私は夕日が差し込む教室で、生徒たちに算数
のテストをしている。ここは学習塾の教室の
中。私は小学生部の塾の講師をしている。夕
方になると学校が終わった生徒たちが、ここ
へ勉強するために集まってくる。
今の子供達ってどれだけ勉強しなければいけ
ないのだろう。本人たちはそれほど思ってな
くても、この子たちの親は、受験戦争に向け
小さいうちから強制的に子供たちを従わせて
いる。そんな過酷な状況の中、子供たちは厳
しい現実をちゃんと受け止めている。こんな
小さな身体で。
私が子供のころといえば、もう数十年前にさ
かのぼることになるが、今の子たちのように
小学生のころから塾に行く子供は、ほとんど
いや、誰もいなかった。
私の住んでいた所が、田舎だったからかも
しれないけど、みんな学校が終わると日が暮
れるまで遊んでいたものだ。そして遊びの中
からも多くのことを学んでいたような気がす
る。私の故郷は、山が近くにあるような本当
にすごい田舎町だった。
小学校、中学校での教室は、みんな同じ生徒
ばかり。卒業までずっと一緒だった。
だから、みんなとても仲が良かった。いじめ
なんてこともまったくなかった。
高校になると、さすがに受験しないと入学で
きなかったが、それでもほぼ同じメンバーで
高校生活も送ることになるのだった。