毎日新聞
http://mainichi.jp/area/tochigi/news/20120529ddlk09040089000c.html
(続き)
有識者会議の議論が正確に伝わっていないことの一つに健康調査の問題があります。
有識者会議は、ホールボディカウンター等の健康調査について、継続の必要はないと判断しています。しかし、これは、今後の被ばくについてのモニタリングの必要性を否定したものではありません。むしろ、第3回有識者会議で各委員が述べているように、内部被ばくの評価のためにモニタリングの継続の必要性を確認しています。
しかし、なにかを「実施しない」、もしくは「継続しない」という結論は、「対策をとらない」と受け止められるおそれがあり、現にそう受け止めている市民も少なくありません。これは、市民側の情報の読み方の問題を抜きに語れない問題ですが、事故以来の行政の説明不足による不信が大きく影響していることも事実です。
有識者会議の報告や提言にあたっては、こうした先入観があることを前提にわかりやすい内容を発信していくことは、不安の払しょくのためにも重要な取り組みになると考えています。
3. 以上のような認識にうえで、有識者会議の提言にあたって以下の項目について申し入れをします。
⑴市民にわかりやすい提言の作成
⑵市民にできる放射線対策マニュアルの作成
⑶シンポジウムの開催にあたって
⑷中期的展望をもった放射線に関する施策とそのための策定と県・市町村の役割分担
⑸諮問機関の設置
⑴市民にわかりやすい提言の作成
これまで、県のホームページに掲載された有識者会議の報告は、必ずしも議論のポイントやニュアンスを伝えるものではないと考えます。
放射線の問題は、専門的・技術的な分野の問題であり、おのずから専門家と非専門家との用語や表現についての認識の深さや理解の違いがあるため、そのことを考慮する必要があります。また、「健康に大きな影響を与える状況ではないと推測された」(中間とりまとめ)と結論だけを記すことは、その根拠や判断に至るまでの経過を知ることができず、「不安の払しょく」という有識者会議の設置目的に反するものです。そして、これは、回答においても明らかになっています。
確かに、提言は、専門家集団である有識者会議が行政組織である県に対する意見を述べる文書であり、一般市民を対象とした性質のものではありません。しかし、「不安の払しょく」という有識者会議の目的達成のためには、一般市民にとってわかりやすい内容の提言を作成することは目的に沿った妥当なものであると考えます。
そこで、提言は、結論に至った判断経過とその根拠が明らかになるように、回答で述べられた内容を反映させることを求めます。
ア)例えば、福島原発事故以降、放射線の問題については様々な言論・情報が発信されているため、本県における小児甲状腺がんの発生についても、チェルノブイリの資料を参考にする市民は少なくありません。こうした市民を説明の対象とする場合、結論に至るまでの判断プロセスと共に、チェルノブイリとの相違点を指摘することは、説得的であり、不安の解消にもつながることにもなると考えます。健康影響、健康調査の必要性等の項目に、回答で述べられている内容を反映させることによって説得的な内容になり、不安の払しょくにもつながると考えます。また、有識者会議の委員の見解に対して批判的な市民にとっても議論のための論点が明らかになり、今後のリスクコミュニケーションのための資料にもなると考えます。
イ)被ばく低減のための具体策を明記することを求めます。
各委員においては、すでに議論の前提とされていると思われますが、上のような事情を踏まえ、非専門家である市民が理解しやすいように、対策の目的や具体的な考え方を明記してください。菊地委員や楫委員からも第3回有識者会議で質問があったように、放射線の問題は、県の管轄領域を越えた対応が必要になります。被ばく低減対策について、具体的には、①除染の実施、②ⓐ行政・職業団体による汚染食品の規制・制限、ⓑ生産者による低放射能対策、ⓒ消費者による自己防護が必要になります。このような基本的な考え方を示すことで、例えば給食の陰膳方式測定は、ⓒの役割を果たし、ⓐとⓑの対策と相まって内部被ばく対策の効果を果たしていることが理解できます。
前述したように、有識者会議の委員は被ばく低減対策の必要はないと考えている、と誤った認識をもっている市民も少なくありません。そこで、有識者会議の基本的な姿勢として①被ばく低減対策の必要性、②今後、本県における内部被ばく調査の継続の必要性を明記し、そのための基本的な考え方を示すことを求めます。
⑵市民にできる放射線対策マニュアルの作成
有識者会議の提案した企画ですが、速やかな作成を求めます。
また、作成にあたっては、市民の編集過程への参加を求めます。なぜなら、これまでも述べましたが、県が市民の不安や疑問の内容・実情を必ずしも正確に把握していないため、発言の趣旨とは異なる受け止め方がされている場合があります。実用性のあるマニュアルにするためには、専門的な判断と共に、市民のニーズを把握することが必要だからです。
具体的には、市民団体のメンバーを非専門家の立場からの監修者として委嘱することを求めます。
⑶シンポジウムの開催にあたって
シンポジウムの開催については、基本的な事項については、すでに2012年3月7日付で要請をしている通りですが、要請項目3について、以下の通り補充します。
広聴会に寄せられた質問に対して回答がされるまで、かなりの時間がかかりました。内容を読めば、その時間相応の慎重な検討がなされたことは理解できます。しかし、回答がされるまでの間に県のホームページを見た市民には、回答がされない理由がわかりません。シンポジウムにおいても、質問に対する事後の回答がされる場合、回答が保留になっている期間にも検討の経過がわかるような情報の提供を求めます。
これは、有識者会議で迅速な情報提供の必要性(例えば、第2回会議の除染の問題)が指摘されていたことも通じる問題です。原発事故とその影響に関する情報は、迅速さが重要です。多少、細部について誤りがある情報であっても、事後に訂正をすることを条件に迅速に公開する必要があります。詳細の部分の誤りによるデメリットよりも、公開によるメリットが大きいからです。しかし、これまでの県の情報提供や私たちの質問に対する回答の経緯をみると、内部の決済を重視するあまり、情報提供の時期が極めて遅く、また、県が独自に作成する報告等はあまりにも簡潔でポイントを伝える内容になっていません。広聴会の質問に対する回答にしても、回答の結果はともかく、回答の時期、回答までのインフォメーションは、市民の行政に対する不信感を助長させるものです。
不安の払しょくという目的に添って、県の情報提供のあり方についても抜本的に検討するよう併せて求めます。
⑷中期的展望をもった放射線に関する施策とそのための策定と県・市町村の役割分担
本県における放射線に対する健康影響についての中期的展望をもった対策についての方向性は、有識者会議の提言で示されると考えますが、それを実施する体制づくりが必要です。
以下、当面の課題として3点を要請します。
ア)昨年来、国・県・市町村でそれぞれ放射線対策が行われていますが、より実効性のあるものにするため、適切な役割分担と体制づくりを求めます。第3回有識者会議でも、外部被ばく評価のための情報収集について議論があったように、県と県内市町との情報・意見交換は、極めて不十分です。また、被ばく低減のための施策は、単独部署で実現できるものではなく、県の内部においても横断的な連絡体制が必要になると考えますが、この点についても不十分です。
そこで、県と市町との役割分担を明確にし、横断的な連絡体制を作ることを求めます。
具体的には、①被ばく低減のための基本的な考え方を示し、②県のコーディネーターとしての役割を明確にし、③県内部での横断的な連絡体制、④市町との横断的な連絡組織を作ることを求めます。
イ)以下のような内容の健康調査の実施を求めます。
有識者会議は、本県における内部被ばく評価の方法として健康調査は有効ではないとしています。
ただし、①安心を担保するための健康調査、②データ集積のための定期的な健康調査は、なお有意義であると考えます。①については、例えば、尿検査によるセシウムの不検出の確認することは、不安の払しょくにとって言語による説明と比べて大きな効果持ちます(ある意味これも広い意味での「可視化」のひとつです)。②については、長期に渡る低線量被ばくについては、症例が不足しているため未解明な部分が依然としてあるため必要となります。現に福島県においては、30年計画のエコー検査が実施されています。県北地域では、エコー検査の対象となっている福島県内の自治体と同等、ないし高い空間線量率が計測されており、県単位での行政区分で実施の線引きがされてしまうことは公正さを欠くことからも、一定の空間線量率が測定されている地域では実施されるべきだと考えます。
ウ)県・市町が分担して食品測定の強化充実を求めます。
食品測定の体制は、国・県・一部の市町で行われています。また、本年4月からは食品衛生法に基づく流通品の検査が始まっています。流通品の農産物と学校給食の測定は、食品中に含まれる放射性物質の概ねの傾向を知るためのサンプリング検査として有効だと考えます。しかし、山菜等の流通外の食材、他県からの流通品(特に海産物)についての検査は不十分です。とくに、県北地域をはじめ山間部では、山菜類、野生獣等の流通外の食材が他の地域と比較して多く食生活に用いられています。また、サンプリング検査で放射性物質の検出された品種を生産する生産者、販売業者は、自己負担で放射性物質の検査を余儀なくされています。一部の自治体では食品の検査の無料サービスを始めていますが、放射線の問題に対する基本的な認識について自治体間で温度差があることもあり、不十分です。
そこで、生産者、小売業者、消費者が持ち込みで検査できる機関を最低限でも全市町に(小規模な町の場合、広域で対策をすることも含めて)設置することをはじめ、拡大充実を求めます。
⑸諮問機関の設置
有識者会議の提言する対策を実施していくためには、諮問機関の設置が必要です。そして、被ばく低減の取り組みには、リスクコミュニケーションの問題が重要になるため非専門家の参加が不可欠です。専門家・非専門家による諮問機関の設置を求めます。
以 上




