$丸次郎「ショートストーリー」
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会社設立 大阪市 プロマイドギャラリー 岡田有希子 $丸次郎「ショートストーリー」

 
🔸現在、連載物は以下8作品になります。

下記タイトルをクリックすると、ご覧になれます。


『時を越え』(全3話)

平成22年6月26日スタート

『愛たい人』(全6話)           📖       

平成22年7月18日スタート     

『探検』(全2話)              🐎

平成22年10月11日スタート

『人と人』(全11話)                  
平成22年12月2日スタート    

『欲日の黄昏』(全19話)       

平成23年4月3日スタート

『マシンと俺と彼女』(全6話)
平成23年8月22日スタート

『恋・・・のような』(全46話)         🌲
平成24年11月8日スタート

『彷徨える未練』(全77話)      🎶 

平成26年3月22日スタート

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2016年05月29日(日) 22時36分20秒

ショートストーリー868

テーマ:小説
「もう逢えないって、分かってるから...今日はもう少しだけ、一緒にいて。。。」


由香は寂し気な目でそう言うと、グラスのコーラフロートに視線を落とした。


7月の海は、まるで眠っているかのように穏やかで水面は優しく煌めいていた。


青いヘンリーネックのTシャツに白いサマージャケットの和志は、そんな由香に一瞬だけ目を向けると、すぐ窓越しの青空に視線を移し、小さく溜め息をついた。



誰もいない、海風が吹き抜けるカフェテラス。。。


そのテーブルには、誰が書いたのか、サインペンで「I LOVE YOU」の走り書きがされていた。


「人を好きになるなんて、もうないって思ってた。」


先日、由香が女友達に送ったメールには、そう記されていた。


「駄目もとで告白しちゃいなよ!そのほうが後悔しないから。由香のこと応援してる。がんばって!。。。」


友人からの返信には、由香にとってハードルの高い励ましの言葉が綴られていた。



和志は腕時計に目をやると、冷めた珈琲を一口飲み、由香を見つめた。



「俺..無責任な返事、したくないんだ。人の気持ちなんて変わっていくものだろ?...君が今、俺を好きでも、あとで冷静になって考えたら、その場の雰囲気に流されていただけかもしれないし。」


和志は優しい眼差しで諭すようにそう言うと、由香の言葉を待った。


由香の耳元で微かに揺れている銀のイヤリング。。。それは、由香の揺れ動く心のようでもあった。



「好きな人がいるなら、はっきり言ってください。...気を持たせるような曖昧な言い方、嫌なんです。あとで傷つくぐらいなら、今傷ついたほうがいい。」


由香は和志を真っ直ぐ見つめ、珍しく強い口調で言った。



壁にかけられたレトロな振り子時計が午後6時を告げると、空の青は、いっそう深さを増していった。


「仕方ないな。...君の言うとおり、正直に答えるよ。..」


テーブルに置いたサングラスが、夕暮れの陽光を映し、由香の瞳を優しく照らしていた。



「今年のクリスマス...予定、空けといてね。」


「えっ?...」


予想だにしない和志の言葉に、由香は思わず目を見開き、声を漏らした。


和志は何もなかったように、白い珈琲カップを手にし、口元に近づけた。



「それって?......つまり」


「そう。...つまり、そういうこと。...今年のクリスマス、君と過ごしたい。。。。それまで、君が俺のことを好きでいてくれたらの話だけどね!」



和志は、いつになく穏やかな笑みを浮かべそう言うと、はにかみながら前髪をかき上げた。



「和志さん。。。意地悪なんだから!...もう、明日から逢えないって思っていたから...」



由香は笑顔ながらも、拗ねているような口調でそう言うと、目を潤ませた。


「明日から逢えなくなるのは、本当だよ。」


「えっ?...まさか..さっきの返事、嘘なの?!」

由香は再び驚いて声を上げると、真剣な眼差しで和志に尋ねた。


「明日から一週間ほど、香港に行ってくるんだ。今度、新しいファッションブランドを立ち上げる件で、現地のデザイナーと打ち合わせをしたり、いろいろ下準備をしなくちゃならなくてね。」



「もう!..ほんと意地悪なんだから!..そんな言葉遊びを繰り返してると、本当に嫌いになっちゃうから!」



「ごめん!。。。もう、惑わすような言い方しない。」


和志は今日初めて真顔になると、姿勢を正し、そう言った。



「うん。...暫らくの間は、そうしてください。..どんなきつい冗談を言われても、揺るがない関係になるまでは。。。。」


由香は和志の目を見つめ、静かにそう言うと、和志のサングラスを手に取ってかけてみせた。


「どう?。。。似合う?」


「君には、少し大きいかな。。。ここを出たら帰り、君に合うサングラスを見に行こうか?...俺がいつも買う店なんだ。...君に似合うのを選んであげる。」


「ほんと?!。。。嬉しい!」



二人は海沿いのカフェを出ると、駐車場に停めた和志の車へと向かった。


その時、潮風を受けてなびく由香のブラウスに、微かな温もりが加わった。


和志が寄り添うことで感じられる温もりが、由香の体と心を、言いようのない安らぎとなって優しく包んでいた。


やがて、二人を乗せた白いクーペが海岸線を走り抜けていった後、すっかり暮れた大空を、一筋の流れ星が眩い煌めきを残し、横切っていった。。。。













懐かしのヒットナンバー
田中友紀子            「Summer Vacation」
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2016年05月22日(日) 22時46分58秒

ショートストーリー867

テーマ:小説
ツーリングのバイクが行き交う、初夏の湾岸ハイウェイ・・・

サ-ビスエリアのカフェから、ぼんやりと遠くを見つめ、時折アイスティーをストローで吸う千晴。


何も予定がない週末は、いつも決まってここに来ている。


家族連れや恋人たちが、楽しげに雑談をし、笑う。


彼らにとって、そんな当たり前のことでさえ、千晴にとっては遥か彼方にある夢のような光景であった。


「さぁ~てと、帰ろ」

グラスに残った薄いアイスティーを飲み終えると、千晴は席を立ち、カウンターに行ってグラスを戻し、「ごちそうさま!」と声をかけた。


そして駐車場に停めた古めかしいバイクに跨ると、ヘルメットを被り、キーを差し込んだ。

かれこれ十数年は乗り続けている、愛着深いバイク。


鼓動のような排気音が、潮風に乗って静かに流れてゆく。


クラッチを繋ぎ、ゆっくり走り出すと、千晴は空いている本線へと入っていった。

建ち並ぶ工場の煙突から昇る煙が、ちぎれ雲のように流れ消えてゆく。


遠くに見える海が、千晴には、いつもより青く深く見えていた。


「このまま、このバイクと共に遠い地の果てまで行ってみたいなぁ。...いっそ誰も辿り着けない所まで...」


千晴はギアをトップまで上げると、アクセルを全開にした。


古いバイクゆえ加速も最高速もいまいちだが、そんなところが自分に似ているようで、千晴は、一層このバイクが愛しく思えるのであった。



2時間ほど、走り続けたであろうか...。


千晴は見知らぬICで高速道から下りると、田畑と低い山々が連なる田舎町に入った。

田には青々とした稲が育ち、山からの風に煽られ、さざ波のように揺れていた。


「こんな風景、見飽きるほど見ているのに、またこんな町に来ちゃったよ。」


生まれ育った田舎を思い起こさせる風景に、千晴は溜め息をつくと共に、微かな郷愁を覚えた。


「コンビニ、中古車屋、ガソリンスタンド、パチンコ屋...どこの田舎も似たようなラインナップだね。」


沿道の風景を見ながら、千晴はそう思った。


やがて、町の中心部らしき場所にある十字路に差し掛かった。


信号が黄色から赤に変わり、千晴は停止線にバイクの前輪を合わせ停車すると、横断歩道を渡ろうとしている老婆に視線を向けた。


腰の曲がった小柄な老婆は、車輪の付いた荷車の取っ手を両手で握り、ゆっくりと道を渡り始めた。


その歩みは遅く、老婆が道幅の3分の1ほどまで渡った時、歩行者用信号が点滅し始めた。


対向車線に車が3台。千晴の車線にも後続車が5台ほど停まっている。


このままでは老婆が危ないと感じた千晴は、急いでバイクを路肩に寄せ降りると、即座に老婆のもとへ駆け寄った。


「お婆ちゃん、信号が青に変わって車が走り出しちゃうから、私におんぶして!」

千晴が腰を屈めてそう言うと、老婆は一瞬驚きながらも、黙って頷いた。


千晴は老婆を背負うと、片手で老婆を支え、もう一方の手で荷車を押し、足早に道を横断した。



ちょうど渡り終えた時、信号が青に変わり、車が一斉に走り出したのを見て、千晴は「ふ~っ」と、息を吐いた。


老婆は千晴に頭を下げ、「本当にありがとう。助かりました。」と、何度も礼を言った。


そんな老婆の背中を優しく撫で、千晴は「いいえ。どうぞ、お気をつけて」と、微笑みながら答えた。


老婆を見送った後、千晴は自分のバイクへ戻り、再び走り始めた。


「やっぱり、私は海が好きだなぁ。。。」

千晴は流れる田園風景に目をやりながらそう思うと、太平洋に向けて右折した。


夕方、誰もいない浜辺にバイクを停めると、千晴はヘルメットを脱ぎ、長い髪をかき上げ、空を見上げた。


まだ明るい空の彼方に、薄っすらと見えている青い月...。


子供の頃、これぐらいの時間に浴衣を着て祭りを見に行き、従兄弟たちと出店を回って、林檎飴を食べた思い出が、ふと甦ってきた。


「あの頃、これから大人になってゆく中で、なんでも実現できると思ってた。...当たり前のように恋をして、当たり前のように海外旅行をして、当たり前のように結婚して...すべてが当然のように手に入れられる幸せだと思ってた。...」


そんなことを思い、千晴は涙を浮かべ微笑んだ。


その瞳に映る青い月が、千晴には「まぁ、そんなものさ...」と、語りかけているように思えた。。。。













懐かしのヒットナンバー
黒沢律子             「BLUE SKY」
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2016年05月15日(日) 22時47分53秒

ショートストーリー866

テーマ:小説
深夜、高速バスでやって来て、大阪の街に降り立った、一人の男。。。

履き古した黒いスニーカーが、雨打ちつけるアスファルトを静かに踏みしめ歩んでいく。


居酒屋の窓から漏れ聞こえてくる賑やかな関西弁の会話が、男には妙に心地よく、そして懐かしく感じられた。



男の名は、貞幸...。


「お兄さん...一杯、ビール呑んでいかへん?」


寂れた呑み屋の前で、疲れた顔の女が客引きをしていた。


貞幸は女の前を一旦通り過ぎたあと、ふと立ち止まり、振り向いて女の顔を真面目な顔で見つめた。


「呑んでく?今日は、ちょうど3割引きのラッキーデーや!...お兄さん、ほんまラッキーやな~!」

女は貞幸が店に入るものと思い、満面の笑みを浮かべ言った。


すると貞幸は女の顎をいきなり掴み、顔を近づけた。

「おい、あんた!何すんねん!」

驚いた女は笑みから急遽怖い目つきに変わりそう叫ぶと、貞幸の手を叩き掃いのけた。


「ユリエ...おまえ、ユリエだろ?」

貞幸は表情を変えることなく、そう言うと、今度は女の肩を掴んだ。


「ええ加減にせいや!ほんま失礼なオッサンやな!人違いも大概にせい!..ユリエなんて名前、知るか!アホ!」


女は動揺しながらも、まくし立てるようにそう言うと、店の中へ入っていった。


「あれは、ユリエだ。...間違いない。なぜ逃げるんだ?」

貞幸がそう思っていると、店の扉が開き、大柄で強面な男達が出てきた。


「なんや?!われ!...うちの女性店員に難癖つけて営業妨害しとんか?..おぅ!われ!..なんとか言わんかい!こら!..いてまうぞ!」


パンチパーマの男が貞幸の胸ぐらを掴み引き寄せると、そう叫び威嚇した。


それでも貞幸は表情一つ変えず、男を冷めた目で見つめ言った。


「さっきの女...名前だけでも教えてくれないか?」


「はぁ?...われ、どこまでも舐め腐った奴やな!ほんまに、いてまうぞ!こら!」


そう言うと男は、貞幸を人目につかない路地裏へ連れて行くため、もう一人の連れに合図した。


すると貞幸は体の力を抜き、パンチパーマの男に飛び込むようにして体当たりをした。


貞幸の頭突きを顔面に受けた男が朦朧としている隙に、貞幸は胸ぐらの手を払いのけ、店内へと入っていった。



「おい...さっき店先で客引きをしていた女、どこにいる?...ユリエ!...ユリエ!俺だ!貞幸だ!...迎えに来たぞ!」


店内の客たちが一斉に貞幸に目を向け、皆一様に怪訝そうな顔をした。


「おい!てめぇ~!営業妨害しやがって!...タダじゃ済まねぇ~ぞ!」

外で頭突きをくらわされたパンチパーマの男と連れの者が、店内に入って来て貞幸のあとを追った。


店内は騒然となり、店長らしき白髪の男が携帯で誰かに連絡を取り始めた。


すると貞幸は、ジャンバーの内ポケットから拳銃らしきものを取り出し、店長に言った。

「どこに電話してるんだ?携帯の電源を切れ。早く切れ!」


リボルバー式の銃口を向けられた店長は、仕方なく貞幸の言うとおりにした。


そして追って来た店の用心棒たちも貞幸の拳銃に恐れをなし、身動きできなくなった。


「呑んでいたお客さんたち、すいませんね。用件が済めば大人しく退出しますんで。...ただし、店側の出方次第じゃ、大ごとになりかねませんがね。」


貞幸は相変わらず無表情のまま、銃口を店長に向け淡々とそう語った。


「もう一度言う。...ユリエを、ここに連れてこい。俺は確実に、ユリエを連れて帰る。」


貞幸がそう言うと、店の奥に隠れていた、先ほどの女が姿を現した。


「ユリエ...お前を探しに、ここまで来た。...もう、あの頃の問題は全て解決した。だから東京へ戻ろう。」


貞幸がそう言うと、女は薄笑いを浮かべ、一歩、また一歩と貞幸のほうへ近づいていった。



「あんた、ほんまアホや。..今さら、なんで迎えに来たん?...あれから何年経ってると思うてんの?...11年も離れとったら、もう完全に赤の他人やで。...今さら恋人づらして、のこのこ現れて。...私の職場も、こない無茶苦茶にして、あんた、どないしてくれんねん!」


女は貞幸が言うとおり、過去、東京で同棲していた恋人ユリエであった。


貞幸が事業に失敗し、多額の借金を背負って以来、別々に暮らすようになっていた。



「そういうこっちゃ。遠路遥々ごくろうさんやったな!...捨てられた男は、早う東京に帰りなはれ!..あははははっ(笑)」


用心棒の男がそう言い嘲ると、店長や客までもが貞幸を見て笑い始めた。


「ほな、そのオモチャの拳銃も早う仕舞いなはれ!(笑)...なんなら、ここでヤケ酒でも呑んでいくか?..ひぃ~ひひひ!(笑)」


パンチパーマの男が貞幸を哀れむように見つめ、笑いながら言った。



その時だった...。


「パン、パン...パン、パン、パン」


乾いた銃声が店内に5度響き渡り、店は静まり返った...。



貞幸とユリエ


二人は、かつて愛を育んだ東京へ、再び戻ることは出来なかった。。。。。













懐かしのヒットナンバー
上田正樹            「悲しい色やね」
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