3xnw

本や映画の感想を書いていますが、主観に走っています。参考になるかどうかは微妙なところ。

*トラックバック・コメント歓迎(ただし無関係と思しきものは発見次第削除。間違っていたらごめんなさい。)

アメンバーの申請を許可することはありません。アメンバー限定の記事を書くつもりがないためです。ご了承ください。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>

トカゲ vol04

2009-10-12 10:07:48 テーマ:トカゲ
トカゲ vol.4/秋乃 茉莉
¥980
Amazon.co.jp

ホラーM記事が多少の需要がありそうだったので、こっちも書いてみる。


☆「トカゲ」を知らない人のための前書(私の勝手な解釈を含む)☆


ホラーMに不定期掲載の連載陣が増えた、それも非ホラーで超長期であり、いつ終わるかもしれない(反面すぐ終わることもできる読み切り形式)マンガである。

ホラーMが月刊だったころはなんとか掲載の均衡を保っていたのだが、隔月化に伴い掲載枠が減った。

外部で活躍した漫画家が多くて長期化のため一定のファンが存在し、ある程度の販売数が見込めると判断し(たのかどうか知らん)、ホラー味が薄いマンガを書籍扱いのアンソロジーとして隔月発売することにした。

ホラー色が薄い! しかも1から買ってもさっぱりわからないという不親切なアンソロジーコミックス。それがトカゲ。


ホラーMを2年前から購読していても、それでもわけわかんないしあんまり好きじゃない「すっくと狐」「賢者の石」(これはたまに好き)「KATANA」(最初のうちは好きだった)が目玉みたいなのになぜ買っているかというと、それ以外の作品が読みたいから、そしてコミックスになるかわからないから。これに尽きる。


本当に、超長期連載は終わる兆しを見せないし、勢いを感じないしであんまり魅力がない。もっと大きな山場を作る気はないんだろうか。長くなったけど以下あらすじと感想。



「賢者の石 黒鷲の系譜」秋乃茉莉

時はルネサンス、賢者の石(エリキサ)を探しているロレンツォ。今回はローマ帝国で騒動に巻き込まれる。


ロレンツォの設定が濃すぎて覚えきれない。今は亡きキプロス王家の最後の王であり、幼いころから精霊が見えてそれ故異端者扱いをされて手のひらに磔刑の聖痕を持つ。さらにベネツィア元首の甥であり、魔女ローザの弟子でイタリアボローニャ大学医学部学生で数ヶ国語堪能で……って忘れるよ! 途中からだと入り込めないよ!

それでも一話で終わる場合は好きなものも多いです。いや、ロレンツォの背景が見えない話だったらいい。


お育ちとかなんだかんだ見え始めるとうんざりしてくる。ごちゃごちゃしすぎ。ロレンツォがそんな高貴で大層な人にも見えないし。普通っぽい。

今回の話もその匂いがする。続かなきゃいいのに。

カラー口絵は生首っぽい。マントのせいか体が貧弱で、首が浮いて見える。色ものっぺりしている。



「KATANA 葉隠れ刀」かまたきみこ

成川滉の家は代々続く刀鍛冶。本人は幼いころから刀に宿る人格が見える。そのために騒動に巻き込まれたり、問題を解決したり。今回はそんな彼の小学生の思い出。

このシリーズも一話で終わるものはすっきりしていて好きなものもある。が、今回はあんまり。いや最近はあんまり。だらだら続いてるだけのような気がする。

忍者屋敷はおもしろかったです。でも刀の気配がうっとうしい。人の邪魔をするなよ。怖がっているかどうかくらい見て判断してください。



「しりこだま」柳田やなぎ

河童の川太郎は自分の子供を12匹産んでくれる女の子を探し中。でもいつも逃げられてばかり。

やたら裸とぱんつが出てくるのはなんでですか? それはともかく川太郎が学校に通うことになったり女河童が出てきたり謎の少年が出てきたり、最近慌しいね。ワンパターンでなく物語が進むのは喜ばしい。

でも今回は初登場人物が増えただけのような気がする。



「ハイエナ少女の血とガッツ」灰野りつ子

七子と光、イタコの三人はそれぞれに問題を抱えている。彼女たちの住む下町には死神がいて、今日も血と腐臭を漂わせて彼女たちに近づいてくる。

何がしたいのかよくわからないマンガ。死神がてくるというありがちさが最初は嫌いだったけど、最近は好きになってきた。おどろおどろしくてなかなかいいね。

今回イタコを探すときの呼びかけ「イタ子」に笑った。イタコっていう名前もどうかと思うけど(これまでにイタコ能力なし・自称しているだけなので本名なのかは不明)イタ子って……。

しかし2006年8月号に載っていた「ハイエナ少女の血とガッツ」死体蘇生はなかったことになっているのか、そのうち復活するのか。



「相羽奈美の犬」松田洋子

相羽奈美をストーカーしていた無職無気力の青年が車に跳ね飛ばされた瞬間「犬になりたい」と願ったため、大きな狼のような犬に犬にされた。しかも噛んだ人間を犬にするという能力付き。こうして今日も奈美を守ることを使命としている

これはホラーじゃないです。陰気なコメディだ。でも好き。単行本も買った。

元ストーカー現犬のオンがうじうじうだうだしていて毎回うざいです。でもたまにかわいく見える。毎回入る小粋なギャグが好き。おもしろい。

今回はオンを犬にしたネンの昔の話。奈美さんのお母さんやお父さんの過去の話が出てきて物語が進んだのかな? 最近存在感が薄かったからうれしい。


長くなったので続きは今度

同じテーマの最新記事

ホラーM 2009年10月号(2)

2009-10-06 21:18:24 テーマ:ホラーM
ホラー M (ミステリー) 2009年 10月号 [雑誌]
¥690
Amazon.co.jp

前回からの続き


「忌友」菅原県

小学校の頃の同級生・迫田君は足が不自由だ。腫れ物に触るような対応をしていたんだけど……。

おもしろかった! 今回のトップ。迫田君のいやらしさが不気味でとっても良いです。ミキちゃんどうなったんだー。


「漫画家墓場」見ル野栄司

作者と、ホラーM編集者に対する精神的なホラー。

ごめん、私こういうのは好きじゃないです。ギャグっぽいんだけど笑い所がわからない。


「罪の花束」ワタナベチヒロ

幼児を殺した少年の、殺人に至るまでの過程。

久しぶりの登場。絵が硬くなっちゃった。デジタル? どんどん表情のない絵になっていくのはなぜ?

最後のフレーズ「ラインはすぐ足元にあって 誰だって すぐに越えられるんだぜ」っていうのは否定はしない。しかしこういう話で使ってほしくない。時と場合が違う。

今まで起こった少年犯罪をそのまま漫画にしたみたいで、目新しい話ではないです。

 

「絵画修復家キアラ ミケランジェロの遺言Ⅲ」たまいまきこ
ミケランジェロの絵に隠された秘密を探るという壮大なストーリー。

キアラも好き。これまでは絵に修復の必要がある→直していくうちにおかしなことを発見→謎解明、の流れのミステリー調。

今回で一部完とは……半端だよー。ギネヴィオとはこれまで? リカルドのほうが好きだからそれでもいいけど、謎の解明まではちゃんと最後まで載せてほしい。

一部完と銘打って再開しなかったマンガがホラーMにはいくつもあるので心配してる。コミックス出てるし、これは再開すると信じてます。


「新 呪いの招待状 絶対的幸福論」曽祢まさこ

殺したい相手を10年の寿命を払えば殺してくれる呪術者のカイ。今回の依頼人は母親を殺したいという女性だった。

前回続きがあると思ってたのになしですか? 人外のものに狙われてカイのところに逃げ込んで終わりっていうのはなしじゃなかろうか。あの人外のものはどういう存在なのかちょっとくらい教えてくれてもいいのに。

今回は同性の恋人を心ない言葉で死に追いやった女性がお客様。結構おもしろかったけど、この人の話って同性愛者多いね。


「神の子供」西岡兄妹

血と汚物で汚れた黒い太陽を母とし、世界に復讐するために生まれた子供の話。

私が好きで楽しみにしているマンガ。ほぼ毎回血と汚物が出てきます。絵本みたいな絵でかわいいけど、毎回グロくて濃い。しかしその絵のおかげでわりと平気。

殺した少年の肉を切り取り「食えよ パンだよ」って無理ありすぎだろ。いや、おそらく宗教的な意味合いや支配・征服目的で言ってるんだろうけどさ、突っ込まずにはいられなかった。今回ページ足りないよ。あっけない気がしたよ。

次回はさらに一歩踏み出した少年のその後なので、ますます楽しみ。次回はカラー!


「催眠ドレイ」三条友美

催眠術をかけて奴隷みたいな扱いをする話。

この作者を見ると懐かしい。サスホラ時代を思い出す。でも私はあまり好きじゃない。絵も苦手。

今回は普通に読めました。よかった。いっつもグロテスクで気持ち悪いわで苦手です。話はいつもと同じくらいであんまりおもしろくない。この人の売りは話の面白さじゃなく、とことんグロッキーなところだと思ってる。

でもダメなんです。



連載だいぶ増えたねー。今までホラーMでデビューした人はもう載せないの? 1号につき1,2作載せたっていいんじゃないかと思うけど。

「遊霊少女 凛」は早く違う展開を見せてほしい。隔月販売の雑誌に不定期連載ってなんなのさ。


巻頭の「ひぐらしのなく頃に」の竜騎士07さんと押切蓮介さんの対談が載っていたのですが、おもしろかったです。押切さんのお父さんの話が特に。

ホラーM 10月号

2009-10-04 10:34:19 テーマ:ホラーM
ホラー M (ミステリー) 2009年 10月号 [雑誌]
¥690
Amazon.co.jp

9月5日に発売されたホラーM。私が唯一購読している雑誌です。ほかにおもしろいホラーマンガ雑誌があれば教えてください。一年半くらい前から買っているのですが、普通の本屋じゃまず見当たらないドクロ

もっぱらネットの本屋で買ってます。
今さらですが簡単なあらすじと感想羅列。掲載順に書きます。


「忘却の里」押切蓮介

姥捨て山に捨てられた老人たちの末路。

おどろおどろしくて途中までは好きだ。日本昔話みたいな雰囲気も好き。最後アクションっぽくなってしまったのが好みじゃない。


「遊霊少女 凛」元町夏央

中学の図書室にあった江戸時代に描かれた絵巻物を見た雪。そこから抜けてきたという禿の凛に取り憑かれてしまって振り回されっぱなし。

早く話を進めてくれ。プールや教室で色仕掛けなんて主人公がかわいそう。せめて誰もいないところで色仕掛けをさせてあげないと、主人公はいたたまれません。友達のイクちゃんかわいそう。


「Cold apatment」財賀アカネ

私が好きなマンガの一つ。連載扱いだけど毎回主人公も話も違ってて、読み切りで絵はかわいい。動物が特にかわいい。第一回目以外はすべて好き。今回は小さな双子が殺人鬼の住処に入り込んでしまった話。ちょっとコメディだけどおもしろい。


「辻占売~盤古~」池田さとみ

毎号載るようになってから好きじゃなくなってしまった。それまでは楽しみだったのに。閑(しずか)というすべてを見通す能力のある辻占売りが、行き交う人の人生に助言をする話。未来を見る力のある盲目の弟・未信(みのぶ)と癒す手を持つ舞子が関わることもあり。

今回は特に印象が薄い。


「闇夜に遊ぶな子供たち」うぐいす祥子

親を亡くし孤児院に行くことになった兄と妹。しかしその孤児院には重大な秘密があった!

新連載。この人の絵は好きだ。しかし今回は話がなぁ。おもしろいときもあるんだけど、今回はありがちすぎた。

連載といっても連作なのかな? この次はどうなるんだろ。


「もののけ草紙~約束の座敷~」高橋葉介

手のひらに目の入れ墨を持つ、先見や妖怪を抑える力のある手の目。押しかけ弟子の小兎(シャオツー)とともに今日も旅をするなか怪異に出会う。

これもなー。連載当初のおてんばさの残る手の目が好きだったのに。そして初登場時の小兎のやんちゃ坊主みたいな感じが好きだったのに。さらに最近戦争ものばかりで重いし展開が同じできついです。


「機巧(からくり)童子」鯛夢

最強のからくり人形・万物万能丸の完全修復を目指す巫女のナツメと魂を持った犬張子人形・ハルヨシが、目を付けた人間の精神的な問題点を、万物万能丸のためにいただく話。

ナツメとハルヨシは狂言回しで主人公は毎回変わる人間です。前回は好きだったけど、今回はあまりに主人公が自分勝手でむかつきすぎて無理でした。うざい。もっと痛い目に遭ってほしかった。

コンセプトは好きなんだけどなー。



長くなったので残りはまた今度。

庵堂三兄弟の聖職[真藤順丈]

2009-09-26 11:57:48 テーマ:作者「さ」行
庵堂三兄弟の聖職
¥1,575
Amazon.co.jp
遺体で物を作る「遺工」を家業としている庵堂家。しかし家業を続けているのは長男のみで、次男は家業を忌み嫌って家を出ており、三男は感情が爆発すると罵詈雑言が止まらない病を抱えつつも長男を手伝っている。
何年かぶりに故郷に帰った二男は、依頼人の要求に応える長男の姿と、素行が荒れていてどうしようもなかった三男が見違えるようにまっとうに生きている姿を見るのだった。日本ホラー大賞大賞受賞作。

これは何が言いたいのかさっぱりわからない作品だった。


死体を加工して家具や小物を作るって実在の犯罪者にもありましたね。それは別にかまわないんだけど、作る描写もあまりない上に必然性も感じられない。

家業を通じて何かを得るとか感じるということはなさそうです。


三男はいつまでたってもヤンキーであって、汚い言葉が出てくる病気って言われても「ただの下品だからでしょ?」としか思えない。なんでいついかなる場合でも感情が抑えきれなくなると罵ったりするんですか。ただの子供。文で長々と汚い言葉を見せられるのは不愉快。そもそもそんな設定って意味あるの?


長男影薄い。せっかく核となる家業を継いでいる身なのに。


怖くなくてもおもしろかったらオッケーだったんだけど、おもしろくない。

グロかったら怖いっていうわけじゃない。


ただ文を繋ぐためだけに人物が出てきたような気がした。意味のないエピソードが多くて無駄に長い。もうちょっと絞って短編にしたらまだすっきりと読めたかも。

遺体加工のアイデアのみで長編に仕立てるのはきつい。


三男をメインにしたかったのかな。だったらよくわからないヤクザのエピソードとかなんだったの。あれもぶち壊して終わりじゃあまりにもなー。家業の重みとヤクザのつながり出したかったとか?

それにしてもいただけない。

赤ひげ診療譚[山本周五郎]

2009-09-05 17:08:58 テーマ:作者「や・ら・わ」行
赤ひげ診療譚 (新潮文庫)/山本 周五郎
¥580
Amazon.co.jp

長崎の遊学から戻ってきた保本登は、小石川療養所の「赤ひげ」と呼ばれる新出去定の下で医員見習いをするよう命じられる。保本は本当は幕府の御番医となるべく根回しをしてきたのに、行った先が小石川。不満を露わにし、最初は医員の証である鼠色の半纏すら拒んでいた。しかし患者や赤ひげとの間に起こる様々な出来事を通して考えが変わり、御番医になるより小石川で貧しい人のために働こうという決意を固めるのだった。

保本と患者と赤ひげとの交流を描いた短編集。



私はあまり江戸物が好きではない。一番最初に読んだ江戸物が宮部みゆきだったせいか、私にとって居心地悪いほどに健全で、嘘くさいほどまでにみんないい人だったからだ。

猜疑心が強くてひねくれている私としては「こんなの嘘っぱちだ」と思い、もやもやした気持ちがずっと残った。おきれいなだけの人間なんていねーんだよ。そしてそれは畠中恵を読んで、ますます自分には合わないと確信するに至る。


*補足しておくが私が読んだのは宮部みゆきの初期の江戸物である。「本所深川ふしぎ草紙」「霊験お初捕物帳」「幻色江戸ごよみ」あたりのことであり、「あやし」は好きだ。「ぼんくら」「あかんべえ」あたりは無理でした。

畠中恵のは今では江戸物ではなくマスコット妖怪ものだと思っている。



そんなわけで数少ないサンプルのみ頭において敬遠し続けた江戸物。

ちょっと前から今出版されているものよりも古い、名作と言われているものに手を出してみようと思ったのですよ。いろいろ読んでおもしろいものがたくさんありました。(感想を書いていないのは、普通のよりも難しいから。また、時間が経ってしまったために再度読んでからなら書くかもしれない。)


これはすごいおもしろかったです。

読む前の予想としては「エリート志向の強い主人公が、診療所内でのトラブルに対して有効な解決ができずに困っているところを、赤ひげがさりげなく(時には表に立って)助け船を出し、主人公に畏敬の念を抱かせ、主人公は診療所に骨をうずめる決意をするのだった」という流れになるかな、と思っていました。


まったく違った。


赤ひげは毎回助け船なんて出さないし、あからさまに情が濃いわけではない。小石川診療所に来る患者は病気以外にも問題を抱えている人たちばかり。活きが良くて潔い人好きのする人たちなんてほとんど出てこない。

過去の出来事によって精神が病んでしまったりして、危うい均衡で現在の生活を守っている人たち。

それをなんとかしたい、なんとかできるのではないかと奮闘する保本。しかし多くのことは彼の手には余る。

厳しい現実を見せつけられる保本に、普段無口な赤ひげも最後には声をかけて慰めるのだった。


この一声が押しつけがましくないし、保本に考えさせるような言い方なのが素敵。

患者も社会と生活環境におしつぶされそうになっていて、とても痛々しい。ほとんどがそこには何の救いも甘さもない。患者の病気描写も読んでて息苦しくなってくるほど。

だからたまにあるラストの光が効いてくる。書かれたのはだいぶ前だけど、まったく古さを感じない傑作でした。


赤ひげの過去がまったくわからなかったけど、他で明かされることはあったのかなあ。ちょっと気になる。

「ナルシスシン様」みかわ咲

2009-08-16 10:28:39 テーマ:マンガ
ナルシスシン様 1 (デザートコミックス)/みかわ 咲
¥410
Amazon.co.jp

ブログの頭にギャグマンガの紹介もしたいって書いてるくせに、一向に書かずに数か月。ブログ更新する気が起きたときに題材を決めているのがその原因。今回は期待をこめてこのマンガを書いてみる。


「ナルシスシン様」


コンビニ「ニコニコマート」の店員である田中信夫(通称シン)は鏡に映る自分に見とれ、世の女性はすべて自分を愛していると思っている超絶ナルシスト。思い込みの強い彼のせいでニコニコマートは今日も大騒動! 巻き込まれる店長や相田さんはため息と疲労と苦労の連続。さて、今日はどんな騒ぎが起きるのか。


ってな感じ。題名が示す通りの内容です。


田中信夫でシンと呼ばせる、というところでNANAを思い出しました。あれは信夫でノブだったけど、メンバーにシンもいるからさ。信夫って名前が嫌だったんだね……。



「お弁当は温めますか」と尋ねるだけなのに手を当てて決めポーズとったり、お客さんにウインクして「ひぃっ」と慄かせたり、工事現場のバイトで作業服を軍服っぽく着たり、とにか場を弁えずにひたすらかっこつけで、セリフがもったいぶってて気障なところがおもしろいです。もちろん本人はまた一人女性を虜にしてしまったと罪の意識に打ち震えるのでした。


この漫画には一話ごとの表紙がそのまま収録されているのですが、雑誌に載ってそうなアオリ(ポエム?)まで紙面に躍っているのが最高! 以下一部抜粋。


「世の女性を虜にしてしまうボクは、エデン一誉れ高き罪人…」

「オレのしなやかな肢体を最大限に美しく包む衣装…それが軍服。

漆黒の闇にキミの誘惑(テンプテーション)を感じながら、今日も愛を謳おう。」

「キミが愛を乞うのなら…ボクのお店にきてごらん。

痺れるくらいのパッションと、溢れるほどの愛をあげよう…」


この表紙からページをめくるとまた思わせぶりで大げさなポエムが!!

まるで河村隆一みたいな「キミ」「ボク」と相乗効果でねっとりくどくキモく、シン様酔いしれてる感に吹き出してしまいます。


1巻の最初の方はけっこういい奴だったんだけど、回が進むごとに鬱陶しさが加速。シン様たまに現実を把握してるんだけど、たいていすっとんきょうな世界の住人なので周りが迷惑を被るのです。マンガって現実味を帯びつつ非常識な方がおもしろいよね。

終わりの方が特に好き。


バレエ団作ったり鬼コスプレやったりしてるんですよ!


つっこみ役の相田さんが切れのいいパンチを繰り出すのも痛快。巻き込まれる店長はお気の毒。


シン様はコンビニの店員をやっている以外は謎に包まれているらしいです。まだあんまりプライベートが発覚していません。

2巻まで発売中。そろそろ出る頃なのにちっともお知らせないなと思って検索かけてみたら、どうも作者は長期療養中のようです。残念だー。作者の健康が一番大事なのでひたすらじっとり、壁の隙間からお待ち申し上げたい気分です。なんとなくシン様にはそれがふさわしい。

本日、サービスデー[朱川湊人]

2009-08-12 13:11:36 テーマ:朱川湊人
本日、サービスデー/朱川湊人
¥1,785
Amazon.co.jp

なんか貧乏くさいな、と題名を見て思ったことはお許しを。サービスデーは好きだけど大々的に謳われると拒否反応を起こしてしまうのですよ。普段見ているものはさらに見たくない。これは書き下ろし二編を収録した短編集。


「本日、サービスデー」

リストラ宣告を受けたサラリーマンの前に悪魔が現れて「あなたは明日が人生でいちばん幸運な日。なんでも思った通りになるから、うまく使って幸せな一日にしてね」と告げる。次の日の朝、本当に思った通りになって驚く。


途中までは予想通りの予定調和。でもオチが好き。こうしてきたか! うまくいきすぎだけど読後幸せな気分になったのでよかったです。でも悪魔の描写がなんだか恥ずかしいです。妙におっさんくさいというか、古いというか。



「東京しあわせクラブ」

知り合いが行っているキャバクラの女の子が、作家である自分のコラムを読んで貸してほしいものがあると言う。殺人事件の被害者である女性にレジを打ってもらったことがあるという内容だったのだが、そのレシートがどうしても集まりで必要なのだと。自分も連れて行ってくれるならと、貸すことを了解した。


これも話は展開が見える。でもそんなことは大したことじゃない。見えなきゃいいってもんではないし、見えるから悪いってものではない。

それよりも細部が好き。あの会にでてくるおじいさんとか、若者がいい味出してる。結局は不幸な事件の遺留品公開だから、下手すると登場人物がみんな同じに見えるのだけど、それぞれ特徴があって区別もしやすい。

実際の事件に手を加えたのであろう、話に登場する事件だとか。事件に関するアイテムも。最後の方には背筋がぞわっとした話でした。



「あおぞら怪談」

昔知り合いのアパートに出た手だけの幽霊の話。

ちょっとこれは内容の割に長く感じた。おもしろくないわけじゃないし、文章がうまいので読めるんだけど。ちょっと軽めに書いてあって楽しいです。いたずらも含めて。平山夢明の本に出てくるような幽霊じゃなくてよかった。朱川さんだもんね。



「気合入門」

一人でアメリカザリガニを釣ることになった少年の話。

最後あんな一文が来るとは思わなくて驚いた。あれは話に必要ではないと感じたし、安易にすぎるため個人的にはああくるのは好みではないけど健全な小説でよかったです。小学生の教科書に載ったらいいんじゃないかと思った。



「蒼い岸辺にて」
自殺した女の子が三途の川の渡し守と会話をする話。

……あらすじを簡単に書いたのは私ですが、我ながらひどい書き方。でもこれ以外書けない。きらきらしたものが吸い込まれていくっていうのはよかった。でもそれ以外は取り立てて心に残るものがないな。わかりきってる教訓はもういよ。さらっと書いちゃった感じ。それは三編目から思ってたけど。



全体的にはまあまあかな。忙しいのかな。もうちょっと力のある文章を前は書いていたような気がするんだけど。

文章が平坦で、心に引っかからずに流れていく。過去の作品の方がよかったな。「水銀虫」「赤々煉々」以前。

草祭[恒川光太郎]

2009-08-11 14:23:31 テーマ:作者「た」行
草祭/恒川 光太郎
¥1,575
Amazon.co.jp

どこかに存在する田舎、美奥を舞台にした幻想的な五編を収録した短編集。

「けものはら」

友人が戻ってこないと彼の父親から連絡があった。思い出したのは、幼い頃に友人と迷い込んだ不思議な原っぱ。友人はそこにいるのではないかと直感し、すぐさまそこに向かう。


人間が行ってはならない場所に入り込んで、現実に帰れなくなる。

よく考えてみればこういう話、恒川さんによくあるパターン。でもこれ好きだ。おもしろい。

友人が切ない。佐藤愛がほんの少し登場。



「屋根猩々」

自分のファンであるという少年が現れて、願いをかなえてくれると言う。その少年は学校に行っておらず、理由を訊くと「屋根猩々だから行く必要はないんだ」と答えた。


これもおもしろかった。軽めでユーモアがあって好き。「バカな男子にトラウマを与える100の方法」を書いた女の子が略して「バカトラ」と呼んでほしいとお願いするところや、「黒パン」と陰で呼ばれている由来を考えるところなんかがクスッと笑える。脅迫内容もおもしろい。

屋根猩々の設定自体よりも細部が好き。佐藤愛がこんなにぶっ飛んでると思わなかった。もっと見たい。



「くさのゆめがたり」

叔父さんと一緒に山で暮らしていた。薬草や山の知識をいろいろ教えてもらった。あるとき叔父さんを殺してしまい、それからは山に迷い込んだ僧侶とともに暮らし始める。


これは後味悪いよう。読むのがきつい。つまらないわけじゃないんだけど、あまりにもどん黒すぎて嫌だ。動物に変な薬飲ませないでください。

やたら長く感じたな。ちょっとまとまりがなくて冗長かな。でもまとめようもない気もする。



「天化の宿」

「クトキをしなければならない」と告げられて、とある民家で「天化」というゲームをすることになる。森羅万象、生き物の流転を考えながらするカードゲームのようなもので、すっかり夢中になってしまう。


これもおもしろかったんだけど、最後は尻すぼみ。残念だ。途中まではおもしろかった。淡い初恋や幼いながらに策略を巡らそうとするところがいい。でも中に入っているエピソードと天化は関係がない。そのせいで失速してしまったんだろうか。

関係ないけど「天化」というと封神演義を思い出す。



「朝の朧町」

現実のつらいことすべてを捨てて、長船さんと暮らしている。長船さんは箱庭を持っていた。


一番散漫な印象。だから何だと思ってしまう。だらだら続いてしまっただけのように感じてしまう。

雰囲気は好きなんだけど、それだけで最後まで行ってしまった感じ。「クサナギ」もちょっと強引。あそこで出さなくてもいいような。落ちが弱い。



全編共通の主役となる人物がいないのに、連作短編にするって大変そうなんだなと思いました。のびのびしたのどかな中に潜む不思議、隣にひっそり存在している異次元っていうのがいいなぁ。

現実には周りにいてほしくない身勝手なキャラ・佐藤愛はおもしろかった。二話続けて出てたから全部に出るものかと思ってたら、三話以降には出てなくてちょっとさみしい。でも主役では読みたくない。にぎやかしには最適。

くくしがるば[遠藤徹]

2009-08-02 10:31:38 テーマ:作者「あ」行
くくしがるば/遠藤 徹
¥1,470
Amazon.co.jp


これはあらすじなんて書けません。あらすじを書く意味がない。

趣味の悪いパロディやバカっぽいB級ギャグ、ダジャレが満載でおかしくて仕方ない。

話の筋はあるけど、正直どうでもいいと思う。見たものを石に変える魅力(能力に非ず)を持った皇女の恋と暗殺のドタバタを、バカっぽいギャグをノリで楽しむ本だと感じました。


地獄や幽霊、世界の終わりを感じさせたりスケールは壮大なはずなんだけど、バカギャグでそんなこと微塵も思わない。そこがいいところ。

ギャグはちょっと古臭いところがあるのが、意図的なのかそうでないのか不明だけど、また愉快。「姉飼」の渋谷や原宿を当て字で使うセンスに耐えられる人はどうぞ。 


「有間温泉駅前旅館皇女」、閻魔大王の娘と自称する語尾に「にゃ」がつくフリフリメイド服と猫耳コスの猫娘、「おいでませ、おいでませ、キューティーなニューカマー、イケテル即死成仏ボーイちゃん」、見つめあった二人が摩擦熱で火の子を生み、ラフレシアとの花火になる、「六畳の御息所」などといったものがバンバン出てきます。

ちょっとくどいので悪酔いする人もいるかもなぁ。


しかし最後の場面は、女子高生が一方的にしゃべり倒して進んでしまうのが残念。あのキャラ好きじゃない。あんな展開になるとは思わなかったからまだいいか。最初から最後まで趣味の悪いノリで突っ走ってくれるのは見事。

源氏物語のパロディが笑える。でもあれってあんまりパロディじゃないのかも。現代に即したらあんな感じかもなー。


あ、そうそう。題名はサンスクリット語で「くくし」は大地を、「がるば」は胎内あるいは子宮を意味するらしいです。大地を「地」、子宮を「蔵」と意訳した物が地蔵の和名の由来だそうで。へーはー。

でもあんまりこの話では重要じゃないよね。


同時収録は短編です。「おがみむし」

男に心臓を取られた女たちが奴隷になる話。これは普通だな。設定だけで終わっちゃった感じ。話に活かされているとは言えない。

倒立する塔の殺人[皆川博子]

2009-07-19 07:20:00 テーマ:作者「ま」行
倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)/皆川 博子
¥1,365
Amazon.co.jp
第二次世界大戦中の終戦間際の日本の話。阿部欣子は庶民であることから、裕福な子女の通うミッションスクールでは浮いていた。体の弱い小枝の面倒を見るうちに、小枝と親しくなる。ある日作業に行っている女子高の敷地内で火事が起き、小枝の敬愛する先輩が亡くなった。そしてさらに身元不明の遺体が発見された。 なぜ先輩は用もない塔に行ったのか。
小枝は欣子に、これに事件の謎が隠されているかもしれないと一冊のノートを差し出す。題名は「倒立する塔の殺人」。小枝は亡くなった先輩とジダラックと呼ばれている少女とで、小説の回し書きをしていたと言うのだが……。

以前皆川さんの小説を読もうとして挫折したことが何回かあります。でもこれは題名と表紙に惹かれて手を伸ばしました。おもしろかったです。


ミステリ小説の形態を取ってはいるのですが、それだけがメインではないです。これは第二次世界大戦終盤の女学校の、閉鎖的で甘美で禁断的な雰囲気が匂い立っていて、つい酔いしれてしまう。


いかにも女子高的なS、いわゆるシスターという関係の申し込み、憧れの先輩に対する執着、思春期独特の潔癖さと小さな優越感、時が止まったような自分と先輩との時間。育ちの良い子女ならではのあだ名のつけ方なんてうっとりします。


家は小さなお店をやっている欣子がヌーボーから、そのうちベー様と呼ばれたり(由来は失念)、設楽邦子がちょっとだらしない格好をしていて他の子と雰囲気が違っていることからジダラック。ちょっとお上品さが残っているところがいい。


入れ子になっている犯人が書いた小説部分もめまいがしそうなほど閉鎖的で息が詰まる。海外から来た神父が前任の神父の死を解き明かす話なんだけど舞台は同じ女子高で、ちゃんとトリックもあっておもしろい。

歪んだ感情と過去にとらわれて犯してしまった犯罪が暴かれるときも鮮やかで印象深いです。

早くページをめくりたくて仕方ない作品でした。

1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>
powered by Ameba by CyberAgent