ここに一冊の古い本がある。
かなり古い物らしく、表紙に書かれている文字はまったく読めなくなっている状態だ。
その上、本を開くのも躊躇してしまうほど、紙の劣化が激しい。
この本には一体何が書かれているのか?
恐る恐るページを開き驚いた。
それは、ある『特殊能力』について、事細かに書き記されたものだった。
『特殊』と言うからには、普通の人間にはない特別な能力の事なのだが、この内容が真実なのかウソなのか、それは誰にもわからない。
しかし、これを書いた人物は、その特殊能力の持ち主だったのではないか、という推測ができた。
それほどその特殊性について、あまりに鮮明かつ詳細な内容だったからだ。
だが、それを証明できることはできない。
作者名はおろか、この本が書かれた年代さえ、一切不明なのだから。
この本の中から、それらを調べることは不可能。
それらに関する記述は何処を探しても見当たらなかった。
では、この本はどういう意図で書かれたものなのだろうか?
能力を持たない者たちへ、その特殊能力を誇示するためか?
それとも、もっと他に理由があったのだろうか?
全てが謎に満ちている。
しかし、この本は現代において存在している。
実際こうして私の目の前にあるのだから。
この本が今ここに存在するように、ひょっとすると現代にも、特殊能力を持つ者たちが存在するのだろうか?
もし存在しているのであれば、その者達はどのように生き、それを知った者たちはどのように受け入れればいいのだろうか?
たった一冊の本に、吸い寄せられるように運命を委ねられた者たちがいる。
この本に、人生を翻弄された者たちが・・・。
幸か、不幸か?
その者達には、どのような未来が待ち受けているのだろう?
それは、この本だけが知っているのかもしれない。