もう30数年も昔になってしまった! 昭和50年代のお話。
県北の国道から県道に踏み入れた時の事。
所どころ川の崖を沿い急流の音を聞きながら、楢や白樺の山道となった県道は、町道か村道か判らなくなって来た。
更に先へと登って行くと、完全に林の中、いや,森の中に入ってしまった。心細い思いで、標識を、目印になるものを見つけ様とするのだが、木々ばかりで何も無い。
この時代にはカー・ナビは無い。大雑把な案内図だけである。先方は『何、一本道だから迷う事はない!』と太鼓判を押してくれた。
しかし、途中で、細い枝道は有ったと思うのだが、こっちだろう、と決めて来た。
高速道路の地図が頼りの好い加減なドライブとナリニケリ!
雪深いのだろう、赤白ポールが谷川の斜面側に立っている。
考えると、冬は、ガードレールは雪に埋ってしまうだろう。
少し行くと縦長の標識が見えて来た。
『路肩注意』でも書いて有るのか?と徐行して行く。
『ここは芸北町』 ふんふん、と頷き進む。
『美人は』 どうした!
『居ないが』 なんだ! 失礼な事を!
『熊が 出る』 と書いてある。
結構な道路標識である。
笑ってしまって緊張感が解ける。
まったく 人騒がせな標識、と思うと同時に、
杉板に赤マジックで書いた文字に、近親感を覚え、
書かれた役所の人物に会いたくなった。
樽床ダムの湖畔・臥龍山・八幡高原の湿原・深入山・大暮養魚場・
芸北文化ランド・町の至る所にあるスキー場・・・・・
カッコーの鳴き真似が得意なK氏・田舎の従兄弟と大学が同期の
J氏・町役場の親切な方々・・・・・と思い巡ると懐かしさに溢れる。
この身が元気になれば、再び、訪れてみたい所の1つである。