4月7日
村上春樹 『アンダーグラウンド』 講談社
- アンダーグラウンド/村上 春樹
- ¥2,625
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この本も結構古いのですが、個人的に気になっていることがあるので、感想を書いておく。
事件はもう12年ぐらい前のことだから、歴史的な記録としては、知識があっても当時の雰囲気やリアリティを思い出せる人たちはもうあまりいなくなっているかもしれない。
『アンダーグラウンド』は、オウムによる地下鉄サリン事件の被害に遭遇された人たちに村上春樹がインタビューをして事件当時の人々の証言を収めたインタビュー集のようなもの。
本の内容に入る前に、オウム真理教が当時どういう捉えられていたかというと、怪しげな連中だが、しかし特に危険なわけではないのではないかとも考えられていた。(本のなかで、そういう証言も何度か出現します)東大出の人や早稲田で主席を取った人間や医学部の出身の者がわけのわからない宗教に入り込んで夢中になっていることは事件当時からなんとなしに、周囲に奇妙な印象も与えてはいましたが、信教の自由の問題もあるし、そもそも麻原彰晃のような滑稽な連中に社会に危害を加えるような可能性があるとか言う様には意識されていなかった。
サティアンなどオウムの施設が怪しいという指摘はあったのであるから、たとえば危険物の取り扱いの管理責任の問題を問いただす、検査するというぐらいはしようとすればできたと思う。
工業的な施設を運営するためのルールがどうなっているのか、私にはよくわかりませんが、オウムが何か実験をしているのは周知の事実だったので、そこに行政などがはいることは、可能だったのではないか、という気もしますが・・・
94年の松本サリン事件のときも河野さんが犯人であると間違った報道が横行してしまって、オウムがそのとき追求されず、地下鉄サリン事件の予防になりえなかった。
警察が河野さんを冤罪にしたせいで、オウムを喜ばせてしまったのかもしれない。
松本サリン事件のときもオウムが危険という認識は、警察などではほぼ無かった様子。
やっと、この本の内容に入りますが、サリン被害にあった患者に処置をした医師がトリアージという言葉を紹介していました。トリアージというのは、集団災害などの場合に複数の患者が一度にやってきたときに、どの患者を優先的に診るべきか、判断することのようです、誰を優先的に助けるべきか判断せずに来た人から順番に処置をしていると助かる人も助からなくなるので、仕分けしなければならない。
医療の分野では事件が起きて、患者が来たときにどう対応すればいいのかについては、ある程度できていたようですが。国や行政がテロ予防やテロが起きたときにどう対応するべきなのかは、どうやら、きちんとした実効的なルールというものは無いようだ。
自衛官やオウムが危険だと指摘していた弁護士の話もあるが、テロの予防にしても起きたときの対応にしても国や行政がどう行動するべきか、きちんとしたルールや対応法など、日本社会には、何も無かったの同然ようだ。
そして、村上春樹は関係者に取材を申し込んでも、きちんと相手にしてもらえないことがたびたびあったと困惑していたが。身内の恥をさらさないというように行動するのではなくて、情報は公開されて広く共有するべきではないか、と主張している。なかなかそうはならないのでしょうけども。


