2007-04-20 01:37:07

一会

テーマ:小説
write : S.T

風邪を引いたかな?


体を震わせながらそう思っていると、キュウも大きく体をふるって僕のジーパンに水を飛ばした。

空を見る限りでは通り雨のようなのですぐやむのだろうが、さて、と考えていると、ふと首筋に暖かさを感じたような気がして。


隣に女の人が立っていた。


その人は端整な顔立ちで妙に色白く、大きな目で前を見ていた。

内心ひどく驚いたが、そんな様子は見せないように気を使いながら、また目線を空に向けた。

きっと、彼女も雨宿りだ。いや、普通にバスに乗るために待っているだけなのかもしれない。無言のまま、意識をその人に向けながら、目線を空に向けながら、いつまで降るんだろうと考えていると。


太陽の光が強くなったかなと思ったのとほぼ同時に雨がやんだ。


すると、にわかに音が蘇った気がした。


雨もやんだのでとりあえず歩き出した。

ふと後ろを振り返ると、まだ女の人はバス停に立っていた。


1分ほど歩くと、後ろからバスが追い越し、通り過ぎていった。

水溜りの水をかけないように徐行してくれたようだ。


家に着いたがなんだか不思議な気分だった。なんとも落ち着かない。この感覚はなんだろう。頭をよぎるのは、あのバス停にいた女の人の事ばかりだ。夜になり、ごはんを食べ、お風呂に入り、布団に入っても考えていた。


あの女の人はいつからいたんだろう?

雨で足音が消えたんだろうか?

人見知りのキュウが吠えなかったな。

そういえば濡れていたっけ?

それこそ、狐に化かされたかな?


そして、やっと眠りにつく寸前で気がついた。


歩く僕とキュウを追い越していったバスにあの女の人が乗っていなかったことを。

2007-04-08 00:13:04

散歩

テーマ:小説

write : T.T



散歩をしていた。


一般的などこにでもいるこどもがそうそう散歩なぞするはずも無いと思うかもしれんが、

何も時間を持て余しきっている老人のように一人でブラブラと目的地もなく歩き彷徨うわけが無く、

かといって健康のためにわざわざ時間を割いて中年太りが気になりだした主婦の日課のさして上位にもなりそうもないウォーキングなんぞでもなく、

ただの犬の散歩をしていた。

それもこれも近所のガキが捨て犬を拾ったのはいいが、

どうも世話が面倒になったのかはてさて犬に飽きてしまったのか、

押しに弱い母が近所のガキの母に押し付けられてきた犬の世話係に抜擢されてしまい、

夕暮れの散歩が日課にまで成り上がってしまっていた。

利口な犬なのか躾は基本出来ていて妙に人懐っこく世話係をやっているせいもあり、

一番接する機会が多く情も移ってしまい今では家族同然のキュウだ。


と、いつだったかのある日、

その日は太陽が出ているにもかかわらず雨が降っていた。

学校が早く終わり、

宿題もすませてしまいやることもなかったのでキュウの散歩に出ることにした。

散歩はコースが四通りあり、といっても二通りとその逆なだけだが、

たまにはちょっと遠出でもしてみようといつもの歩きなれたコースを途中から外れていった。

慣れないことはするもんではないとはよく言ったもので、

いつもの散歩コースを歩いていればもう家に着いていただろうに、

さっきまで晴れていたのに…といっても太陽は出ているのだが、

雨が降り出してきやがった。

そんなに珍しくもないがかといって頻繁にあるわけでもないお天気雨だが、

確か狐の嫁入りだったっけ?

とか思いながらちょうど近くにあったバス停で雨宿りをしていた。


この時から何か嫌な予感がしていたんだ。

何故か背筋がゾッとした。




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