私は軽音部に入った。



「え!?ゆいぽんって、ふーちゃんと同じクラスだったの!?」

「うん!そうだよ?」

「えー何回か教室行ったのに何で気付かなかったんだろう」

「あははは、休み時間に来てた?」

「うん」

「じゃあ私いつも教室出るからたまたまいなかったんじゃないかな?」

「そうかも?」



お互いの名前が『ゆい』なので、アダ名で呼ぶことにした。

小林由依ちゃんは『ゆいぽん』
私は今泉だから『ずーみん』とお互いに呼んでいた。



「ゆいぽんひらがなけやきの時いた?」

「いたよ?」

「えー!?何で今まで存在に気付かなかったんだろう?」

「んー、昔やんちゃしてたからあんまり学校来てなかったからかも?」

「何?ゆいぽん元ヤン?」

「いや違うから」



笑うと八重歯が見える。

その度に可愛いと思った。



「ゆいぽん?F押さえれるようになったからさ?何か一緒に弾こう?」



軽音部の既存のバンドには入らずに、個人で所属する事にした。

ゆいぽんもそうだったから。

軽音部の部室は各バンドが使っていてとてもじゃないけど落ち着いて練習が出来ない。

だから私達は放課後の音楽室で二人でギターの練習をしていた。



「これ・・・まだ歌詞は完成していないけど」



ゆいぽんはギターコードが書かれた紙を私に出した。



「え!?ゆいぽんのオリジナル?」

「そう!ずーみんカポ持ってる?」

「カポ?」

「うん、これ」



ゆいぽんはカポという物を見せてくれた。

ギターのフレットの部分に挟んで音を高くする物らしい。



「これ挟むと音が高くなるの!聞いてて?」



ジャーーーン、ジャーーーン



カポ無しとカポありで弾いてくれた。



「本当だ!高くなった!」

「でしょ?だから私のチューニングはね?半音下げるようにしてるの」

「半音下げてもこれがあれば音あげれるからなの?」

「そうそう!」



どんどんギターにハマっていく。

すぐに挫折すると思ってた。

でもゆいぽんと一緒にギターを弾いていると何だか楽しくて難しいコードも弾けるまで頑張れる。

多分私一人だったらとっくに止めてたと思う。



「私もカポ欲しい!いくら?」

「1000円ちょっとぐらいだったかな?」

「買おう!」

「うん!持ってた方が簡単弾き出来るから買った方がいいよ」

「よし!」



私はゆいぽんが作ったギターコードを自分のノートにメモって持って帰った。

そして三番目のお兄ちゃんを連れて楽器屋さんへ向かった。



「佑唯ほらちゃんと座布団したぞ!」

「わーいありがとうお兄ちゃん」



お兄ちゃんは私のおしりが痛くないように自転車の後ろの席に座布団をしてくれた。

今から二人乗りしてカポを買いに楽器屋さんへ行く。



「お兄ちゃんゆっくり漕いでね?」

「おう!落ちるなよー」

「はーい」



自転車に乗りながら、さっき音楽室で弾いたゆいぽんのオリジナルメロディーを頭の中で流した。

どんな歌詞をつけるのかな?

フォークソングのような曲調でとても耳に心地が良かった。



「ラ~ララ~ラ~ラ~♪」

「お?何の歌?」

「え?秘密」

「教えろよー!」

「まだ出来てないのー!」

「そっかー」



春の風が心地良い。

自転車に乗りながら季節を感じる。

良いメロディーが浮かんできそうな予感がした。



キキィーーーッ!!!ガシャーーーン!!



「あっぶねーな!じじぃ!!」



自転車の急ブレーキの音と女の子の怒鳴り声が聞こえてきた。



「何?お兄ちゃん?」

「あっちの方向?事故かな?」




キキッ・・・



私達の自転車も一旦止めて、怒鳴り声の方を見た。



「あ・・・」



あれは渡邉理佐先輩と原田葵ちゃんだ・・・。

二人は欅高の先輩と同級生。

二人乗りしてて事故ったのか自転車が倒れていて、葵ちゃんが地面で踞っていた。

理佐先輩が葵ちゃんを心配してる。



「お兄ちゃん!私行ってくる!」

「え!?やめとけよ!めっちゃ揉めてるぞ」



走って駆け寄ろうとしたが、理佐先輩の半端ない怒鳴り声にビックリしてしまって思わず足を止める。



「ちょっとじぃさん何してたのよ!自転車来てたでしょ?何で止まんないの?危ないじゃん!」



うわっ・・・怖い・・・

相手はおじいちゃんだった。

確かにおじいちゃんが悪いとは思うけど理佐先輩もおじいちゃん相手に言い過ぎじゃないかな?

そう思っていたら楽器屋さんからゆいぽんが出てきた。



「え!?ゆいぽん?」



ゆいぽんは私には気付かなかったが、理佐先輩達に気が付いて葵ちゃんの所へ駆け寄った。



「葵ちゃん?大丈夫?」

「由依・・・ごめん、理佐を止めてほしい?」

「理佐さん・・・」



ゆいぽんは理佐先輩の肩に手を置いた。

けれど、ぶちギレてるせいかその手を勢いよく払う。



バチンッ



「うるっさい由依!」

「すいません・・・」



うわぁ、ゆいぽん勇気あるなぁ。

暫くその光景を遠くで見てた。



「ねぇ理佐?私大丈夫だから、もういいよ落ち着いて?」



葵ちゃんが理佐先輩を宥めるけど、理佐先輩の怒りは収まらない。



「んなもん分かってんのよ!葵も大丈夫なら早く立ってよバカ!」

「えぇ!?」



今度は葵ちゃんが理佐先輩に怒られてる。

噂では聞いていたけど、理佐先輩って本当に元ヤンだったんだ・・・この人ガチで無茶苦茶かも。



「ちょっとじぃさん!聞いてんの!?」



おじいちゃんは必死に頭を下げていた。

やめてあげてほしい・・・。

だんだんおじいちゃんが可哀想になってきた。

でも次に理佐先輩が取った行動と、言った言葉に胸が熱くなって泣きそうになった。



「あんたがここで事故って死んだりでもしたら!あんたの子供や孫が悲しむんだよ!!そういう事考えながら注意して歩いてよお願いだから!」

「す、すいません」

「すいませんじゃねーよ!こっちはスピード出してたから退きかけてマジでびびったんだから!ブレーキ遅れてたら絶対大ケガしてたかんね?!」



そう言って理佐先輩は強引におじいちゃんの重そうなボストンバッグ二つを両手に取った。



「あ、あの・・・すいませんでした、気を付けます」



おじいちゃんが理佐先輩に必死に謝り続ける。

理佐先輩は眉を下げて声のトーンを落とした。



「もういいよじぃさん・・・家どこ?重いでしょこれ?一人で持つなよ・・・」

「え、そんな・・・いいですよお嬢さん」

「っるさいなー、じぃさんの癖にこんなん二つも持つから杖ちゃんとつけなかったんでしょ?」

「ま、まぁ・・・」

「葵っ!早く自転車立ててよ!」

「ご、ごめん分かった」

「由依!おじいちゃんの杖さっさと拾って」

「はい!」



え?何?
何か、暴言吐きまくってたけど、すごいカッコいい。理佐先輩やばい。ちょっと感動した。

お兄ちゃんが後ろでボソッと言った。



「あの人かっけぇー!」

「うん・・・うちの学校の先輩なんだ」

「そうなの?」

「なんだ理佐先輩おじいちゃんの事心配してたから叱ったんだ」



言い過ぎだったけど、おじいちゃんを本気で心配していたのが分かった。

言っている事に筋が通ってて感服した。

ゆいぽんはおじいちゃんと手を繋いで、葵ちゃんは自転車を押して、理佐先輩は重いボストンバッグを両手に持ちながら先々に歩いて行った。

ゆいぽんは結局私には気付かなかったな。

明日色々聞いてみよう。



「お兄ちゃん!行こう」

「おう!」



私は目的のカポを買って家に帰った。

そしてゆいぽんが作った曲を、家でひたすら練習した。























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