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まだまだ暑くるしい夜の事。
最近この辺りは出刃包丁を使った押し込み強盗が多発し、火付け盗賊改め役の"鬼平"こと長谷川平蔵も目を光らせていた…
平蔵が自ら今夜も町を歩き見回りしていると小腹がすき、馴染みの飲み屋に行く事にした。
程なくしていつもの飲み屋に着くと店は珍しく閉まっていた。
平蔵「休みとは珍しいな…」
仕方なしに歩いていると一軒の新しい飲み屋が…
平蔵「たまには違う店もいいか」
平蔵は真新しい飲み屋に、吸い込まれるように入って行った。
店主「らっしゃい」
平蔵「この店は最近出来たのかい?」
店主「へい!今夜からで。以後ご贔屓に」
平蔵「そうかい。たまには寄らせて貰うよ。オススメはなんだい?」
店主「はい、板わさと玉子焼きは如何ですか?」
平蔵「いいな。それを頼むよ。あと日本酒の美味しいところもな」
店主「はい、おまちを」
しばらくすると良く練られ、みずみずしい板わさと、ふっくら焼き上がった玉子焼きが出てきた。
そして銘酒 "森伊蔵" が…
平蔵「凄いな、いつも行く飲み屋とは雲泥の差だ。これからは毎晩この店に通うとするか」
店主「ありがとうございます。ただ毎晩は無理なんです」
平蔵「そりゃまたどうしてだ?俺は毎晩、旨い肴と銘酒を飲みたいんだが」
店主は申し訳なさそうにこう続けた…
店主「毎晩ですと本業に差し支えますから…」
と頭を下げた瞬間、不意に懐からキラリと光る出刃包丁が見えた。
店主は慌ててそれをしまい隠すと
その様子を見ていた平蔵は静かに語った…
平蔵「俺は毎晩、旨い肴と酒が呑みたいんだ。これからは毎晩通うぜ」
すると観念したように店主は
店主「分かりました。お待ちしております」
平蔵「そいつは良かった。お勘定」
店主は深々と頭を下げながら
店主「まいど…」
そしてその夜を境に、押し込み強盗はピタリと出なくなった…
第九話に続く…
オーナー
心太
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