ヤッホ~!帆足由美です。

 

 

 

 

昨日は所属事務所の新年会で

大はしゃぎしたワタクシでしたが、

その前は歌舞伎座で

今年二度目の観劇をしました。

今回はその感想です。

 

 

 

IMG_20170119_141430983.jpg

 

 

 

壽 初春大歌舞伎 昼の部

 

 

 

第一幕は、大政奉還を描いた

真山青果の名作です。

 


 
      大政奉還百五十年
      真山青果 作
      真山美保 演出
一、将軍江戸を去る

 

 


 IMG_20170119_141703885.jpg

 

 


徳川慶喜     染五郎
山岡鉄太郎    愛之助
土肥庄次郎    廣太郎
吉崎角之助   
間宮金八郎    種之助
天野八郎     
高橋伊勢守    又五郎
 

 


昭和九(1934)年、東京劇場で初演された
『江戸城総攻』三部作の第三部にあたります。
 
1867年10月 大政奉還
同年12月 王政復古の大号令

 
学生時代の歴史の授業では、
こんなにも簡単に片づけられていた史実が、
このお芝居では豊かな人間ドラマとして描写されます。
江戸幕府終焉の様子を
歴史上の著名な人物を軸にして語り、
国の未来を思う人々がどう動いたかを
丁寧に描いてみせるのです。
 

 


大政奉還からちょうど150年

ということでの上演だそうです。
演目が発表になったときは
初芝居にしてはいささか真面目すぎるのでは、
と思っていたのですが、
政治的変動が世界各地で見られる今、

とても意義ある上演かもしれない、

などと思いながら観ることとなりました。

 

 


 
慶応四(1868)年四月十日。
昨年十月、朝廷に大政を奉還した徳川慶喜は
上野寛永寺で恭順謹慎しています。
明日には官軍に江戸城を明け渡し、
江戸を離れることになっているのです。
しかし、今になって慶喜の心は揺れています。
官軍に抵抗する主戦論者の意見に耳を傾け、
水戸への出発延期を願い出ようとしているのです。
そのことを知り、慶喜に面会しようと駆けつけたのが
徳川家存続のために奔走する幕臣の山岡鉄太郎。
門を警護する主戦派の彰義隊と小競り合いになりますが、
将軍家槍術指南役を務める
義兄の高橋伊勢守に窮地を救われ、
門内に入ることができるのでした。
しかし、すでに薩長軍と戦う決意の慶喜は、
高橋の諫言を聞き入れず、
山岡との面会も拒みます。
そこで山岡は一命を賭けて慶喜を挑発します。
「水戸家には勤皇の幽霊がついているので、
将軍の仮病も仕方ない」
聞こえてくる嘲笑に憤った慶喜は、
山岡の策略通り目通りを許し、
水戸家代々の勤皇精神の篤さを説きます。
それに対して山岡は、
「勤皇」と「尊皇」の違いを語り、
本来の「勤皇」の大義について熱心に説くのです。
涙ながらの訴えに、じっと耳を傾ける慶喜。
翌四月十一日早朝。
千住大橋には慶喜を慕う
多くの民や旗本が押し寄せています。
やがて、わずかな供を連れた慶喜が現れ、
徳川幕府の歴史を振り返ります。
そして、千住の大橋に足をかけ、
別れの言葉を口にするのです。
「江戸の地よ、江戸の人よ、さらば」

 
 

 

 


江戸から明治に移り行く時代の大きな節目を
真山青果作品らしく、

重みのある台詞で描いていきます。
なかでも第二場の、

山岡が「尊皇」と「勤皇」の違いを

慶喜に進言する場は、

二人の思いが胸に迫ります。
それを受けての第三場の別れ。

山岡でなくとも涙が流れるところですが、

すべてを受け入れ、悟り、

「日本のための日本」でなく

「世界のための日本」を作るために江戸を去る

徳川幕府最後の将軍の姿は

清々しくも見えるのです。

 

 

 

今の世に生きる私たちにも

学ぶところが多いお芝居です。

染五郎さんの慶喜はとても立派。

落ち着いた演技が心に染みました。

愛之助さんの山岡鉄太郎、

熱血漢ぶりがぴったり。

又五郎さんの高橋伊勢守、うまい!
 

 


 
さて、二幕目はがらり雰囲気変わって
華やかな舞踊です。
 


 
  河竹黙阿弥 作
  二世藤間勘祖 構成
二、大津絵道成寺
   愛之助五変化

 

 

 

IMG_20170119_141735542.jpg

 

 


藤娘
鷹匠
座頭         愛之助
船頭
大津絵の鬼

弁慶        
犬          種之助
外方                 吉之丞
矢の根の五郎    染五郎
 

 


『京鹿子娘道成寺』を基にした五変化舞踊です。
作者は河竹黙阿弥

江戸時代の作品ですが、

長い間上演が途絶えていたところを

昭和四十(1965)年、三世實川延若により復活。

その後、当代坂田藤十郎が改訂し、演じてきました。

 

 


『京鹿子娘道成寺』といえば、

昨年12月の歌舞伎座興行第三部では

『京鹿子娘五人道成寺』の上演があり

たいへんな話題となりましたが、

今回は「五人」ではなく、「五変化」ということで。

 

 

 

 

 

ここは近江の国の三井寺。

今日は寺で鐘供養が行われることから、

七福神のひとり外方(げほう)が

大勢の唐子(からこ)を従えてやってきます。

外方が酒宴を始めようとしますと、

そこに現れたのが藤娘。

鐘を拝ませて欲しいというのです。

外方は藤娘に舞を所望しますと、

藤娘はさっそく踊り始めます。

しかし、いつのまにか消えてしまい、

今度は鷹を追って鷹匠が現れるのです。

この鷹匠が走り去ると、

杖をついて現れるのが座頭。

犬とじゃれつきながら座頭が去ると、

再び藤娘が現れて若い娘の恋心を踊りますが、

急な雷に姿を消してしまいます。

すると、いなせな船頭が現れて踊り、

そtれに続いてまた藤娘が現れたのですが、

落ちた鐘の中に姿を消してしまうのです。

しかし、そこに駆け付けた弁慶が祈ると、

鐘からは大津絵から抜け出た

鬼が姿を現すではありませんか!

この騒動を聞きやって来たのが弁慶です。

弁慶が祈りを唱えると鐘はつり上がり、

そこには恐ろしい鬼の姿が。

弁慶の供の奴たちは立ち向かいますが、

まったく歯が立ちません。

そこに駆けつけたのが矢の根の五郎。

鬼を押し戻すと、必死の抵抗を示した鬼も、

ついには祈り伏せられてしまうのでした。

 

 

 

 

 

『大津絵道成寺』の大津絵とは、

江戸時代に流行した風俗画のようなもの。

そのなかの人物が抜け出して踊る、

という楽しい趣向です。

ビジュアル的にとてもカラフルで、

絵本を見るような気分になります。

出や引っ込みも、がんどう返しや、

囃子方の雛壇や黒御簾から出たり消えたりと、

演出も派手で面白いのですが、

なんといっても注目は、

愛之助さんの一人五役の踊り分けです!

しかも、五つの役の内でも重要な藤娘、

愛之助さんの女方は初めて拝見しましたが、

さすがは歌舞伎の役者さんです。

ちょっと前まで熱血漢の山岡鉄太郎を演じていたというのに、

さまになってしまうものです。

可愛らしく初々しい藤娘でした。

座頭はちょっととぼけた風情が魅力。

一番素敵だったのは、船頭でしょうか。

 

 

 

吉之丞さんの外方は

のほほんとした風情がよかった。

種之助さんの犬の演技も軽やかで可愛らしい。

幕切れ、愛之助さんの鬼、

さんの元気な弁慶、

染五郎さんの力強い五郎のスリーショットは、

これぞ歌舞伎というおめでたさ。

1月ももう後半ですが、

お正月がやって来た!

という気分になる一幕でした。

やはり初芝居は、

こういう演目があると心が華やぎます。

 

 

 

 

昼の部第三幕は、時代物の名作です。
 
 


  伊賀越道中双六
三、沼津

 

 


 IMG_20170119_141808919.jpg

 

 


呉服屋十兵衛   吉右衛門
お米         雀右衛門
荷持安兵衛          吉之丞
池添孫八             又五郎
雲助平作            
 
 

 

「曽我兄弟の仇討ち」、「赤穂浪士の仇討ち」と並び

三大仇討ちのひとつとされる、

「伊賀越(いがごえ)の仇討ち」を題材にした作品です。

 

 

 

「伊賀越の仇討ち」とは、寛永11(1634)年、

岡山藩士の渡辺数馬が義兄の荒木又右衛門とともに、

父のかたきの河合又五郎を伊賀上野で討った事件。

 

 

 

それを素材にした『伊賀越道中双六』は、

天明三(1783)年に大坂竹本座で人形浄瑠璃として初演。

『沼津』は全十段のうちの六段目に当ります。

 

 

 

 


東海道の宿場町沼津の里のはずれ。
鎌倉の呉服屋十兵衛は

年老いた雲助の平作に出会います。

(雲助:江戸の宿場や街道で荷物運びや、

駕籠かきをした人足)
足下もおぼつかないのに

荷物を担がせてほしいと頼みこまれ、

荷物を預ける十兵衛。

しかし、齢七十という平作は木の根に躓き、

足の爪をはがしてしまう有り様。

十兵衛は、印籠の妙薬で手当てをし、

平作には駄賃をやって自ら荷を担ぐことにします。

そこに通りかかるのが平作の娘のお米。

その美しさに、十兵衛、見惚れてしまいます。

そして、先を急ぐ身でありながら、誘われるまま

平作の家で休息を取ることにします。

 

 

平作・お米親子の住むあばら家。

平作の怪我は十兵衛の薬ですっかり治った様子。

お米はお礼に宿泊を勧めます。

お米に一目ぼれした十兵衛は快諾し、

ついにはお米を嫁にしたいとまで言い出しますが、

平作もお米も困惑した様子。

実は、お米には夫がいたのでした。

 

 

その夜。

十兵衛の寝床に何者かが忍び込み、

印籠を盗もうとします。

気付いた十兵衛が取り押さえると、それはお米。

お米は、手傷を負った夫の怪我を治したかった、

と告白します。

お米の話から、彼女が元は

吉原の傾城瀬川であることを見抜き、

その夫の正体にも見当のついた十兵衛。

そして、その後の平作の話に驚きます。

平作には二歳のときに養子に出した

息子がいると言うのですが、

その息子こそ、十兵衛だったのです!

息子のことは断ち切ったと語る平作を前に、

十兵衛は名乗り出たい気持ちをこらえます。

何も明かさず、石塔料だと言って金を置き、

平作の家を出て行くのでした。

 

 

十兵衛が去ったあと、平作とお米は

印籠が残されていることに気付きます。

そして、印籠の文様が

仇の沢井股五郎のものであることにも。

実は、お米の夫は

上杉家家老和田行家の子息、志津馬。

志津馬の父を殺した張本人こそ、

沢井股五郎だったのです。

十兵衛はなぜそんなものを残していったのか。

不思議に思う平作が金を調べると、

金を包んでいたのは、かつて平作が

別れた息子に託した守り袋の書付。

すべてを見抜いた平作は、

十兵衛を追って走り出します。

 

 

千本松原で十兵衛に追い付いた平作。

金を返す代わりに

印籠の持ち主の居場所を教えてくれと頼みます。

気持ちは分かるが、自分も股五郎に義理のある身、

明かせないと十兵衛は断ります。

すると平作、十兵衛の脇差を抜き取るや否や

自分の腹に突き立てます。

驚く十兵衛に対し訴えることには、

「どうせ自分は死にゆく身なのだから、

こっそり明かしても不義理にはならない」

まさに命と引き替えにして

股五郎の居所を訊くのです。

心打たれた十兵衛は、

すぐ近くにお米が来ていることを知りながら、

落ち延びた先は九州の相良だと明かします。

そしてようやく平作と親子の名乗りを果たすのですが、

平作はもう虫の息。

静かに息を引き取るのでした。

 

 

 

 

 

ドラマティックなお芝居です。

「伊賀越の仇討ち」をベースにしながら、

仇討ちの当事者は一切登場せず、

その仇討ちに巻き込まれた庶民の悲劇が、
たいへんドラマティックに描かれます。

 

 

 

最後は涙なくしては観られない展開ですが、

中盤まではユーモラスでのどかな描写が続きます。

 

 

 

第一場、東海道を行き交う旅人の様子をゆったりとみせ、

江戸時代にタイムスリップした気分を味わった後に、

十兵衛と平作の奇跡の出会いがあります。

初対面なのになぜか息の合う二人の会話は

聞いていてとても微笑ましい。

声を出して笑ってしまうこともしばしば。

二人の道中は、舞台から客席に下りて

劇場内をぐるっと回り、

花道からまた舞台へと戻る演出で、

なんとも楽しい気分にさせられます。

その間に、舞台は「居所変わり」、

観客の目の前で舞台転換をするのです。

 

 

 

続く第二場、お米にぞっこんな

十兵衛の様子が可愛らしいし、おかしい。

平作・お米親子の貧しい暮らしぶりも

途中まではユーモラスに描写されますが、

中盤からにわかにトーンは一変。

一大悲劇へとなだれ込み、

涙のうちに幕、となるのです。

 

 

 

吉右衛門さんの十兵衛、絶品です!

前半の恋する男の可愛らしさ、

後半の親への情愛と義理のはざまで苦悩するさま、

どの姿もとても良かった。

すっきりとした旅の姿も颯爽として、

とても若々しく映りました。

平作役の歌六さんとの息もぴったりでひじょうに楽しい。

まるで本当の親子のような。

でも、吉右衛門さんの方が5つも年上なのですね。

雀右衛門さんのお米も、

ただ健気な夫思いの女ではなく、

一本芯の通ったところが素敵でした。

 

 

 

2時間足らずの上演時間で

これだけ急展開の内容でも無理なく観られたのは、

役者がそろっているからでしょう。

初めて観たお芝居でしたが、たっぷり楽しめました。

 

 

 

『壽 初春大歌舞伎』

千穐楽は一月二十六日(木)。

昼の部の私のおすすめは、

ベテラン勢の安定の演技で『沼津』です。

 

 

 

 

 

今回の幕間。

 

 

 

IMG_20170119_141350451.jpg

 

 

 

ジョアンのサンドウィッチ

「セ・トレ・ボン・セゾン・イヴェール」

681円(税込み)

 

 

 

・たまごチキンのサンド

・ハムとチーズきゅうりのサンド

・パストラミビーフとチェダーのサンド

・マーマレードとクリームチーズのサンド

以上4種類入りです。

 

 

 

 

 

IMG_20170119_141519948.jpg

 

 

 

歌舞伎座タワー地下2階

木挽町広場には

早くも雛飾りがお目見え。

 

 

 

 

IMG_20170119_141613462.jpg

 

 

 

水引細工師の水心さんの作品

「旭日鳳凰」

精巧かつ華やかな細工にただため息。

 

 

 

 

 

 

 

 


 偶然が重なって起きた悲劇を巧みに描いた義太夫狂言の名作をご覧いただきます。