小学校のころは、普通の子供っぽくミステリーを読んでましたね(当時は推理小説というのが一般的でした)。
それもごくオーソドックスなやつ。たとえばホームズやルパン、それに少年探偵団とか。
もちろん、ルパンやホームズは子供用にリライトしたやつ。江戸川乱歩のやつも怪人二十面相が出てくるやつです。
まあ、他にも冒険小説やらSFやらもたくさん読んでるはずなんですが、よくおぼえていません(そういえば、ファーブル昆虫記やシートン動物記も好きだったかも)。
なんにしろ、とにかく怪奇とか謎とかが大好きだったんです。
でも六年生ころになってくると、ちょっともの足りなくなってきました。
そんなころに手を出したのが、江戸川乱歩ものでも、少年探偵団ものではなく、大人物を子供向けにリライトしたものだったのです。
当時はポプラ社から出ている江戸川乱歩のシリーズは後半が、二十面相のでない殺人を扱ったものだったのです(今はその後半部分は出されていないようです)。
まあ、子供なんてものはすぐにおとなぶりたいものですから、南野も「少年探偵団なんて読むのはもう卒業。やっぱり推理小説は殺人だぜ」とか思ってました。
いやあ、でもじっさい小学生には怖かったですよ、あのシリーズ。
とくに「魔術師」なんてなんですか、あれ? あれほんとうに子供向けにリライトしたんですかね?
だって、密室に現れる巨人やら、マジックショーに見せかけた美女公開解体、おまけに殺人の前に笛の音やら菊の花ですよ。(おぼろげな記憶で書いてるので、詳細は多少ちがうかもしれません)
今、発刊されていないのもなんとなくわかりますよ。
今考えると、犯人も動機もめちゃくちゃですが心に刻み込まれてしまいました。
そんな南野が中学生になるころには、自然ともっとすごいものを求めるようになりました。
そこで手を出したのが文庫本です。
文庫本にはなにやらおとなの香りがしました。
なにせ字がちっちゃくて、びっしり埋まってましたから。
そこで最初に手を出したのは、乱歩じゃありませんでした。
横溝正史です。
それもよりによって「悪魔の寵児」だったのです。
いやあ、これは中学一年生が読む本じゃなかったですね。
だって、冒頭で雨の日に雨男が心中の予告状を配って歩くんですよ。不気味すぎです。
おまけに殺したあと、死体を使って遊ぶというか、悪戯するというか……。
もう「斧、琴、菊」なんて目じゃないですよ。
おまけにサディストのばばあとゴリラみたいな大男がSMするとかもうめちゃくちゃですよ。(いや、これもおぼろげな記憶で書いているので、多少違う点もあるかも)
まあ、本作は世間一般の評価では、「本陣殺人事件」や「獄門島」、「八墓村」等には遠く及ばないとされていますが、南野の心にはばっちり刻み込まれました。
おかげで今上げた作品などをはじめとして横溝正史をかたっぱしから読みあさりましたね。
それにしても今考えればこう思います。
「悪魔の寵児」で横溝に嵌る中学一年生っていったいどんなやつだよ?
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この記事は南野の別ブログ「南の海のワナビ」の二月十日の記事と同じものです。