だいたいの犬がそうなのかもしれないが、ときどきどこを見るわけでもなくじーっと部屋の隅を眺めていたりする。
名前を呼んでも反応するわけでなし、とにかく何かを追いかけるというか睨んでいるというか、絶対に目を離そうとしない。
この状態は僕たち人間からすると結構怖い光景。
口に出したくはないが、多分見えてはならないものを見てしまっているのだと思う。
この世のものでないものが。
大学生の頃は冗談半分で心霊スポットにも何度か行ったことがある。
関西弁で言うところの怖場ってやつだ。
若気の至りで済めばいい話だが、正直なところおふざけで行っていいところではない。
ある廃ホテルに先輩数人と行ったことがあったが、そこは幽霊の他にも怖い噂がいくつか存在する場所であった。
なんとそこを管理しているのは、筋者の人だというのだ。
二重の恐怖に怯えながら恐る恐る進んで行くと、上の階から叫び声がするではないか。
急いで階段を駆け上がると、別の大学グループも同じ場所にいたらしく、小太りの先輩が幽霊と間違われて女の子たちに驚かれていた。
これには思わず笑ってしまった。
怖場に響き渡る若者たちの笑い声。
これはこれで異様な光景だったのかもしれないな。
生きている人間がいる以上、死んでいる人間や動物がその辺りに浮遊していても何ら不思議ではないと思っている。
霊感は全くないので、気配すら感じたことがないが、かわいい幽霊ならちょっとだけウェルカムかもしれない。笑
怖場で悪ふざけはダメ絶対。
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