こんな【ありふれた痛み】なのに
お前でしか癒せないーーー。


木原さんの作品に出てくる
どうしようもないクズなキャラは
読み進めていくうちに
何だか可愛らしくなっていき、
最後の方は応援しちゃっている自分がいたります。

が!!!!

時々はクズはクズのまま、
絶対に応援なんかできましぇん・・・・
なんてキャラもいるんだけど、
今回の受けである西崎がまさにそれ!
見事なクズっぷりで、
同情の余地はまるでなし!でしたww


木原 音瀬著「MUNDANE HURT」
MUNDANE HURT (ビーボーイノベルズ)/リブレ出版
¥1,102 Amazon.co.jp
高校の体育祭で西崎は堅物だと思っていた長野の走りに視線を奪われた。遊びで長野を落とそうとするがセオリー通りにいかない長野に西崎は次第に本気になる。何とか落としたが今度は鬱陶しくなりすぐに振ってしまった。卒業後、何でも手にいれてきた西崎の人生は一変する。孤独になり薬にも手を出した西崎は極道に命を狙われる。助かるには弁護士になった長野からあるデータを手に入れなければならず…!立場が変わった二人の愛の行方は…。


FRAGILE 」もかなりキャラが最低なクズ野郎でしたが、
これも負けず劣らずですよね。
金持ち・イケメン・高慢ちき。
人は寄ってきても誰も彼を本気で愛する人などいない。
ある意味彼も可哀想な人ではあるけど、
それでもどこかで自分を変えないといけないことに気付かなければ、
ならなかったんだけどね〜。
高慢なだけならまだ良かったの。
「熱砂と月のマジュヌーン」のファウジだってそうだったしさ〜。
でもファウジは可愛気があった。
奴隷の身に落ちても、悪態はつきつつそれでも愛する人に対して、
可愛気があったから応援したくなっちゃったんだよね。
だけども今回の西崎はダメだ。
こりゃダメだ。
全てを誰かのせいにする。
後悔し、反省することを知らないの。
自分の発した言葉のせいで誰かが傷ついたとしても、
その前に○○が自分に対して酷いことを言ったからイライラしてそんな事を言ってしまったんだ、
だから○○が悪いんだ!って一事が万事、こんな感じ。

高校時代の西崎はイケメンでお金があり、
しかも学校の理事長が伯父の知り合いということでとにかく好き勝手にやっていた。
同じクラスの長野はそんな西崎とは真逆のタイプで、
とにかく真面目!参考書でソロ活動ができちゃうと噂されるくらいの真面目。
だけど勉強しか出来ないと思っていた長野が体育祭で見せた姿に
西崎は釘付けになってしまったのだ。
印象とは裏腹に長野はめちゃくちゃ足が速い。
長野の場合ギャップも手伝って、
西崎は長野を意識するようになる。
と言っても、西崎が普通にそんな感情を認めるわけがなく、
ある日、退屈しのぎだと言って友人たちと賭けをすることに。
それは長野を落とせるかどうか・・。
西崎は事あるたびに長野に話しかける。
長野の家はお世辞にもお金があるとは言えず、
家計を助けるためにバイトをしながら勉強をしている長野だった。
そんな長野を心の中でバカにしながら口先では上手い事を言う西崎。
そして、長野にキスをしかけ好きだと告げる。
長野の変わらない態度にがっかりするものの、
長野はそれ以来西崎が気になって勉強も手につかなくなるようになるのだ。
いつしか西崎に夢中になってしまった長野はある重大な秘密を打ち合ける。
長野の父は詐欺と殺/人/未/遂で服役中であること、
そのせいで長野は中学時代陸上部を辞めざるを得なかったことなど
西崎は聞いてても重過ぎる過去に誰にも言わないと言いつつも、
つい友人の一人に話をしてしまった。
そのせいで長野のことが知れ渡ってしまった。
西崎は自分は言っていないと言いはり、それを長野は信じたものの
怖くなって長野を卒業するまで避け続けるのだった。
西崎の伯父が亡くなったのは大学1年の時。
そこから西崎の生活は一変した。
これまでお金に苦労したことのなかった西崎だが、伯父に多額の借金が残っており、
住む家を追われ、大学も辞め、その日食べる食事もままならない生活。
甘やかされて育ってきた西崎にそんな生活が耐えられるはずがなく、
キャバ嬢のヒモのような生活を送り、そしていつしか現実から逃れるためにクスリにも手を出すように。
お金欲しさにヤバいバイトに手を染める西崎。
しかしそれは893を敵に回すもので、西崎は彼らから袋だたきにあってしまう。
怪我を負った西崎を介抱し助けたのはあの長野だった。
弁護士となった長野は西崎を自分の部屋に住まわせるのだったが・・


もう、ほんとなんで長野もこんな見かけだけの西崎を好きになってしまったのか・・・。
確かに西崎の回りにいた大人たちも悪いと思うのよね。
面倒だからとお金を与えるだけで、
善悪をちゃんと教えず好き勝手させていたわけだし・・・
だからっていい大人になったら、
自分のことは回りのせいにはできないよ。
長野も初恋だったんだろうな〜。
真面目君ほど、恋しちゃったらずーっっと引きずりそうだしね。
ただ彼の場合ちゃんと彼女がその後いたらしいけれど。

何が辛いってこれだけのクズなのに、
長野はずっと彼を救おうと苦心していたわけよ。
だけど、西崎はその最後に差し伸べられた手さえも
叩き落とすような真似をするんだよ。
ほんと、バカだよ、心底バカな男だと思う。
いっそここまでくると哀れともいうのだろうか。
確かに母親や兄のことは同情はする。
西崎の母親は身体を怖し入院していたがそこで病院長から睡眠薬を投与されイタズラされていた。
そのせいで妊娠し母は飛び降り自/殺、それを知った成績優秀だった兄は病院長を殺/害、
大学に行き辛くなった西崎は大学を辞め兄のせいだと面会で詰め寄る。
そのことを苦にした兄は獄中で首を吊って死んでしまった。

不幸のてんこ盛りになってしまったことには同情しても
それがクスリをやったり自堕落な生活をしてもいいという免罪符にはならないよね。
しかも母の死も兄の死も救えた自分に後悔するならまだしも、
やっぱりそれも誰かのせいにしちゃうし。

読みながらいつ西崎は改心するんだろうか、
改心しなくても長野にだけは可愛い態度をとるようになるんだろうか、
などと期待しながら読んでいたけど、
エンドマークがつくまでそんなことにはこれっぽっちにもならんかった!!!
ラストはずっと助けようとしてくれていた長野でさえ、
さすがに西崎を見捨てて去っていくのだ。

甘くない!!全然甘くならないっっっ!!
さすが木原さん!
としか言いようがないエンディング。
雑誌掲載された作品を改稿して出した本なのだが、
木原さん曰く
多少LOVE度はマシになりクズ度は増量
とのこと。納得。

ところが驚くことにあとがきに
今後の展開として二人で都内の一軒家で一階をカフェ、二階を住居にして
共に暮らす・・・という姿を妄想しているとありました!!!
こ、この二人がこのあとどうやってそんなアハハウフフな関係になるんでしょうかっっっ!
また、同人誌でその後を書くのかな?と思っていたら案の定、同人誌で短編がちらっと。
しかしそのなかでさえ長野に
「自業自得というより他にかける言葉がない」と思われているんで
アハハウフフな二人になるには、長い長いながーーーーーーい年月がいるんじゃないだろうか・・
などと思っております。

ほんと、自業自得とはこのことを言うんだよ、という見本のような西崎でした。


H度ドキドキドキドキドキドキ
ストーリー度満月満月満月満月(やっぱりこういうのを書ける木原さんは凄い)




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