DUSSUN R10i | 禁断のKRELL

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ハイエンドオーディオやヴィンテージオーディオを語っていきます。




DUSSUN R10i プリアンプ 2006年 中国 ¥900,000







DUSSUNは中国、上海に拠点を置くブランド。代表兼チーフエンジニアは、Zou Yuanyuan。
このR10プリにはマークレビンソンと深い結びつきがある。遡ること時は2005年前後、
RED ROSE MUSICを主催していたマークは、かつて同社でエンジニアを務めていた
Zouと日本の輸入商社オーディオリファレンスから新しいプリアンプ開発の打診を受けていた、
RED ROSE MUSICの内情は、これまで通りマークが監修し、設計はZou Yuanyuanが担う形、
もうひとり、リチャードという人物も開発に関わっていたが、かれはAppleに引き抜かれてしまった。
「マーク、やらないのか?」 「いや、自分の会社ではやらない!」
そうこうしているうちにRED ROSE MUSICは消滅し、マークも一時期韓国のL.G電子という
大企業で音響監修の仕事をしていた。RED ROSE MUSICで開発がスタートし、マークの影響力も
あったこのプリアンプは、独立して会社を立ち上げたZou YuanyuanによりDUSSUN R10と
してリリースされたという経緯がある。マークが口を出したという影響力は否定できないが、
DUSSUNの開発はZou Yuanyuanが、「一から十まで全部一人で手掛けている」 というのは
DUSSUN製品を扱うセレクトショップ代表の弁。オーディオリファレンスの社長さんは
元木工職人で、職人気質の気難しいお方。JBL(ハーツフィールド、C40ハークネス)、
ELECTRO VOICE、GOODMAN、LOWTHER 等のスピーカーユニットに適した
エンクロージャー及び家具調オーディオキャビネット等をカスタムメイドで生産していた、
前身はキャビネットのメーカーだった。マークレビンソン製品との関わりも深く、
昔MLAS時代のプリアンプは日本製の木製ケースと組み合わせられていたが、
あのケースを作られていた職人さんだ。DUSSUN製品の取り扱いは現在全国で十店舗ほど、
西日本では四国の徳島に取扱店がある。「なぜ取扱いが増えないのか?」との問いには、
社長さんがかなり高齢で全国飛び回るにも限度があるので、これ以上は難しいからだそうだ。




最初はRCA入力で聴き始めた。短時間の通電の為か、線が細く低音も全然出ていない。
寝ぼけたような音。このプリは完全バランス構成の為、入出力ともにXLRで完全バランス
構成のDuet350と組み合わせて再度十分な時間を掛けたウォーミングアップを経てテストした。
第一印象としては典型的な現代ハイエンドの音である。Ayre KX-Rを越える驚異的な
高性能機という触れ込みである。MLAS、Celloの鋭敏に研ぎ澄まされた音と表現される
音像の輪郭線を強調し、他社比較では異例の実体感を誇る明瞭度感の高さ、
流麗な微粒子状のソノリティ、妖艶な美音でシステムの音を染め上げる強い支配力、
甘美な倍音成分、こうしたマークのサムシングはほぼ感じられなかった。
やや肩空かしを食らった感じ。アッテネーターのステップは細かく設定できるが、
そうした利点と引き換えにかなり回さないと大音量が出せない。
一般的な音量ではレビンソンのホームオーディオ機と比較するとかなり大人しい音に
感じたが、爆音にすると表情は一変し、エネルギー感に溢れた太く力強い表現に変わった。
低域が太く重厚感があるが、意外にも少し団子になって混濁する印象だった。
BLACK LABELⅡを二本使った影響かもしれない。通常音量の使用時では穏やかな表情で
細やかなニュアンスを描く。
デバイスの進歩、設計年代が新しいメリットはサウンドから感じられたが、
完調のEncore1MΩLⅡを所持しているの筆者には購入する必然性は感じられなかった。
"鳴りの強さ" "鳴っている感じ" つまり楽器音のリアリティー(実体感)では、
Encore1MΩLⅡの方が遥かに再現性が上である。R10iはこの点が普通のハイエンドプリだ。
アタックはCelloやレビンソンのような硬質なものではなく、硬・軟でいえば中庸で低域は柔軟、
明るい音に感じられた。「ずっと聴いていたい」 「スッと、惹きこまれるような」 求心力は
感じられなかった。色付けは少なくニュートラルな音に聴こえてくる。R10iは大音量では
魅力があるが、極小音量時は音が痩せてしまい冴えない音。
Encore1MΩLⅡとDuet350の
Cello純正ペアに割り込む形でテストしたので、ブランドを揃えたCelloと比較するには
条件が不利だし、こうしたレーシングマシンのような高性能な機器は性能発揮させる
ための使いこなしも難しい。到底機器の潜在能力のすべて把握できたとは言えない、
だが、虚心坦懐に音を聴く限りは機器の性能面、特性面でも19年前のEncore1MΩLⅡと
ごく僅かな差しか感じられなかった。
リモコンがあるのは魅力的だが買い替える必要はない。
むしろ音楽を聴く際の満足感は減るだろう。R10iのような一般的な現代ハイエンドの
音質は、筆者の好みだと 「薄味で面白みがない」 と感じられるし、こうした最新機器を
良しとする方たちからすると脚色の強い往年の銘機は 「ちょっとクドく感じられる」
そんな感想になるようだ。電源ケーブルはNBS BLACK LABELⅡ スピーカーはJBL S5500でテストした。










IECインレットのCNT銀メッキ
IECインレットインシュレーター
内部配線アップグレード 
ヒューズ
トランス用ハニカムインシュレーター
電源基板インシュレーター
ネジ交換
ハンダアップグレード
内部シールドアップグレード
底板アップグレード
ハニカムインシュレーター
RCAキャップ


今回試聴したのは上記改造を施したショップによるチューニングバージョンです。


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