2012-01-21 03:07:15

旅は続く

テーマ:ホテル・旅館

 正月くらいは、高級な宿に泊まろう。

 そう思って、今年初めてのこのU市への出張、私は、駅から5分ほど歩いたところにあるこの「Uセントラルホテル」に、1泊3,980円の部屋を予約したのだった。

 もちろん、はじめての宿泊である。

 まず、ホテルの建物がとても大きく、しかも、ロビーなどが異常なまでに明るいのに驚かされる。蛍光灯がこうこうと灯り、どこかの事務所にいるようだ。

 午後10時半。

 すでにあたりはとっぷりと暮れており、中国山地から吹き下ろす北風には、粉雪さえ混じっている。しんしんとした街並みの中で、ただひとつセントラルホテルの明るさは、文字通り異彩を放っていた。

ここはもしかしたらもともとホテルではなかったのかもしれない。

 その思いがさらに強まったのは、エレベーターを2階で下り、客室232号室に向かっていたときだ。なぜなら、客室の配列がどう考えてもホテルらしくなかったからだ。

私はエレベーターを降りてから、宴会場やトイレの前などを通った後、階段を何段も下り、あたかも1階に戻ったかのようなところで目的の232号室に到達した。

 ドアをあけてさらに驚かされたのが、ムムムムォーッ、ボボボボワーッとした煙草臭であった。

 たしかに、禁煙ルームを希望…とは、私は言わなかった。しかし、喫煙室を希望とももちろん言わず、ましてやヘビー・スモーカー専用室を…なんて所望しなかったのも事実である。

 しかし、ここではついさっきまで世界愛煙家会議が開かれていたかのよう。壁、床、ベッド、クローゼットの中、すべてに煙草のにおいがしみついていた、というより、こびりついていた。

 たまらず私は部屋の窓を開けようとしたのだが、見るとそこには「窓は絶対に開けないでください。」との掲示が(★写真1)。


弁護士市川尚のコンビニエンスな日々

 ★写真1


いったいなんのための窓なのか。2階なのに。

それに「絶対に」とまで言われると逆に開けたくなるではないか。

しかし、開けようとしてもガッチリ固定されていて開かないではないか。

そしてそれなら「開けないで」という必要ないではないか。

…おそらく、お客がチェックアウトをせずに部屋から逃げてしまうことを警戒しているのに違いない。

そういえば、ごく最近ここU市の近くの刑務所では脱獄事件があったけな。

 脱獄を断念した私は、さっそく風呂に入ることにし、高級ホテルに似つかわしい、洗面台とトイレとバスタブが見事コンパクトに収納された浴室へ。

ここもたいへんな煙草臭だ。愛煙家会議の面々は、風呂の中でまで煙草をやめられないのか。

 いずれにせよ、湯を注いでいる間、改めて見回すと、浴室とは違って、部屋は異常なほどの広さである。ここは元大会議室だったのにちがいない。こんなに広い部屋が13,980円だなんて…。

 そして、この部屋の片隅に、私は実に懐かしいあるものを発見した。

 そのあるものとは…。

 そのあるものとは、空調機の無骨な調節スイッチなのであるが、そこにはあの懐かしい「ナショナル」のマークがくっきりと記されていたのである。

 水戸黄門の前などで、「あかる~いナショナル、あかる~ナショナル、みんなうちじゅうなんでもナショ~ナ~ル~」などという平和な歌が流れていたころの、あの骨太の「N」をアレンジした松下電器の商標(★写真2)。


弁護士市川尚のコンビニエンスな日々


 ★写真2


 昭和の原風景を見た思いがした私は、そうだ、あのころは、禁煙室なんていう概念自体がなかったよな、映画館の中だろうと飛行機の中だろうと、みんなタバコを吸っていた・・・と、今はむしろ猛烈な煙草臭にも慣れてきて、ノスタルジアにも似た感懐に浸るのだった。…おっと、風呂の湯がいっぱいになっちゃう。

 風呂に入ってまたひとつ、私は発見をした。

 こういったビジネスホテルでは、必ずと言っていいほど、パジャマやバスタオルなどをひっかけるためのフックが浴室のドアの裏に、そう、必ず決まってドアの裏にくっついているものなのだが、ここのホテルのドアにはそれがない。

 私は、本当に珍しいビジネスホテルだな、と思った。

 そして、よく見ればそういったフックの代わりに、フックが取れた痕がひとつドアの裏にくっついているのだった。

 風呂から上がった私は、チェックインからまだ2時間たっていない夜12時前には就寝。前の晩ほとんど寝てないこともあったが、あっという間に深い眠りに陥った。

 だから、結局どんな宿でもいっしょなのだ。

 そういうことを強く認識させてくれた、ここUセントラルホテルでもあった。

 こうして私の旅は今日も続くのである。

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