは短編集になっている。
普通、一度完結した作品の続編というと期待が高すぎるあまりがっかりしてしまったり、前作の持つ良さがなくなっていたりするが、「ぬしさまへ」を読めばさらにほかの話も読みたくなる。



畠中 恵
ぬしさまへ