Another やまっつぁん小説

 このブログでは高1の描く小説をメインに載せています(主にファンタジー)。キャラ紹介などイラストも載せていきます。感想、アドバイスなどコメント気軽にどうぞ!


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(先日更新した非凡レール 前編 の後編です。文芸部にもっていったもの。ただ今続き執筆中)


 俺がゆうすけ君達の事を懐かしんでいると、コンコン、と戸をノックする硬質な音が部屋に響いた。
 こんな夜中に何の用だ。
 壁に掛かった時計を見ると時刻は0時前、そろそろ眠った方がいい時間だ。
 俺はできるだけ物音をたてないように立ち上がり、ドアへと近づく。
 もしかすると家賃とか、その他滞納しているなんたら金やなんたら金の取り立てやもしれぬ。
 
 俺は恐る恐る戸についた覗き穴を見た。
 そして俺はドアの前に達人物の顔を見て、思わず悲鳴を上げそうになる。
 そこにはひどく顔色の悪い、頬のこけた、見知らぬ男性が立っていたからだ。
 その男はきょときょととドアに視線を投げかけた後、フッと覗き穴を見た。
 俺の片目からの視線と彼の視線がばっちりと合う。
 途端男は口の端をにっとつり上げて笑った。
 俺はあまりの不気味さに腰が抜けてしまう。

「な、何だ、あの男!」
「あぁ、僕はリョウといいます」
 俺からは蛙が潰れたらこんな声が出るんじゃないかという声が出た。
 要するに「ぐぇ」と呻いた。
 振り返るとさっきの縁起の悪そうな顔をした男が座り込み、勝手に俺の部屋のテレビをつけているところである。
 ついたテレビからは今日5歳の子供が事故にあったというニュースが流れていた。
 車にひかれたようだ。
 事故現場が俺の通う大学近くの団地である事に少し驚く。

 しかし、男がすぐさまチャンネルを変えた。
 すると画面にいきなり、妖怪はいるのか?!というテロップが移った。
 どこかでみた芸人が薄暗い道を歩いている。
 どこまでも田んぼが続いているその道は、ゆうすけ君のいる街の情景そっくりだった。
 俺は俄然興味が出て、男への警戒心を捨て去りテレビへと近づく。
 男は嫌みな笑みを浮かべたままテレビを見つめていた。
 番組では芸人が恐々とした足取りで画面奥へ消えていき、場面はスタジオへと移動してしまう。
 どうもタイミングコーナーが終わってしまったようだ。
 しかも画面下部にはスタッフ達の名前のテロップが流れ、番組の終わりを告げている。
 しまった、あんな番組してるなんて知らなかった、と思った時だった。

 不意に部屋中の電気が消え、テレビもぷつりと消えた。
 俺はそこでようやく目の前の男に警戒心を抱く。
 そして、それと同時に恐怖も足下から這い上がってきた。

「あなた、妖怪に興味がありますでしょ?」
 暗がりにぼんやりと光る男の目。
 俺は息を飲んだ。
 どうも奴さん、最初から俺が妖怪に興味があると知っていた様子。
 だからあの番組を見せたのだ。
 いったい何者だ、こいつ。
 どうやって部屋に入った?
「あなた・・・いや、田中さん。田中さん今生活に困ってらっしゃいますね?今も日付が変わった途端電気が止まりましたし」
 俺は驚愕した。
 目の前の妖怪めいた男は俺の名前まで知っているではないか!
 しかし電気を止めたのも目の前の男の魔力かと思っていたが、それは違ったようだ。
 どうも日付が変わってしまったのを皮切りに電気が止まってしまった様子。
 きっとガスも水道も止まっている事だろう。

「実は妖怪好きのあなたにぴったりの仕事があるんです。しかも生活の保障付き」
「何?!それは本当か!」
 いや、待てよ。
 そんなおいしい話がそんじょそこらに転がっているはずがないではないか。
 しかし目の前の男は何やら妖怪の世界とつながっているような気がする。
 見た目しかり、俺のことをなぜか知っている事しかり。
 もしかするとこの不気味な男こそ妖怪やもしれない。
 しかし、のこのこ妖怪についていってしまうのはいかがなものか。
 そんなもの妖怪に自ら食われに行くようなものではないか。
 しかし、このままいたところでどうせ明るい未来は待ってはいないのだ。
 文無しの俺は働く力もなく、飢えて死んでしまうに違いない。
 嗚呼、どちらに転んでも待っているのは地獄だけである。
 しかし食われて死ぬよりか、食えずに死ぬ方がまだいいのではないか。
 せめて人間としての形を保ったまま死にたい。
 そして無念の思いでゆうすけ君として復活するのだ、うむ、それがいいのではなかろうか。
「あなた、何か良からぬことを考えているんではないでしょうな。死ぬなんて考えるものじゃありません。あなたに死んだ後のことの何がわかるんですか」
 なにやら妙に迫力のある声で俺は押されてしまう。
 何だ、こいつは俺の心の中まで読めるのか。
「私は暗いところでも全てはっきり見えるのです。あなたの表情はなにやら私にとって都合の悪いことを考えているような顔です」
「都合が悪い?」
「死ぬ、とかそんなことです」
「ふむぅ」

 俺は唸るほかなかった。
 どうすればいいのだ。
 死ぬなというのは実家に帰れということか。
 しかしどの面下げて帰れというのだ。
 ひたすら偉そうな口をたたき、自立宣言を出して家を出たというのに、半年も立たずに帰ってくるとなればとんだ笑いものではないか。
 そんなことがあれば恥ずかしさで俺はのたれ死んでしまう。
「そもそもおまえは何者だ。どうやって部屋に入った」
「私はリョウといったじゃないですか。それとですね、あなたは私の謎と、仕事についてとどちらを聞きたいんですか。謎と生活どちらをとるんですか」
 謎と生活?
 そんなもの生活の方が重いに決まっているだろう。
 謎解きじゃ飯は食えない。
 探偵じゃあるまいし。
「やはり生活をとりますよねぇ、どうします?あなたにぴったりの仕事なんですけど、お受けになります?」
「受けます?って君、どんな仕事かもわからないのにイエスというわけがないだろう」
「いや、それがですね、その仕事ちょっと変わってまして、イエスと言ってもらわないと詳細をお話する事ができないのですよ」
 ヒヒヒ、と気味の悪い笑みを浮かべる男。 
「何だと、そんな胡散臭い話俺が良いというとでも・・・」
「じゃぁ、あなた明日からの生活はどうするんです?何か当てがあるんですか?それともすごすご実家に帰るんですか?」

 俺は唸った。
 しばらく唸り続けた。
 男はそんな俺を笑うでもなく静かに見守っている。
 一体こいつは何者なんだ。
 こんな奴に付いていって大丈夫なはずがないじゃないか。
 見るからに胡散臭い。
 付いていったら怖い兄ちゃんにどこか連れていかれるとかそんなことがあり得なくもない。
「あなた、何か誤解してませんか?人は見た目で判断できるものじゃありませんよ?」
「それはそうだが、見た目も大事だ」
 俺がすかさず言い返すと男は盛大にため息を付いた。
「あなたどうせ、このままこの家に籠もっても、家に帰っても、明るい未来は待っていないでしょう?それならいっそ私の進める仕事にきてみたらどうです?少なくともこちらの未来の方が明るいはずですよ」
 そうは言ってもだ。
 付いていった先に何が待っているとしれないのに、のこのこと付いていけるはずがないではないか。
「何がそんなに心配なんです?何度も良い話だって言っているじゃぁないですか」
「本当か?命は保証されるのか?苦しかったりしないか?」
「あなた、やっぱり何か勘違いしてらっしゃいますな。そんな危険な場所につれていくわけがないじゃないですか」
「おまえのその様子を見ると幸せは待っていないように見える」
 今は真っ暗で相手の様子は見えないが、あのドアの前に立っていた様子を俺ははっきりと思っている。
 頬はこけていたし足も腕も細いし、顔色は悪いし、まるで死霊のようだった。
 リョウっていう名前ももしかしたら霊って書いたりするんじゃないか?こいつ。
「私の見た目は関係ないんですよ。私が働いている場所とあなたに勧める場所は違います」
「しつこいな、おまえも」
「どうせあなたはどんな道を選んでも明るいといえる道になんて行けないんですから。ここは私のいう仕事に挑戦してみましょうよ。少なくともあなたはそれで平凡な人生から光輝く美しい人生へと生まれ変わることができますよ」
 ふふふ、とまたも不気味な笑い声を出す男。
「・・・何故、俺なんだ」
「素質、ですよ」
「素質?」
 男は俺の質問には答えない。
 また嫌みな笑いを浮かべるだけだった。

「いい加減観念して、イエスと言いましょうよ。今なら跡を濁さずここを去らせてあげますよ。住む場所も保証されます。今なら引っ越し代もタダ、引っ越し準備から何から面倒なことは全部私たちが無償でやって差し上げます。仕事を受けてくださるのならね」
 俺の体に衝撃が走った。 
 何度も言うが聞く限りでは、何と良い話だ。
 住む場所保証付き、引っ越し無料、俺にぴったりの仕事、俺に素質のある仕事、平凡な人生から輝く人生へ!!
 そうだ。
 この話を断ったとして、一体俺はこれからどうなる?
 どこに行ったって輝かしい未来などない。
 これこそ当たって砕けろ。
 あの子に告白したときの勇気を思い出せ。
 今度はイエスと言えば良いだけなのだ。
 イエスとさえ言えばこの絶望の淵から逃れることができるのだ。
「さぁ、決心されましたか?」
「あぁ」
 俺はやる!
 平凡レールから俺は飛び出すのだ!
 これは転機であり好機なのだ!
 輝ける未来を俺はこの手につかむ!
 
   :

 こうして俺は男の運転する車に揺られて、仕事場という新天地に連れていかれることとなった。
 男は結局仕事についての詳細を話そうとせず、俺も質問責めをする前に眠気に襲われ、窓の外を見慣れた建物が流れていく中、深い眠りへと落ちていった。

 そして俺は見知らぬ部屋の中で目覚めた。

   :

 もう思い出したくない。
 あの目覚めたときのことはもう思い出したくない、抹消したい、実家に帰りたい。
 おかんの肉じゃがを食いたい、家のせまい湯船に浸かりたい、断じてドラム缶風呂でなく。
 俺は場違いなほど美しいご来光を眺めた。
 何故俺が冒頭で述べたようにぬらりひょんとのっぺらぼうと並んでドラム缶風呂に浸かっているかは、読者諸君のご想像にお任せする。
 ただ、俺は確かに、俺に合った仕事というのに就けたのだ。
 それは本当に確かである。
 そして俺に素質があるという男の言葉に頷けない事もない。
 こんな仕事俺のような人でなければ、裸足で逃げ出す、何か精神的な病気になるなど良からぬ事が多数起こるに決まっているのだ。

「そんじゃ、兄ちゃん、一夏よろしく」
 
 そして俺はこの夏色んな事がうまい具合に絡み合い、俺の平凡レールをひん曲げてくれちゃたことで、妖怪達の元で毎日日替わりで何か仕事をすることとなった。
 ぬらりひょんのじいちゃん、のっぺらぼうの少年、死霊のような男、ろくろっ首のお姉さん、他にも様々な面子のもとで働くのだ。
 俺が今後一体どういう仕事をして、なにと出会うのか、それはまた次の話だ。
 ただ俺の、妖怪と友達になる、妖怪関係の仕事に就く、という夢は同時に、そしてあっさりと叶った。

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