四駒漫画(108):列車の光景-2
文庫1(昭和21年頃)
『蒸気機関車が引く列車です。戦後の混とんとした時代の客車の中を描いています。通路にも大きな荷物を持った乗客・買い出しでしょうか、で混んでいます。大きなリュックと映画の「虎さん」が何時も持っていた旅行用の皮鞄を持つた、太ったオジサンが、リュックの上に腰かけ皮鞄を抱え込み、通路に座りこんで、眠りこけています。そのおじさんが凭れてかかっているボックスシートには、サザエさんの家族:お父さん、マスオさん、カツオ君、ワカメちゃんとサザエさんが座っています。サザエさんは読書中、お父さんはカツオ君とワカメちゃんをにこやかに見ています。カツオ君が「おーさか」と、これに合わせるようにワカメちゃんも「おーさか、おーさか」と叫んでいます』
『二人の「おーさか」という声を聞いて、オジサンは飛び上がり、「えつ!!大変だ」と驚いて飛び上がっています』
『オジサンは右手に皮鞄を左手には大きなリュックを持ち、混雑する通路の乗客をかき分け「おろしてくれ」と出口に向かっています』
『ホームに降り立ちました。列車は出て行きました。吊り下げられた看板の駅名を見ると[ひろしま]と書いてあります。それを見てオジサンは「えっ、ちくしょう、ひろしまか―」とがっくりです』
サザエさんの4駒漫画です。
昭和21年頃の話です。
第2次世界大戦も終わった頃の車内の様子で、蒸気機関車が引いている列車の客車です。
終戦後食べ物がありませんでした。金があっても物が不足している。
食べる物がない。
農家には、米やその他の穀物、野菜も持っていました。
都会の人は込み合う列車に揉まれながら買い出しに出かけていました。
この頃の物の価値は、売り手と買い手の個人的な価値判断で決まっていたようす。
だから、買い手の高価な着物も、売り手の決める勝ちで食物に変わってしまいました。
こうして買ったものも、国家権力は横暴で、買い出しの乗客を警察が取り締まっていました。
列車の中を巡回したり、駅の改札口辺りで待ち伏せして、荷物を点検したりしていました。米でも持っていると没収されてしまいます。
列車の中にも、この漫画に書かれているように、外地から引き揚げてきた元兵隊さんたちも沢山いました。
何やら沢山の荷物を持った客で列車の中は混雑していました。
そんな乗客の中、席にも座れず、通路に荷物を置いて、その上に座りこんだオジサンは疲れてしまい、ついウトウトしてしまった、その時、自分の目的地を言っている子供達の声がしてきました。
もう、停車しそうです。こうなったら当人は慌ててしまいます。
大きな荷物を纏め、降りなければなりません。
混雑する通路をかき分けるように降りてみたら、目的地と全く違う[ひろしま]。
この人の怒りはどれほどだったでしょうか?
相当腹立たしかったでしょう。
仕方ない、次の列車を待ちましょう。
降りたことで警察の手入れを避けることが出来たかも知れません。
この漫画で、終戦後、母親が汽車に乗って、農家まで買い出しに出かけたことを思い出しました。
着物も沢山持っていたわけではありませんが。
大事にしまっていた着物を、買い出しの度に一つずつ持って出かけていました。
警察官に捕まり、買い出した物を咎められると、警察官に激しく抗議、何故このようなことしなければならないかを、縷縷、説明し取り上げられることはなかったそうです。
聞き入っていた警察官は涙を流し「いいよ、お母さん持って行って」といったそうです。
何時の世でもモラルが、国家権力を越えるのです。


