$丸次郎「ショートストーリー」
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会社設立 大阪市 プロマイドギャラリー 岡田有希子 $丸次郎「ショートストーリー」

 
🔸現在、連載物は以下8作品になります。

下記タイトルをクリックすると、ご覧になれます。


『時を越え』(全3話)

平成22年6月26日スタート

『愛たい人』(全6話)           📖       

平成22年7月18日スタート     

『探検』(全2話)              🐎

平成22年10月11日スタート

『人と人』(全11話)                  
平成22年12月2日スタート    

『欲日の黄昏』(全19話)       

平成23年4月3日スタート

『マシンと俺と彼女』(全6話)
平成23年8月22日スタート

『恋・・・のような』(全46話)         🌲
平成24年11月8日スタート

『彷徨える未練』(全77話)      🎶 

平成26年3月22日スタート

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May 07, 2017 23:31:28

ショートストーリー914

テーマ:小説
その日、一日降り続いていた雨がようやく上がり、雲間から茜色の陽が漏れ始めた頃、事務所のドアを、何者かが数回ノックする音が聞こえてきた。


閑古鳥が鳴く、たったひとりの探偵事務所で長椅子に寝そべり、煙草をふかしていた俊次は、久しぶりの来客に期待を抱きつつ起き上がると、ドアへと向かった。


「どちら様でしょうか?」


俊次は、そう訊きながらドアスコープを覗き込んだ。


俊次の目に飛び込んで来たのは、髪を結いあげ、品の良い和服を着た美しき女性の姿であった。


「電話帳でこちらを見つけ、ちょっと御相談がございまして、参りました。。」


女は落ち着いた声でそう答えると、襟元に挟んでいた白いハンカチで口元を押さえた。


俊次がドアを開けると、女は丁寧にお辞儀をし、微かに笑みを浮かべた。


女の匂い立つような大人の色気と知性が滲み出た美貌に、俊次は暫し言葉を失い見とれていた。


「あのう。。探偵さん、ですよね?」


女は、そんな俊次の目を覚ますように、毅然とした口調で尋ねた。


「あっ、はい。。まぁ、ここじゃなんですから、中へお入りください。」


俊次は我に戻り、女を事務所に招き入れると、戸棚から湯呑み茶碗を取り出した。



「汚い事務所で、すみませんねぇ。。なんせ私しかいないもんで。。なかなか細かい所まで手が回らなくて。。」


俊次の言葉に女は特に答えることもなく、窓の外を見つめていた。


「お茶で、よろしいですか?...コーヒーの粉、切らしちゃってるみたいで。」


俊次が振り向いてそう言うと、女は微笑みながら「どうぞ、お構いなく」と答え頷いた。


「はい、どうぞ。。雨、やんだみたいですね。。お着物姿、実によくお似合いですよ。。」

俊次は、お茶を差し出すと、向かい側に座り、そう言った。


「ありがとうございます。。今日、月に一度のお茶会があったものですから。。」


「あぁ、それで和服をお召しになられているんですね。。じゃあ、その帰りに立ち寄ってくださったと?」


「ええ。。まぁ、そうなんです。」

女は物腰が柔らかく奥ゆかしい雰囲気もあり、俊次は己の渇いた心が次第に癒されてゆくように感じた。


そしてそのような女が、こんな寂れた探偵事務所にいること自体、俊次には場違いのように思えた。



「ところで...今日は、どんなご相談を?」


いい女ではあるが、何を話したら良いのか分からず、俊次は、やむなく本題に入った。


女は和風のバッグからおもむろに一枚の写真を取り出すと、テーブルに置き、俊次の前へと差し出した。


まだ新しく感じられるL版のカラー写真には、精悍な顔立ちをしたスーツ姿の男が、一人で写っていた。


「つまり、この方を探せと?」


「いいえ。...所在は分かっています。」


「では、この方の経歴や生い立ちを、お知りになりたいのですか?」


「いいえ、そんなことは、もう充分、分かっております。。」


俊次は写真から目を離し、女の顔を見つめた。


伏し目がちながらも鋭く冷めた女の眼差しは、明らかに何かを決意しているようであった。


「あっ、そうそう。。忘れてました。。まず、こちらの依頼書に、あなたのお名前、その他、必要事項をご記入頂けますか?」


俊次は、そう言ってテーブルの引き出しからA4の紙を取り出すと、ボールペンと共に女に手渡した。


女は躊躇することなく書き終えると、俊次に用紙を渡した。


「達筆ですね。。羨ましい。。」


依頼書に目を通しながら俊次はそう言うと、記載内容から女が未婚であることを知り、再び先ほどの質問を続けた。


「この写真の男性と別れたい。。そういうことですね?」



「ええ。そうです。。何度もお断りしているのですが、しつこくて。。」


俊次は内心、困っていた。


なぜなら女の依頼内容は、本来、探偵が行う業務内容では無いからであった。


しかし、美しく魅力に満ちた女を前にし、俊次の心は揺れ動いていた。


「そんなに別れたいのですか?。。この男性と別れた後、絶対に後悔しないですね?」


依頼を引き受けるかどうかは別にして、俊次は、とりあえず、そう尋ねた。


「ええ。もちろん後悔なんて微塵もありません。。むしろ、一日も早く別れたくて仕方がないんです。」


女は懇願するような熱い眼差しで俊次を見つめ、そう言うと、目を潤ませた。



「分かりました。。あなたのご依頼、お引き受け致しましょう。。」


俊次は女の誘惑にも似た空気に後押しされるように、そう答えたのであった。


そして俊次の中に芽生えた女への恋心と独占願望も大きく影響していた。


「俺、なんでも屋じゃないんだけどなぁ。。あんたには負けたよ。。仕方ない。」

俊次は心で、そう呟いていた。



写真の男が姿を消したのは、それから2ヵ月後のことであった。

だが俊次は男に対し、何も手を下してはいなかった。。


依頼に訪れたあの和服姿の美女が警察に自首したのは、それから間もなくのことであった。。。


俊次は、女が刑期を終えて出所するまで、何度も面会の為に通い、共に生きてゆくことを約束したのであった。。。。











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ショートストーリー913

テーマ:小説
その日、裕介は日が暮れるまでビーチにいたが、結局、彼女は現れなかった。


「ドタキャンか。。まぁ、フラれることには慣れているけど、断るなら、もっと早くにしてもらいたいよ。。」


裕介は、そう愚痴をこぼすと、海風に揺れる椰子の木を見上げた。


葉の隙間から顔を覗かせる星々が、祐介の傷ついたハートを、さらに切なくさせた。


ビーチ沿いの小道に停めたバイクに戻ると、祐介は白いポロシャツの胸ポケットから煙草を取り出し、ジッポで火を点けた。


潮風と共に吸い込む煙草の味は、いつになくほろ苦く感じられた。



「まっすぐ帰る気には、なれないな。。」

幾つになっても、失恋の痛みは決して変わることがなかった。

それでも懲りずにまた恋をしてしまう自分が、祐介には時折、滑稽にも思えた。


スターターボタンを押し、アクセルを回すと、ギアペダルを踏み込み、クラッチレバーを緩め、走り出す。


タンデムシートからぶら下げてある、もうひとつのヘルメットが、虚しく寂しげに揺れていた。


祐介は家路とは異なる海岸線の道を、ひたすら南に向かって走り続けた。


途中、数台のパトカーとすれ違い、その度に速度を落としてはサイドミラーに目をやった。


「のどかな町なのに、何かあったのかな?」


そんな事を漠然と思いながら15分ほど走ると、祐介は久しぶりに友人が営むカフェの前でバイクを停めた。


「よう!いらっしゃい。。。珍しいなぁ。。ひとり?」

高校時代と変わらぬ無邪気な笑顔で、マスターの田崎が言った。


「あぁ。。残念ながら今回もひとりさ。。。なんか嬉しそうだな?」

「いや別に。。。この笑顔は当店のサービス!。。野暮な質問なんてする気はないさ。。俺も似たようなもんだからな。」

田崎は祐介が失恋したことなど知る由もないが、なんとなく察知し、そう答えた。


「モカのブラックでいいか?」

田崎はテーブルを軽く拭くと、灰皿を置き言った。


「あぁ、それを頼む。。。でも、もう2年以上この店に来ていないのに、俺の好きな珈琲、よく覚えていたな?」


「俺さ、昔っから記憶力だけは、いいんだよ。。。会った人の顔と名前は大概覚えてるもん。」


「なるほどね。。お前さ、カフェのマスターよりも捜査員のほうが向いてるんじゃないの?指名手配犯なんて、すぐ見つけ出しそうじゃん。」


祐介の言葉に田崎は一瞬表情を曇らせると、すぐに笑ってカウンターの奥へと入っていった。。。


風が強くなってきたのか、道側の窓がカタカタと音を立て、小刻みに揺れていた。


「なぁ、祐介。。。亜樹子の件、知ってるか?」

挽いた豆をサイフォンにセットした田崎が、突如そう言った。


「亜樹子?。。。あ~~、高校時代の女子テニス部キャプテンで、お前の初恋の人だろ?」


「そう。。その亜樹子。」


「それで亜樹子が、どうかしたのか?」


祐介は、今日5本目の煙草を取り出すと、唇の端に差し込んだ。


田崎は祐介の問いかけに即答せず、BGMのない店内には風が窓を弾く音だけが静かに響いていた。。。


祐介は気になってカウンターのほうへ振り返ると、そこには苦渋に満ちた表情をした田崎の姿があった。



「田崎、どうした?。。亜樹子に何かあったのか?」


祐介は煙草を唇から抜き取ると、やや声を上げて訊いた。



すると田崎は、さっきまでの笑顔とは異なり、別人のような眼差しで祐介を見つめると、声を絞り出すようにして言った。


「亜樹子のやつ。。。昨日、遠くへ行っちまった。。俺の手の届かない遠い所へ。。。」


その言葉を聞いた時、祐介は嫌な予感がした。


「遠い所って?。。。。田崎、まさか!?」


祐介は最悪の事態を想像し、そう言った。


田崎は何も答えず、やがて淹れたての珈琲を祐介のもとへ運んできた。


田崎は祐介の前に、受け皿に乗せたカップを静かに置くと、ため息をひとつつき、呟くように言った。


「亜樹子のやつ。。。ブラジルへ行っちまったのさ!。。。日系人の彼がいるらしくてよぉ!」


祐介は想像していた最悪の事態とは程遠い田崎の返答に安堵し、田崎の背中を叩きながら言った。

「お前、まだ亜樹子のことが好きだったのか?。。。片想いで終わった初恋から早20年。。。よくもまぁ、そんなに想い続けたな!」


祐介は明るく笑いながらそう言い、似た者同士の田崎を励ましたのであった。


結局、午後11時の閉店まで居た祐介は、今度一緒に呑む約束をし、店を出ると、バイクに乗って、もと来た海岸線を北へ戻っていった。


数時間前まで、彼女を待ち続けたビーチの隣を走り過ぎようとした時。。。


椰子の木に背を預け、リボン付きの麦わら帽をかぶり、うつむいているワンピース姿の女性が祐介の目に映った。


祐介はバイクをUターンさせ、路肩に停めると、ヘルメットを脱いで、女性を見つめた。


すると麦わら帽の女性も気づいたように顔を上げ、祐介を見つめた。


「望美さん!。。来てくれたんだね。。」

祐介は駆け寄って彼女の両肩に手をやると見つめ合い、そう声をかけた。

「今日、駅で携帯をなくしてしまって。。連絡しようにも出来なかったの。。。だいぶ遅れてしまって、ごめんなさい。。もう呆れて帰ってしまったと思ったけれど、来てみたの。」


そう言う彼女の目には、心細さから解放された為か、微かに涙が滲んでいた。


少し遅い春が、ようやく祐介にも、訪れようとしていた。。。。











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April 23, 2017 23:31:42

ショートストーリー912

テーマ:小説
行き当たりばったりで映画館に入り、観たくもないド派手なハリウッド映画を観た二人は、やや食傷気味な気分で映画館を出ると、彼女がよく行くアメリカ発のカフェチェーン店に立ち寄った。


「フラダンスカピチーノ、ひとつ。。あと、このドーナツも。」

奈美絵は迷うことなく店員にそう注文すると、樹夫の顔を見て笑みを浮かべた。


「どれが、どんな味なのか、メニューを見ただけじゃ、さっぱり想像もつかないなぁ。。コーラとかサイダーとか珈琲とかなら分かるけれど。。」


そう呟く樹夫に、奈美絵は「私と同じのにしたら?。。たぶん間違いないから。」と言うと、樹夫の肩に付いていた糸くずを手で払った。


樹夫は奈美絵と同じものを店員に告げると、「言う時、噛みそうなメニューばかりだね。」と奈美絵に言い、微笑んだ。


高い天井からぶら下がっている白くて大きなシーリングファンが、ゆっくりと回転している。


その真下にあるテーブル席に座ると、奈美絵が言った。


「さっきの映画、めっちゃつまらなかった。。アメリカの映画って戦争ものとか暴力的で破壊的な作品が多くない?...観ていると人ひとりの命が、すっごく軽く感じられてきて、なんか殺伐とした気分になるの。」


「確かに、そういう傾向はあるかもね。。100人には100通りの人生があって、それぞれに様々な感情や想いがあり、愛し愛されている人がいるってことを忘れちゃいけないよな。。兵隊や国民は操り人形じゃないってことだ。」


樹夫は禁煙用のパイプを咥えながら感慨深げにそう答えると、奈美絵に目を向けた。


奈美絵は、そんな樹夫を見て、「それ、マッカーサーの真似?」と訊くと、樹夫は笑みを浮かべながら「マッサカ~!」と答え、奈美絵を失笑させた。


「お待たせ致しました。フラダンスカピチーノとドーナツでございます。」


若い女性店員が二人のテーブルにやって来るとそう言って、商品が乗ったトレーを各々の前に置いた。



「なんだか、絵具を溶かしたような飲み物だな。。」

鮮やかなピンク色に戸惑いながらも、樹夫はストローで吸いこんだ。


「どう?。。まずい?」

奈美絵が興味深げな表情で尋ねた。


樹夫は口の中で味わい、鼻を膨らませながら数秒間、沈黙していた。


「私は好きだけどなぁ。。この味」

奈美絵がそう言った瞬間、樹夫はドリンクカップを握り、奈美絵の眼前へ突き出すと「まずい!もう一杯!」と答えた。


「古典的なギャグ、ごちそうさま。」

奈美絵は笑いもせず、クールに答えると、ドーナツを一口頬張り、やがて込み上げてきたように含み笑いをした。


1時間ほどで店を出ると、樹夫は少し離れた駐車場まで車を取りに行き、その間、奈美絵は花屋の前で待つことにした。


「このお花、珍しいですね。色合いが爽やかですごく綺麗!。。すいません、このお花、写メ撮ってもいいですか?」


高価なブランド物のスーツを着た通りすがりのキャリアウーマンらしき女性が、花屋の店先に並ぶ西洋の花を見て、店員にそう声をかけた。


奈美絵は少し離れた場所に立ち、その女の口調や目つきに、なぜか嫌なものを感じた。


「これ、野に咲いている花ではなく、うちの商品なので、むやみに撮るのやめてもらえますか?」


店員は客に媚びることなく、毅然とした態度でそう答えた。


すると、その女は店員の答えが想定外だったらしく、態度を一変させ、傷ついたプライドを修復させるが如く、反論し始めたのであった。


「ブランド品を買うお金があるのなら、数輪の花ぐらい買っていけよ。どうせ画像だらけのブログにアップするつもりなんでしょ?」


奈美絵は内心そう思いながら横目で言い争いを聞いていたが、不快な気分が頂点に達し、花屋の前から歩き始めたのであった。



駐車場の料金支払い機が故障していて、かなり遅れて約束の花屋に到着した樹夫であったが、とうに奈美絵の姿はなく、キャリアウーマンと店員の醜い争いが続いていた。



「あんまり遅いから、奈美絵、怒って先に帰っちゃったのかな?」


樹夫は、そう呟きながら、ゆっくりと車を走らせ、歩道の人々に目を向け、奈美絵を探した。

すると暫らくして前方に掛かっている歩道橋の上で、樹夫の車を見つめ、小さく手を振っている奈美絵の姿を見つけた。


「あいつらしいな。。」

樹夫は安堵し微笑むと、そう言って車を路肩に停めた。


樹夫は車から降りると、歩道橋の階段を駆け上がり、奈美絵のところまで走って行った。


すると奈美絵は「もう、遅すぎ!」と怒りながらも、すぐに笑顔になり、樹夫の胸に抱きついたのであった。


「おいおい!。。こんな所で、恥ずかしいよ。。」

そう言いながら、樹夫も奈美絵の背中に両手を回し、優しく抱きしめたのであった。


「あと5秒だけ。。。いいでしょ?。。ネッ!」


「あぁ。。いいよ」

樹夫が、はにかみながら答えた。


夕陽が照らし始めた歩道橋で、ふたりは、今確かに、ここに居ることの有り難さを感じ、確かめ合っていた。。。。











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