300字限定ブログ―常識の裏―

中小企業の財務、税務、経営管理を専門とする公認会計士が、300字限定という絶対的な制約を課した上で、時事問題(政治、経済、金融)、中小企業の経営(経営管理、財務、税務、会計)に対して実務と経験に基づく独自の視点で、常識の裏側に存在する物事の本質に迫る。


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IFRSの収益認識の再公開草案が11月14日に公表されました。

前回の公開草案と基本的な考え方に変更はありませんが、部分的に変更されている点がありますので

重要な部分を、IFRSの収益認識の5ステップに沿って解説していきたいと思います。


<IFRS公開草案 収益認識の5ステップ>

1.顧客との契約の識別

2.契約の中での独立した履行義務の識別

3.取引価格の決定

4.取引価格を独立した履行義務へ配分

5.個別の履行義務の履行に従い収益を認識


<1.顧客との契約の識別>

顧客との契約の存在を認識するステップです。


「契約の単位」は、「契約書」という単なる紙の単位で考えるわけではなく、経済的実態、取引実態を最も適切に表す契約単位を、ひとまとまりとした単位で考える必要があります。


(契約の結合)

よって、同時(またはほぼ同時)に同一の顧客に対して、「複数の契約が経済的に一つのまとまりとして締結されている」、「契約の対価が他の契約の対価や履行に影響される」、「複数の契約が単一の履行義務の履行に依存する」、といった条件を満たす契約を締結した場合には、当該複数の契約を単一の契約として会計処理を行うことになります。


<2.契約の中での独立した遅行義務の識別=収益の認識単位>

履行義務とは、顧客との契約における、財、サービスを提供する義務です。言い換えれば、「商売の対価を得るために、提供しなければいけない仕事(義務)」といってもいいでしょう。


(履行義務の区分)

この履行義務は、収益の認識単位の基になるため、一つの契約の中に、区分できる財、サービスが含まれている場合には、別個の履行義務として区分した上で、会計処理を行うことになります。


具体的には、「財、サービスを個別で市場で販売」していたり、「財または、サービスを単独で利用できる」場合には、履行義務の区分の必要がある場合に該当します。


要は、「区分した方が、ひとまりとするよりも、より経済的実態、取引実態を表す会計処理結果になるという場合には、区分して収益認識単位を考えよう」ということです。


これは、財とサービスでは、対価を得ることができる条件である、「仕事が完了するタイミング」が異なることがあるからです。


例えば、パソコンの販売と、2年間の保守契約の一括契約の場合、パソコンの販売と、保守契約を一つの会計処理単位としてしまうと、経済的実態に適切に表した会計処理を行うことができなくなってしまいます。


パソコンは販売したタイミングでパソコン分の履行義務は全て完了しています。

しかし、保守契約は、毎月の保守の完了の都度、補修契約の履行義務を完了することになります。

パソコンと保守では仕事が完了するタイミングが異なるため、収益の認識タイミングも当然異なります。


この場合は、パソコンの販売と、保守契約の履行という別個の履行義務を識別(つまり別個の会計処理単位として識別)した上で、各履行義務を履行したタイミングで収益の認識をしていくことになります。



<3.取引価格の決定>

取引価格とは、顧客に対して財、サービスを提供した対価として受領すると見込まれる対価です。

通常であれば、契約書で記載された対価となります。


(不確実性のある対価)

ここで、不確実性がある対価、つまり将来、対価受領金額が変動する可能性がある場合には、「確率で加重平均された金額である期待値(加重平均値)」か、「最も受領可能性の高い金額(最頻値)」のいずれかを用いることで最も合理的な対価金額を見積もることになります。


(時間価値の考慮)

また、対価の受領予定時期が数年後などの場合で、金利相当額の影響金額が大きい場合には、貨幣の時間価値を考慮して取引価格を調整※1します。

※1:履行義務完了と対価の実質的支払時期ののタイミングのズレが1年以内の場合には時間価値の考慮は不要です。


(顧客の信用リスクに伴う回収可能性)

なお、顧客の信用リスクについては、取引価格の決定の際には含められないことになりましたが、顧客の信用リスクについてはIFRS9号に従い測定し、収益の控除項目として表示されることになります。


<4.取引価格を独立した履行義務へ配分:対価の測定>

「ステップ2」で認識された「履行義務の単位」に対して、「ステップ3」で決定された「取引価格」を配分します。


(独立販売価格での配分)

ここで、取引価格を各履行義務へ配分する基準をどのように決定すればいいのかが問題となりますが、原則的な考え方としては、各履行義務に対応する独立販売価格に基づいて配分されることになります。


具体的な例としては、市場で別個にパソコンが100、保守契約が200で販売しており、当該パソコン販売と補修契約を300の一括契約という形で契約を締結している場合であれば、当該一括契約300の取引価格を、パソコン部分の履行義務に100、保守契約の履行義務に200という形で配分することになります。


(その他の取引価格の配分方法)

しかし、各履行義務を構成する、財、サービスが必ずしも市場で別個に販売されていない場合もあります。このような場合は、独立販売価格を基に取引価格を配分することができないので、各履行義務に対する販売価格を合理的に見積もることで、取引価格を配分することになります。

販売価格の見積方法としては、以下の方法があります。

(1)見積原価プラス利益法=見積原価+想定利益金額

(2)市場価格調整法=類似の商品等の市場価格±調整

(3)残余価格法※2=一括契約金額-市場価格が把握できる契約の独立販売価格

※2:残余価格法の利用は、独立販売価格が大きく変動する場合に限定されている。


<5.個別の履行義務の履行に従い収益を認識:収益の認識時期>

履行義務の充足、つまり仕事の完了に応じて、収益が認識されることになります。

収益の認識のタイミングとしては、「一時点での認識」か「一定期間にわたっての認識」かの2つに分かれます。


(一定期間にわたっての認識)

具体的には、以下の要件を満たした場合は、「一定期間にわたっての認識」に該当します。

1.会社(売手)の顧客に対して提供する仕事により、顧客の支配する資産が作り上げられる、または顧客の資産の価値が増加する。

2.会社(売手)の顧客に対して提供する仕事により、会社(売手)にとって、他の用途で利用できる資産※3が作られず、かつ以下の条件のうち少なくても一つが満たされる。

(1)会社の仕事の履行に応じて、顧客は便益を受ける。

(2)当社以外の会社が当社の作業をプロジェクトの途中で引き継いだとしても、当社が既に履行した部分の仕事について、引き継いだ会社は再度行う必要がない。

(3)提供済みの仕事については、顧客から対価を得ることができ、また当社は当初の契約を約束通り履行する予定である。


※3:当該資産を、そのまま他の顧客に販売できたり、他の顧客のプロジェクトの部品として利用できるような場合


(履行義務の履行度合の測定方法)

「一定期間にわたって認識」に該当する場合は、履行義務の履行度合を最も適切に表した方法により、一定期間に渡って収益が認識されることになります。


この場合の履行義務の履行度合の測定方法としては、コストや、労働時間等のプロジェクトに対するインプット係数を用いる方法(インプット法)と、成果物等のプロジェクトに対するアウトプット係数を用いる方法(アウトプット法)があります。


(一時点での認識)

「一時点で認識」に該当するものについては、以下の指標を基に判断されることになります。

なお当該指標は、現行のIAS18号の物品販売の収益認識要件と概ね近い内容になっています。

(1)会社が顧客から支払い対価を受け取る権利を有しているか。

(2)顧客が資産を物理的に占有をしているか。

(3)顧客が資産に対して法的な所有権を有しているか。

(4)顧客が資産の所有に伴うリスク及び経済価値を有しているか。

(5)顧客が資産の受入を認めた証拠(例えば、検収書等)があるかどうか。


以上が、IFRS収益認識の再公開草案の要点となります。

だいぶ長くなってしまいましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。


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