一会
テーマ:小説風邪を引いたかな?
体を震わせながらそう思っていると、キュウも大きく体をふるって僕のジーパンに水を飛ばした。
空を見る限りでは通り雨のようなのですぐやむのだろうが、さて、と考えていると、ふと首筋に暖かさを感じたような気がして。
隣に女の人が立っていた。
その人は端整な顔立ちで妙に色白く、大きな目で前を見ていた。
内心ひどく驚いたが、そんな様子は見せないように気を使いながら、また目線を空に向けた。
きっと、彼女も雨宿りだ。いや、普通にバスに乗るために待っているだけなのかもしれない。無言のまま、意識をその人に向けながら、目線を空に向けながら、いつまで降るんだろうと考えていると。
太陽の光が強くなったかなと思ったのとほぼ同時に雨がやんだ。
すると、にわかに音が蘇った気がした。
雨もやんだのでとりあえず歩き出した。
ふと後ろを振り返ると、まだ女の人はバス停に立っていた。
1分ほど歩くと、後ろからバスが追い越し、通り過ぎていった。
水溜りの水をかけないように徐行してくれたようだ。
家に着いたがなんだか不思議な気分だった。なんとも落ち着かない。この感覚はなんだろう。頭をよぎるのは、あのバス停にいた女の人の事ばかりだ。夜になり、ごはんを食べ、お風呂に入り、布団に入っても考えていた。
あの女の人はいつからいたんだろう?
雨で足音が消えたんだろうか?
人見知りのキュウが吠えなかったな。
そういえば濡れていたっけ?
それこそ、狐に化かされたかな?
そして、やっと眠りにつく寸前で気がついた。
歩く僕とキュウを追い越していったバスにあの女の人が乗っていなかったことを。






