Another やまっつぁん小説

 このブログでは高1の描く小説をメインに載せています(主にファンタジー)。キャラ紹介などイラストも載せていきます。感想、アドバイスなどコメント気軽にどうぞ!


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 そろそろ町のみなさまが起きてくる頃合いである。
 そのためか道を歩く先生は幾重にも頭に手ぬぐいやらタオルを巻き、その先生の周囲を人間に化けた狸と狐が取り囲む事となった。
 少し異常な見た目をした怪しげな集団が町の通りを歩き、にわかに賑わい始めた通りは再び静まり返った。
 俺は少し人目を気にして、その一団から少し離れた所を歩く事にする。
 しかし一団と離れて歩くとなれば話し相手がいないので、俺は暇つぶしに各狸や狐達の化け姿を眺めてみる事とした。
 まず目つきの悪い”いー”とかいう狐はさっき地下で化けた時と同じような長身の男の姿に変わっている。
 耳に巻いていた青いスカーフは頭に無造作に巻いていた。
 そしてその弟である”あー”という雄狐はなにやらガキ大将のような体型をしている。
 年は中学生くらいか、半袖Tシャツに短パンという何とも子供らしい格好だ。
 ツンツンと立った髪は狐の時の面影があり、どことなく可愛らしいが、その細目はあまり可愛らしいといえるものではない。
 そして彼らの母、”すー”はというと彼女もまた狐の時の面影が残る格好をしていた。
 狐の時と同じく、彼女の髪はくるくると渦を巻き、みんなのお母さんといった容姿である。
 割烹着のような服に、茶色いズボンと、まるで食堂で働いているような出で立ちだ。
 そしてその“すー”の娘、末っ子の”さん”は、確かに化けるのが下手なようだった。
 幼い顔にまん丸の目、なかなかに可愛らしい姿に変身できているのだが、問題はその髪型である。
 狐の時、耳の長さが左右で違い、左の耳が短く、右の耳が普通の長さだったのだが、人の姿を持ってもその特徴は明らかだった。
 というのも髪がとても大きくはねているのである。
 頭に長い耳が生えているかの如く髪がはね、特に頭の右側のはねは大したものだ。 
 あのような寝癖はどんなアクロバティックな寝方をしたらつくのか、と思わず聞きたくなるような髪型であった。
 さて、では他に変な頭がいないかといえばそういうわけでもない。
 俺の目は今時芸人くらいでしか見ないマッシュルームヘアを捉えた。
 さらさらの黒髪は、丸い頭にフィットし、意外と似合っている。
 彼はあの表情からして狸の”とろわ”だろう。 
 人間に化けてもあのやる気のなさそうな目つきは変わっておらず、どこか謎めいた雰囲気も健在だ。
 ただ、その黒の長袖ハイネックに白ズボンという暑苦しい格好はやめてほしい。
 それに比べ彼の前を歩く”あん”の涼やかな格好といったら!
 彼女は高校生くらいの女の子の姿に化け、水色を基調とした、リボンの飾りが愛らしいワンピースを着ている。
 長く垂らした髪は少しウェーブしており、どことなく高級感が漂う。
 そして彼女の横に並んで歩くのが”どぅー”。
 人間に化けても彼と”あん”は顔がそっくりだ。
 彼は”とろわ”と似たヘアスタイルだが、さらさらマッシュルームではない。
 彼の頭はふんわりしており、どことなく狸の時の名残があった。
 カッターシャツに黒いズボンという出で立ちは学生のようで、彼もまた高校生くらいに見えた。
 こうして俺は一通り人間に化けた狐と狸を見ていったわけだが、みんな特徴的で、どこか動物の姿の時の名残があった。
 名前も特徴的だし、すぐに誰が誰だか覚えられるだろう。
「おい、青年。ついたぞ、ここが民宿になるのじゃ」

 :

 海岸に立つ廃墟のようなその建物は俺が目覚めた場所であった。
 そのほったて小屋は外から見ると何とも不気味であるが、実際中にはいるとなかなか快適である。
 以外としっかりした作りになっており、畳も綺麗な色をしている。
 どうもこの建物が俺の家兼民宿になるようだ。
「それじゃ、わしは用事があるからの。狸どもにはここの掃除を任せておいた。ゆうすけの事も、のっぺに任せてある。おぬしは家の横にある倉庫へ向かいなさい」
 と言うと先生はすたすたとどこかへ去って行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってください、倉庫に行ってどうするんです?」
「行けばわかる。わしは忙しい」
 引き留める俺には目もくれず先生は一人、今来た道と反対方向、つまりは先生の根城であるビルとは正反対の方向に去って行ったのである。
 仕方ないので俺は先生に言われた通り、家の隣に建つ物置のような倉庫へ足を向けた。

 :

「こんにちは、オーナー」
 薄暗い倉庫を覗いた俺のすぐ背後で声がした。
 俺はいつぞやにも出した、蛙が潰れたような呻き声を思わず漏らす。
 振り返った先には、諸悪の根元、リョウと名乗る男の姿が。
「おまえ!」
「あらら、何をそんなに怒ってらっしゃるんです?住む場所保証付き、あなたにぴったり、言った通りの仕事じゃないですか。それにどんなに怒っても、元の家には帰れません。あなたの荷物は既にここに運んであるんです」
「何?!」
 それは些か仕事が速すぎやしないか。
 こいつと話を決めて今までまだほんの数時間しか経っていない。
 しかもこいつと話したのは真夜中、人々は寝静まる頃合いである。
 そんな時間に引っ越しセンターが動いているとは思えない。
「私には独自のルートというものがあるのです。その手を使って引っ越しも済ませましたし、ここに物資と食料も運び込みました」
 彼は倉庫の入り口を指さす。
「中、見てみてください。ちゃんと食材を運び込んでありますから」
 俺はいかにも不機嫌そうな顔で奴を睨んだが、奴さん全く意に介さない。
 仕方なく俺は倉庫の中を覗いた。
「壁の右側に電気のスイッチがありますよ」
 そうか、そういえばこの男は暗い中でも見えるとか言っていたな。
 だから倉庫は暗いままだったのか。
 俺はそんな事を考えながら、手探りでスイッチを探し、電気をつけた。
 そして俺の目の前に現れたのが、いくつも積まれたジャガイモの箱や、ネットに入った大量のタマネギ。
 その他ニンジン、米のタンク、野菜の種、畑用の砂、その他畑を耕したり野菜の世話をするためのグッズがごろごろ転がっている。
 見た感じ道具や箱はどれも新品のような気がする。
 この倉庫自体はとても汚れており、砂があちこち積もっているが、食料や道具は全く砂を被らず、なおかつピカピカではないか。
「どれも新しいものを仕入れてきたんですからね、感謝してくださいよ?」
 ただ俺は何か引っかかった。
「これはいつ運び込んだんだ?」
「ついさっきですけど?それが何か?」
 この倉庫は家と一緒に、俺がここに向かっている時から見えていたはずだ。
 しかし、倉庫の周りには誰もいなかった。
 一人でこれだけのものを運び込めるはずがない。
 しかもこの男はすっきりしすぎなほど痩せ細っているのだ。
 一体どんな手を使った?
「ま、ここは変な臭いがしますし、さっさと外に出ましょうよ。それにあなたには仕事があるんですから」
「仕事?」
 俺は半ば強引に倉庫の外に閉め出される。
 奴が消したのだろうか振り返ったときは既に倉庫の電気は消えていた。
「まぁ、立ち話もなんですし、そこにベンチがありますから座りましょう」
 背中を押され、俺は彼と並んで、家の脇にある木のベンチに腰掛けた。
「それで、仕事ってなんだ?」
 もう働くのか、と心の中で溜息を付きながら俺は聞いた。
 まぁ、ワガママは言えない。
 仕事をしに来たのだから働くのは当たり前である。
「オーナー」
「ふん?」
 オーナーねぇ、悪くない響きだな。
「あなたにはこれからお客様を迎えに行ってもらいます」
「客?もう客がいるのか?」
 今日ここで民宿を開くと決めたばかりというのに既に客がいるとは喜ぶ前に恐ろしい。
 何の準備もしていないのに、客を迎えられるわけがないではないか。
 俺は民宿という仕事については何一つ知らないというのに。
「あなたの仕事はまずこの一夏この民宿で働くことです」
「一夏?」
 もうばっちり期限が決まっているのか。
「えぇ、あなたは住む場所、食べ物、生きるためのものは保証されます。しかし、給料はありません」
 脳の活動が一瞬停止した気がする。
 俺たちの間を一陣の生暖かい風が吹き抜けていった。
 こやつなんと言った?
「もう一度言いますが、給料は・・・」
「ないとはどういう事だ!」
 それでは映画も見られないし、マンガや雑誌も読めないし、ゲームも買えなければ、遊びにも行けない、おやつも買えない!
「えぇ、それはですね。あなたの借金を全て私どもが払って差し上げたからです」
「そんなもの頼んでいない!」
「でもどうせ、働いたお金は借金返済に使うでしょ?あなたが滞納したお金、全部合わせると結構な額になりました。ここで働いたお金だけじゃあなた生計を立てられない状況ですよ?」
 俺は奥歯を噛み締めた。
 何か大変まずい状況になっている気がする。
 俺はこの男の手の平で踊らされている気がする。
 もう既に踊り狂っている気がする。
 全てが奴の思うがままではないか!
「悪いようには致しませんからご安心を。普通に夏を過ごしつつ、ちょっとした仕事をすればいいだけなんですから」
 こいつの言う普通が俺の思う普通と一致しているかについて、大変疑問だが、ここはグチグチ言ったところで仕方がない。
 どっちにしろ、この地にやってきた時点で何か働く事にはなっていたのだから、とりあえず仕事について話を聞こうではないか。
「それで、そのちょっとした仕事というのは何だ」
 まさか重労働ではあるまいな。
 俺は力仕事が苦手である。
 計算事もあまり得意ではない。
 つまりは働くのに向かない体質・気質である。
 こんな俺にできる仕事は限りなく数が少ないぞ、リョウ氏。
「あなたにやってもらう仕事というのは、この民宿での接客業、それからこの建物の維持、まぁ、掃除とかですか」
 そしてやつは、狐たちの世話や、妖怪たちに何かお願いされたら人間の身では絶対に処理できない難問以外は引き受けるようにしてくれ、とだけ言った。
「今のあなたには残念ながら頼まれた事を断る資格はほぼありませんからね」
「嫌な言い方だな」
「事実ですから」
 おまえに仕事を断る資格はねぇ!とは、なかなかに傷つく台詞である。
 まぁ、そんなこったろうと、思っていたのでダメージはあまりないが。
「でも、そんなに悲観する事はないですよ。妖怪方からの頼まれ事は僕の管轄外ですから、もしかするとお小遣いがもらえるかもしれません」
「何?!それは本当か!」
 おぉ、これで俺の暗雲立ちこめる未来に一筋の光が射した。
 これでミントガムと一夏のお別れをしないですむ。
「物資やら食糧の補給は僕がやりますし、料理の方も”すー”さんがやってくれるという事ですから、あなたは仕事がない間はのうのうと暮らしてただいて結構ですよ」
 何とも棘のある言い方だな。
 のうのうと、と言われても仕事がなけにゃ、のんびしする他ないではないか。
「まぁ、しばらくはあなたも忙しいでしょう。用があれば私の携帯に連絡を、あなたの携帯には既に番号入れてありますから」
「携帯?俺の携帯は・・・」
「携帯の料金も払っておきました」
 にんまりと笑う男。
 慌ててポケットを探り、携帯を出す。
 普段と変わらない待ち受け画面だ。
「あなたの携帯はちゃんと通信機器としての機能を復活しておりますからご安心を。あなたの人間の友達と連絡する手段もいろいろとご入り用でしょう?急に引っ越したわけですし」
 そういえば確かにそうだ。
 俺はつい先日まで住んでいた家に戻る事はもうないのだ。
「まぁ、ここには住んでいるものがものですから、他人を呼び寄せたりしないようにしてくださいね」
「無論だ」
 こんな所に友人を呼ぶはずがないではないか。
 俺がここで、魑魅魍魎達と暮らしていると知れたらこれからの学校生活に大いに支障を来してくれる事だろう。
 だいたい家に呼ぶほど仲のいい奴は一人を除きいない。 
 しかもそいつは今海外に旅行中って話だ。
 呼ぼうにも呼べない。
「それでは、お客様はこちらの喫茶店でお待ちいただいてますんで、部屋を見た後にでも迎えにいって差し上げてくださいよ」
 と彼は簡単な地図が書かれた紙を差し出した。
 というか簡単すぎる地図である。
 今いるこの建物と道と目的地らしき丸しか書かれていない。
 これだけの地図で大丈夫か?
 しかし、ここらは例のゆうすけ君のドラマと同じような町で、どこかで見た建物がたくさんあった。
 きっとドラマのロケ現場がここだったのに違いない。
 6年ドラマを見続けた俺だ、きっと迷って困る事はないだろう。
「では、私は他に仕事がありますんでね」
 彼はよっこらしょ、と席を立ち、町の方へと去っていった。
 俺は特に聞く事もなかったので彼の後ろ姿を少し見送り、建物内へと入った。
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