「8月はきらい、2、~哀しい惨劇~」 | づりむけてすべり台

「8月はきらい、2、~哀しい惨劇~」

あたしは



ママンに叱られた。



ママンは髪が長い。
金色で、とてもきれいなのよ。



あたしは、だから
きれいなものが好き。



夕日も



星の空も



風の見えない色だって
きれい。















ママンが怒ってる。


















ママン「ねえ、チカコちゃん、何回言わせんの?

まーた猫、ひろってきて!いいかげんにしやしゃんせ!

パパね?黒幕は。… チカコちゃんは猫ちゃん 捕まえらんないでしょ、まったく もお…

パパも… チカコちゃんには甘いんだから!

うちにはもうたくさんいるでしょ、そんなに飼えないのよ

餌代考えなさい

エンゲル係数習った?チカコちゃん…」



「ママン、お願い。

飼いたいの…

名前もつけたんだよ。ひろしっていうの

目が碧いからブルーアイズもよかったんだけど

ここは日本だから…」



「足立区な」



「でも、足立区だけど…

ママンの髪はきれい

金色だよ!」



「まあな

脱色してっからに」



「きれい、ママン」



「だから、脱色だし

あと、ママンてなに?

ママでいいよ。ん、はいらなあから。

近所で笑う人もいるし」



「ママンの髪は、

ナウシカに出てきたあの

金色のあれみたい」



「ママは、レディースやってたからね

チカコちゃんは ナウシカ好きねえ

相変わらず」



「らん

らんらら らんらん

らん

らんらら らん!

ら、らん

らんらららんらんらん

らららららんらんらん

らんらんらんらん

らららららー

ら」



「うるさいなあ…

わかったわよ…

飼っていいわよ、その代わり、8月20日までに宿題やんなさい。絶対に」



「ママン、いや!

いやよ!やめて!
ひどいわ

宿題と ひろしは別よ」



「はいは~い、いいから~

もう、毎年毎年、8月30日あたりに 泣きながら宿題るのはだあれ?

今年は やあよ、ママは

いいかげんにしやしゃんせ!

朝顔、枯らしたし

お天気書いてんの?

絵日記は?えにっき!

ラジオ体操、1日しか行ってないよね?

新聞の切り抜きは?

読書感想文って、本をまず読まないから、書けないじゃん?」



あたしは
ひろしを抱きしめる。



読書なら、
コクトーがいいわ



ただ、まだあたしには難解なだけ



ひろしは



んぎゃあああ
と、暴れる。



ひろし



少し臭いから
明日洗ってあげる



今日も夕暮れね













8月なんかだいきらい。