ふと、気づいた。
以前、最近のマンガに作品と呼べるものが少ないと書いていたのに、マンガや小説の感想ブログを書く時に知らず知らずの内にすべてを作品と書いてしまっている自分に。

もちろん、その中には自分にとって、作品と呼べるものもあったが、そう多くはない。

では、なぜそう感じていないものも作品と書いてしまうのか?

それは自分がどう感じようと、その作者が生み出したものにたいして、どこか一定の敬意を表す自分がいるのだろう。

しかし、自分にとって作品と感じられないものは、やはり自分にとっては作品ではない。
自分の気持ちに嘘はつきたくないので、今後は作品と感じられなかったものについてはマンガとか本という表記にしようと思う。

ここから本題。

この作品は、生田斗真主演で、今年6月に映画化もされた筒井哲也のマンガ、「予告犯」のスピンオフ作品。
自分は、前に読んでおもしろかった作者が新作を出しているのを見かけると、とりあえず1巻を買って読んでみる事が多く、その為、ごくまれだが今回みたいな事がおこる。

本編をまったく知らずに、スピンオフ作品やサイドストーリー的なものから入って、後から本編の事を知るという掟破りなパターン。しかも、こういう場合、たいがい本編は読まずに終わる。(笑)

これを描いた小幡文生は、自分が一昨年感想を書いた「ステゴロ」の作者で、現在はヤングキングでそれを下地にした感じの「シマウマ」を連載中の漫画家である。
漫画家としては、品格とか健全さといったものとは無縁だが、心の闇とひど過ぎる仕打ちを描かせると、そのリアルさには身震いすら覚える。

その点で、このスピンオフ作品を描かせるのにあたって、ふだんヤングジャンプと縁のない小幡文生を敢えて起用した担当者のセンスは見事なものである。

本編の新聞紙を被り、世の中の悪人に制裁という名の暴行を加え、その様子をネット配信する事で、そのゲリラ的な行動と強烈なメッセージ性からネット上でカリスマ化した、正体不明の連続暴行集団・シンブンシから影響を受けた高校生達が模倣犯・コピーキャットとなり、シンブンシと同じように制裁という名の暴行事件を起こしていく姿を全3巻で描いている。
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この作品の主人公はふたり。
予告犯・シンブンシのメッセージに
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強い影響を受けたゲイバーで働く花岡猛流は集英高校の三年生。
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猛流の幼なじみで、同じ高校の遠藤草太はコンビニのアルバイト代を生活費に充てながら無職の父親と暮らす、普通の少年。
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このふたりに、ふたりがシンブンシとして行動を起こすきっかけとなった、明るみに出ない暴行事件の被害者で、
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ふたりの同級生で、草太と同じ団地に住み、草太と同じコンビニでのアルバイト以外に、祖母との生活費の為に援助交際のアルバイトをしていた西沢恭子
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と、恭子を暴行し、ふたりに最初に制裁された、151117_123508.jpg
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市議で会社社長の息子で、制裁された後、自分の居場所を失っていた田崎守
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を仲間に加えて、模倣犯・コピーキャットは本物を超え、自分達がはい上がる為の行動を始める。

このマンガのテーマは、コピーキャットを追う所轄の刑事・細村
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のセリフにある「純粋と凶気を履き違えた子供達」であろう。

コピーキャットが同じ高校の同級生であるという設定はよくできており、同じ空間で生活する同年代の若者は連帯感を持ちやすい。

さらに、田崎を除く三人が育ったのが団地という設定もリアルで、今では団地といえば高齢者の住む住宅という感じだが、昔は多くの家庭が団地にあった。

自分も団地育ちなのだが、団地に住む家庭は良くて中流、ほとんどは貧しい家庭だった。

そんな環境ではあるが、現代では希薄になった近所付き合いがあり、これによりお互いが助け合っていた。
しかし、この近所付き合いには残酷な側面もあり、その側面を切り取り、猛流と草太の子供時代として描かれていたのも印象的だった。

そんな団地育ちの少年達が抱え込んできた思いが、彼らの行動に垣間見える。

コピーキャットは、オリジナルとは違うやり方で制裁対象を決めていく。
制裁対象を動画の視聴者から募集し、
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義捐金(ぎえんきん)を募り、目標金額に達すると制裁を実行し、その動画をアップしていく。

制裁対象となったのは、アイドルと付き合ってた時の画像をネットに流出させた元カレや闇金業者の社長、子供を虐待する画像をアップしながら、それを躾とうそぶく母親、詐欺リフォーム業者や連続婦女暴行犯など。

下の画像は、そのうちの子供を虐待する動画をアップする母親と、それにたいして行われた制裁のシーンである。
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この母親にされた制裁は、95度の熱湯シャワーによる洗顔であった。
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制裁方法は対象によって違い、それぞれに見合った方法で為される。

彼らの制裁は、本家のシンブンシ事件が解決された後も続き、遂に警視庁捜査一課も乗り出してくる。

この作品のクライマックスに近づくにつれ、猛流とほかの三人の温度差が見えてくる。

草太達は、自分達がはい上がる事と、自分達が行う犯罪がそれでも誰かの為にはなっているという純粋な思いがあったが、
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猛流の最終目的は、自分達を煽り、義捐金を振込みながらも、なんのリスクも背負おうとはしない「無責任な観客達」をコピーキャットの同志として表に引きずり出す事だった。

義捐金を振り込んだ人間達のリストをネットに流し、自分達のアップした制裁動画を残す事で、無責任な観客達も責任をとらざるを得なくさせる事こそ、猛流の過去への復讐だったのだ。151117_124603.jpg
スナックをやっていた猛流の母親は、猛流が小学生の頃、殺人の容疑をかけられたが、証拠不十分で釈放された。
しかし、その後も同じ団地に住む住民達から嫌がらせを受ける。
そんな母親をたったひとり味方してくれた草太の母にまで嫌がらせは及び、やがて草太の母親は心労から車に轢かれて死んでしまう。
この時から、猛流は憎み続けていたのだ。
そして草太以外、誰も信じていなかった。

この事件は猛流の射殺という最悪の結果で終わるが、物語としては数年後、草太が少年院から出所し、猛流の分も生きる事を誓って終わる…。
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そうであれば、普通であったと思うが、この作品はそうではない。
出所した草太に近づく少年、彼は上の画像に載せた、自分の子供を虐待し、制裁された母親の子供である。151117_125254.jpg
このあと、草太の身になにが起こったかは想像に難しくないラストである。

これを作品としたのは、リアルな怖さを感じたからである。

かつて誰かは忘れたが、有名な漫画家が「マンガは想像の世界だが、それが人間の考えるものである以上、いつか現実のものになる可能性がある」というような事を言っていた。

2チャンネルなど、ネットの掲示板を見れば無責任なカキコミが溢れている社会。
それを踏まえてこの作品を読むと、ただマンガというだけでは済まされない、いつ現実に同じような事が起きても不思議ではないからこそ怖さを感じるのだ。

この作品を読んでおもしろいと感じられたなら、それはどこか感覚がズレてる人だと思う。

怖さを感じた人は自分の行動を振り返ってほしい。
「無責任な観客」にならない為に。

そういえば、この作品のキャラクターのなかでよくわからない人物がひとりいる。
猛流がコピーキャットとしてのサイトを立ち上げたり、警察のパソコンにハッキングするのに手を貸す、やたらコンピューターに精通してるこの男、
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物語のなかではどういう人物なのか、なにもわからないんだけど、本編から繋がってるキャラクターなのかな?
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