「あ、お邪魔しています。私メック君のゲーム友達なんです。今日はゲームキャラクターの格好をしてきたんですよ?あ、腕は義手なんです。強そうでしょ?」
肩に生えたとげなんかは特殊メイクなんですよ、とすかさずキムラさんは対応する。
すげぇ、よくも短時間でそこまで当たり障りのない回答がでてくるもんだ。
「あらぁ、義手なの?生まれつき?」
「そうなんですよ~。でも生まれたときからこうだったんで、ぜんぜん大丈夫です。まぁ、この義手は大きすぎて使いにくいですけどね~」
ふつうに会話してるし。
後ろの少年そっくりの女の子らしき子たちも興味津々だ。
「最近外に修行に行ってるときに知り合ったんだ。すごいでしょ?」
少年が言う。
修行って、一体普段から少年はなにやってるんだ?
やっぱ鍛えてんのかな。
「あら、そこの方もゲーム仲間?あと、この人もコスプレ?」
わ、この世界にもコスプレって言葉があるんだ。
いや、そういえば今思ったけど、名前からして外人だよな、みんな。
もしかしてこれって自動的にみんなの言葉を翻訳されたのを、俺は聞いているのかもしれない。
でも、どうやって翻訳するんだ?
魔法とか?
そんなことを考える中、お母さんらしき人物はレーヌさんとばあさんをみた。
「あたしは、この子のおばあちゃん。今この子が遊びに来てくれているの」とばあさんは俺の方に体を傾けた。
いやいや、目の色とか違うから、そんな嘘すぐばれるだろ、と思って、ばあさんの顔を見ると青かった目が真っ黒。
いやあぁ、魔法って怖いぃ。
あ、いかん、顔には出さないようにしないと。
「それでこの方は旅をしている方だそうで、今晩泊まるところをさがしているそうなんじゃ。しかしあたしの家は狭くてのう。この方を泊めてあげられないじゃろうか?」
ばあさん今度はレーヌさんについても語りだしたぞ。
「あら、そうなの?」
嘘だなんてこれっぽっちも思っていない様子でお母さんはレーヌさんをみる。
「そうなんだ。すまないが泊めてもらえないだろうか」
そうレーヌさんが言っていると、お母さんはレーヌさんが持っていた槍をじっとみた。
今槍はレーヌさんの横に転がしてある。
「あぁ、これは護身用です。歩いて旅をしているので」とレーヌさんは頭からかぶっていた真っ白い布を脱ぎ、槍の刃の部分をそれで包んだ。
そして最終的にどこかぎこちない笑みを浮かべる。
まぁ、レーヌさんは極度の猫嫌いみたいだもんな。
だいぶ無理してるんだろう。
しかし、レーヌさんは不思議な髪型だな。
なんていうか昔の人みたいだ。
くくった髪をお折り返してる、っていうか。
斬新だな。
それにしても冷たい顔つきなのが隠せてないぜ。
「そうですか。うちは部屋がいくつか余ってるので、どうぞ泊まっていってください」
お母さんは目を細め口の端をあげた。
あ、猫の笑顔ってこんな感じなんだ。
「わぁ、この人形暖かいよ!」
「それに柔らかい!」
「あ、背中にかっこいい模様がある!」
あ!ボーニンたちが、二匹の猫さんたちの手に!
ボーニンとかりきんちゃん、えらい汗だ。
「こら!トト、ノノ!その人形は・・・・・・」
少年言葉に詰まる!
俺の・・・・・・とはいえないよな。
「それは私のです。そのお人形高かったんですよ」
にっこり笑顔でキムラさんが言った。
とたんその横に立っていた少年のお母さんの顔が一瞬だけだったけどものすごく険しくなる。
女の子たちはぱっと手を離し直立した。
「あ、えっと、トトとノノ。僕の妹」
少年が紹介すると「よろしくです~」と、二人は軽く頭を下げ、そそくさと、俺たちがいる部屋の横にあった扉に各自はいっていった。
「あ、母さんお帰り」
そんな二人のはいっていった扉の向かいにもまた二つ扉があり、その扉のうち片方からまた顔がでた。
そしてその顔は俺たちを一別すると、すぐに引っ込む。
最初この家に入ったとき、少年がその部屋に入って誰かと話をしていた。
そのときの話し相手が今の人物だろう。
やっぱり顔は少年にそっくり。
でも、模様が全然違うな。
お母さんと、さっきの子は前髪みたいな黒くて長い毛が生えていて、お母さんは黒と白の毛。
少年の妹の一人は黒と白、もう一人は真っ白な毛色。
少年だけが全身真っ黒みたいだ。
「それじゃあ、私は夕飯の準備でも」とお母さんが手首に下げていたものを部屋の入り口近くにある棚の上へ置いた。
俺の視線の先には、大きな長机が見え、その奥にはキッチンらしきものや冷蔵庫っぽい機械が見える。
この居間らしき部屋とキッチンはつながっていて、ここから料理風景を見ることができるようだ。