朝目覚めると、うっすら頬に涙が残っているのを感じた。
私は昔から同じ夢をよく見る。
実際は夢ではなく、本当にあったことをただ夢の中で再体験している、といったほうが正しいのだが・・・。
私は父親を高校生のときに亡くしている。
交通事故によるもので、あまりに突然の別れだった。
私は父がとても好きだった。
きっとよくいうファザコンの類だ。
だから余計に事実を受け入れることができずにいた。
そして、ことあるごとに父のことを思い出しては泣いてしまっていた。
涙があとからあとから溢れてくる。
そんな日々がずっと続いていた。
その日も私は、公園のブランコに座り、一人寂しく泣いていた。
そこへ、保育園の制服姿の男の子がやってきた。
その子の名前は「藤沢直人」
私の隣の家に住んでいる男の子。
当時、保育園に通う四歳の子供だった。
あどけない顔がとてもかわいらしく、家が隣同士ということもあり、よく家にも遊びに来ていた。
直人君には母親がいなかった。
父親と三歳年下の弟がいたが、お母さんは弟が生まれてすぐ亡くなったということだった。
だから、この子の家は男家族だったということもあり、私の母親がよく面倒を見ていた。
そして私もよく直人君と遊んだ。
私たちはとても仲が良かった。
直人君は母親がいなかったので、私のことを母親のように思っていたのかもしれない。
私に甘えてきたりと、とてもなついていた。
私にとって直人君は、年の離れたかわいい弟のような存在。
本当にかわいくて仕方なかった。